- 作者をせかす6人の主人公たち
- 東京芸術劇場
- 2009年02月13日の旧エントリから転載・改編
観て来たのは,「作者をせかす6人の主人公たち」という作品.あとで聞いた話では,Pirandelloという作家の戯曲に『作者を探す六人の登場人物』という作品があるそうで,どうやらそのタイトルをパロディっているらしい.文学に疎いので,その辺のバックグラウンドがあったらもう少し違った楽しみ方が出来たかも知れない.あとで要復習.
一応,あらかじめ告白しておくと,元々この舞台を見ようと思っていた切っ掛けは,他でもない折笠富美子さんが出演しているからという極々ミーハーなもの.ただし,単純に折笠ファンだからというだけではなくて,劇団出身ながら今は声優に特化している役者さんの本領を観たかったから,というのがある.
演劇の場合,俳優の演技だけではなく,脚本,演出,音楽などなど,あらゆる観点から愉しめるという魅力がある.多次元的だからこそ,作品や舞台毎の比較なんて易々と出来るものではない.
が,結論から言うと,脚本が残念.特に,カーテンコールに向かう20分間の脚本が非常に残念.全体を通じては,俳優さんの本人のキャラクターに媚びてしまった感が否めない.それはそれで面白いけれども,素人目には舞台という「非現実」の世界に徹した方が作品のインパクトは際立つ,と思っている.キムタクのドラマがキムタクのキャラクターに媚びてしまっているのと似ている.後半は,もう少し設定を活かして欲しかったかなぁ…….話の運びや流れが雑な感じ.尤も,“そういうものだから”それはそれとして面白味があっていいのだろうけれど.この脚本だからこそ感じた想いたちがあるのだから.
コメディというだけあって,2時間半,笑いは絶えなかった.脚本云々は,「芸術」というカテゴリだからこそあとで冷静に考えてみた無責任な言い草を書いてみただけであって,観ている間はそんな事はお構いなし.
音響や音楽は可もなく不可もなく.ミュージカルというにはやや曲のバラエティや魅せ所が乏しかったかも知れない.歌で言えば,後述の折笠富美子さんも含めての中で別格に歌に迫力があったのが,若干13歳の女の子.信じられないくらいの歌唱力.これが劇団育ちの本気か.
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そして本題,折笠さんの演技力,歌唱力が想像以上!それ以前に,ルックスも直球ど真ん中の折笠さんを見られただけで失神寸前なのに,専業俳優顔負けで舞台を引っ張れるのだから凄い.声筋や旋律にブレが無く,それでいて声の通りも抜群.CDでも歌が上手だとは思っていたけれど,そんなもの比じゃなかった.言葉もホール全体に一語一句通る.普段の声優業でも,そういう滑舌の良さが特徴的ではある.
もう,舞台終わった直後から胸がキュンキュンしっぱなし.
決定打は,パンフレットに寄稿してあったインタビュー.何となく裏表を感じるキャラクターではあるけれども,これだけ素敵なこと書かれたらもう積極的に騙されたいと割り切れるくらいに気持ちのいいコメントが寄せられていた.是非,恋人立候補させて下さい!って感じ.
舞台は好きな俳優さん目当てで行くべきではない,と思った.折笠さんが指揮を取っていないシーンも基本的に折笠ゾーンに視線が注がれてしまうので,多角的に舞台を楽しむという本義を純粋に貫けない…….
余談ながら,実はこの日,会場のお客さんで豊口めぐみさんを発見.しかしながら本人かどうか微妙に自信が持てなかったので声は掛けず仕舞い.京都に帰って調べてみたら案の定本人だった.好きな声優ならぬ,好きな女優さん2トップを一晩で見られるなんてなんてラッキー!
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さて,最後に少し思ったところをツラツラ.
エンターテイメントとか芸術とかって,単純に心地いいと素朴に思った.演じている本人達も本当に好きで演じていて,観ている観客達は心から楽しめる.誰も損する人がいない.世が世なら,自分もこういう世界に飛び込んでいたかも知れないなと思うと,少し心残りにさえ思う.俺は何をしているんだ,と珍しく悲観的に思ってしまった.
世界中を笑顔にしたい,とまで大きな想いは無いけれども,自分のせいで誰かが苦しむような仕事は嫌だなとぼんやりと思った.この一時の思いでふっと芸術の世界に飛び込むほどの度胸は無いし,自分は他に意義を見出せるフィールドを沢山持っているからそれはそれでいいのだけれど,そんな事を考えてみてちょっと進路選択に迷いを感じてしまった.


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