2010/01/22

True Crime (1999)

トゥルー・クライム 特別版 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2009-11-18)
売り上げランキング: 1671

 Clint Eastwood監督の映画「True Crime(トゥルー・クライム)」.Eastwood演じるスティーブは,彼の演じるキャラクターの中では珍しくカッコ良くない主人公だが,これがかえって死刑囚のビーチャムとの好対照をなしている.Eastwood作品の中では特に光る映画ではないけれども,観ていて飽きない映画ではあると思う.

 交通事故で死んだ同僚の追っていた死刑判決事件を引き継いだスティーブは,この事件に冤罪の可能性があることに気付く.酒浸りで女癖も悪い記者が,自らの勘を頼りに意地とプライドで真実を追い求めるストーリー.
 全体的には,王道のパターン映画の中にサスペンス,ドキュメンタリーなどさまざまなエッセンスを盛り込みすぎてかえってそれぞれがやや薄味になってしまっている感じはするけれども,主人公のカッコ良さまで薄まっているお陰でビーチャム一家の愛情がとても温かく感じられる.

2010/01/21

The Bridges of Madison County (1992)

マディソン郡の橋 特別版 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2008-05-08)
売り上げランキング: 958

 Clint Eastwood監督の代表作の一つ.初めて観たのはたぶん中学3年のときで,当時は全く魅力を感じなかった.今も昔も不倫とか浮気とかが大嫌いなたちなのでその点あまりいい顔は出来ないけれども,Meryl Streep演じるフランチェスカの安直な結婚の背景と,片田舎の狭い世界でくすぶる彼女の心境なんかを考えつつ年末に久し振りに観てみたら,思わず涙が出てしまった.モチーフ的に傑作とは言わないけれども,持っていてもいいかなと思う作品の一つになってしまった.

 田舎にとどまって,田舎の閉鎖的な価値観に染まってしまえる人はそれでいい.よく言えば適応力があり,悪く言えば好奇心が無いのだろう.だが,それで飽き足らない人にとって,外の世界を知らない人達とのしがらみに追われる田舎はやがて苦痛でしかなくなってくる.というのは,田舎出身でまったく田舎になじめなかった自分の経験による.

 さて,イタリアから軽い気持ちでアメリカにわたって結婚したフランチェスカは,やっぱり夫や子どもたちも含めた田舎の生活,田舎の価値観にどこか物足りなさを感じてしまう人で,そこに偶然やってきた写真家の男性と恋に落ちるわけだが,今観ると,もうこの恋が彼女の苦悩を救ってくれているようで本当に輝かしく見えた.突き詰めれば最初の結婚を安直に選んでしまった彼女に責任が無いわけではないのだけれど,そこは若気の至りでもあろうし,どこかで決断をしなければならない人生の難しさでもある.

 その物語が映えるのは,Eastwood演じるロバートが,本当にいい男だからだ.これが少しでも軽薄さのある男性なら逆の意味でフランチェスカに同情してしまいたくなりそうなものだが,この写真家が,出逢いの前も出逢いのあとも,とても好奇心旺盛で,多彩で,違いに甘受的で,ストイックなところがこの物語の純朴さを最大限に支えてくれている.
 一方でフランチェスカの気持ちも今となっては痛いくらいに分かる.特に,物語後半からラストにかけての葛藤がいい.最後の車のシーンで,今にも飛び出していくそのときに夫が鳴らすクラクションの間の悪さ.あのシーンの前後で涙を誘う監督Eastwoodのいやらしさ.完全にしてやられてしまった.

 そしてやっぱり忘れてはいけないのが,このラストシーンでカメラは完全にフランチェスカ一人に向かっているという点だ.ストーリーの中で気持ち程度に触れられているロバートの一途さを汲むと,このシーンで隠されているロバートの表情と苦悩にこそ,このストーリーの真の見どころだと思うのは,やや男性視点だろうか.

2010/01/19

Unforgiven (1992)

許されざる者 [DVD]
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ワーナー・ホーム・ビデオ (2008-04-11)
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 Sergio Leone流の西部劇の物語をClint Eastwoodが描いたEastwood監督アカデミー賞作品,「Unforgiven(許されざる者)」.マカロニウェスタンと呼ばれた(ある意味で皮肉られた)西部劇の,価値観や見どころはしっかり踏襲しつつも,観る者に余韻を残すヒューマンドラマに仕上げた監督Eastwood最初の傑作といっていい.

 「Il Buono, il Brutto, il Cattivo(続・夕陽のガンマン)」でも善人と悪人の境界線の難しさは暗に提示されているのだけれど,この作品ではむしろその境界線と葛藤をテーマに据えている.
 カウボーイたちから暴行を受けた婦女たちが尾ひれと懸賞金をつけて流した噂が,かつて悪名をとどろかせたEastwood演じるマニーらのもとに届く.葛藤に揺れながらも目的を果たし,それが引き金となって起こった悲劇的な結末に昂るマニー.物語冒頭から葛藤に悩み続けるマニーの繊細な描写が物語を重々しく彩る.

 マニーも保安官も,善人とも悪人とも言い切れない.マニーは保安官に過去の自分を映し,それでも殺された友人の無念を晴らすべく,自らの悪人としての運命を受け入れ,最後の暴挙に走る.暴力が,相手のみならず自分をも殺してしまう,それを知りながら暴力に訴えざるを得なかった人間の儚さと,暴力に対する強烈な批判が心に残る.
 同時に,そうした人間の内面を知らずしてただ単に暴力を英雄的にまつりあげる作家の存在は,突き詰めれば歴史やマスコミに対する痛烈な皮肉のようにさえ見える.この作品が「最後の西部劇」と呼ばれる背景には,この作品そのものが西部劇に対する強烈な自己批判を内包しているからなのではないかとも思う.

 西部劇として観るにはやや重い.単純にエンターテイメントとして楽しむならば,断然「Il Buono, il Brutto, il Cattivo(続・夕陽のガンマン)」だ.しかし,それだけで終わらないEastwoodの本質が,痛いくらいにこの作品にはにじみ出ている.あとに続く「Million Dollar Baby(ミリオンダラー・ベイビー)」や「Changeling(チェンジリング)」といった名作に見られるような,提起的なメッセージと静かに眠り続けるような余韻を残すEastwoodらしいラストの描き方も,この作品で既に始まっている.

2010/01/18

Il Buono, il Brutto, il Cattivo (1966)

続 夕陽のガンマン アルティメット・エディション [DVD]
20世紀フォックス (2007-02-02)
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 Sergio Leone監督のドル箱三部作第三弾.前2作それぞれが持っていたインテリジェンスと人間臭さを両方ふんだんに盛り込んで,なおアドベンチャー映画に仕上がっている今作は,三部作の中でも断トツに面白い作品.キャラクターたちの個性も光る.

 ひょんなことから存在が明らかになった隠された金貨を追って,三人の男たちがコミカルで熱い闘争を繰り広げていく.
 英題は「The Good, the Bad and the Ugly(善玉,悪玉,卑劣漢)」となるが,特にClint Eastwood演じるブロンディーはとても善玉なんてシロモノではなくて,ところどころ人情的な一面を見せる以外,基本的にやっていることは悪行ばかりというニヒルで狡猾なカッコ良すぎるキャラクター.
 Lee Van Cleef演じる悪玉役のエンジェル・アイは,士官になりながらも情報と立場を利用して上手く駆け引きしながら金貨の行方を追っていく.前作よりも遥かに魅力のあるキャラクター.卑劣漢役のトゥーコもむしろブロンディーやエンジェル・アイより遥かに人間くさい男でありながら,いつも二人に出し抜かれていいところを持っていかれる間抜けさがまたいい.

 大真面目な争いのはずなのに,逐一コミカルな展開が混ざっていて,逆に一見コミカルなようで実はちゃっかり頭と腕前を魅せつけているような展開があるのもいい.特に,ラストでの三人での銃撃戦は,ブロンディーのずる賢さとトゥーコの間抜けさがどうしても目立ってしまうが,エンジェル・アイをきっちり仕留めるブロンディーのカッコ良さがじわじわとしみてくる.

 3時間弱という長い映画だが飽きがこない見どころ満載の映画だ.役者の演技は見事だし,役者としてのClint Eastwoodの渋さを最大限まで引き出した彼の代表作といってもいい.とはいえ,何かテーマやメッセージ性があるかといわれればそんなものはなくて,ツッコミどころも随所にあるような完全なエンターテイメントでもある.完全でないからこそ気楽に楽しめるような,逆説的な一本だ.

2010/01/17

Per qualche dollaro in più (1965)

夕陽のガンマン アルティメット・エディション [DVD]
20世紀フォックス (2007-02-02)
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 Sergio Leone監督ドル箱三部作の第二弾.といってもどの作品もキャスティング以外につながりはないし,キャストが同じでも演じているキャラクターは全く別人という独立した映画.Eastwoodは相変わらず渋くていい.Eastwood主演の西部劇は最初に「Unforgiven(許されざる者)」を観ているのでこの作品が三番目だったが,このあたりからやっとEastwoodの西部劇のイメージが定着してきた.

 前作が知的な一面を持っていたのに対し,こちらは仇打ちや恋愛感情といった人間ドラマ的なエッセンスがふんだんに盛り込まれている.どちらが好きかは人によって分かれるだろうが,個人的には前作の方が好き.特に,同じGian Maria Volontèが演じる悪役のキャラクターが圧倒的に前作の方が魅力的だ.
 代わりに,Lee Van Cleef演じるダグラスがいい味をしっかり出してくれているのだが,こちらはこちらで今度は次作の方が魅力があるので,三部作を並べてみると一番薄味な感じが否めない.

 最後にどうでもいい話だが,主人公の名前の邦訳がかなり作為的だ.発音とスペルからそのまま直訳してしまうと日本語的にマズイのでそうなっているに違いないが,基本的にきたない言葉は好きじゃないので,スタッフの気遣いにはひとまず感謝.

2010/01/16

Per un pugno di dollari (1964)

荒野の用心棒 スペシャル・エディション [DVD]
ジェネオン エンタテインメント (2006-12-22)
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 Sergio Leone監督のドル箱三部作第一弾.わりと最近のEastwoodの印象が強い(といってもそれほど数を観ていたわけでもないが)自分にとっては彼のガンマン役はかなり新鮮味もあった.黒澤明との関連が物議を醸していたようだけれど,現時点で実はまだ「用心棒」の方を観ていないので問題なし.観ていたとしても,大して気にならず楽しめたんじゃないかと思う.

 とにかくClint Eastwoodがかっこいい.三部作どの作品についてもいえることだが,必ずしも正義の味方に徹していないヤクザなキャラクターが,Eastwoodの風貌と演技にぴったりマッチしている.むしろこの辺のイメージがのちの「Dirty Harry」シリーズのキャラハンのイメージなんかにつながっているとしたら,彼の役者としての幅の広さをかえって狭めてしまったのではないかというくらいにインパクトはある.

 ストーリーも,ロホ兄弟とバクスター一味との抗争というわかりやすい構図に大胆な情報戦や心理戦を組み込んで,西部劇としてだけではなく知的な楽しみ方も出来る秀作.テーマや中身のない“マカロニ”と皮肉ってはもったいない映画.個人的には,棺桶屋の使い方が好き.
 ラストの鉄板を仕込むシーンは,「Back to the Future」のPart II,Part IIIでも使われている名シーン.むしろこのシーンを観たくて手を出した映画なのだけれど,分かっていても見覚えのあるラストシーンを迎えたときは嬉しくて仕方なかった.もっとも,実際に鉄板程度でそんなに上手くいくかい,という突っ込み甲斐があるのは西部劇らしい.

2010/01/12

Back to the Future Part III (1990)

バック・トゥ・ザ・フューチャー Part 3 [DVD]
ジェネオン・ユニバーサル (2009-07-08)
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 自分が「Clint Eastwood」という名前を知ったのはこの作品が初めて.最初に見たときは小学生も低学年だったと思うのでそのオマージュも全く分からなかったが,父が西部劇が好きだった(?)ので昔これこれこういう映画があって,という話はしてもらった記憶がある.「Dirty Harry」シリーズもだいぶ昔に父から教えて貰ったものだし,案外,父もEastwoodが結構好きだったんじゃないかと思う.

 さて,舞台は西部1885年.この作品で主人公マーティが自分の素姓を隠すために名乗った名前が「Clint Eastwood」.“過去”の1955年を出発するとき既にその伏線は張られているのだが,Sergio Leone監督のドル箱三部作を見てからいっそうその辺の深みがわかって,思わず観直してしまったほど.
 改めて観て一番おおっと思うのはポンチョの下に鉄板を仕込んだタネンとの決闘シーン.Part IIでも登場していたEastwoodの「Per un pugno di dollari(荒野の用心棒)」のオマージュで,マーティの偽名がいっそう映える.現代に戻って英雄となったEastwoodの名前も面白い.
 それ以外にも,「Dirty Haryy」や「Taxi Driver」のオマージュも組み込まれているようで(これは最近知ったもので「Taxi Driver」を観たときには気付かなかった),映画ファンを喜ばせる小ネタがふんだんに盛り込まれている.こういう小ネタに逐一ニヤニヤ出来るくらいのファンにはなりたいものだ.

 Part IIで伏線の張られていたビフの祖先ビュフォード・タネンのノータリンなキャラクターも一族の中でも際立って立っているし(現代でビフが生きているのは既にタネンが父親だったためかあるいは直系の祖先ではないのか),クララとの掛け合いも新鮮味があって悪くない.
 過去2作品とは違って,SF色はすっかり色あせている作品だが,西部劇らしい面白さをコミカルに描いていてとてもいい.昔はPart IIの方が好きだったけれども,今では完全にこちらの方が好きだ.「Back to the Future」でも面白いけれども,三本ちゃんと観てみるとSF色がPart IIで,ドラマ色がPart IIIで補完されていて,全体的には結構バランスもよくなっているんじゃないだろうか.

 強いていえば,ラストシーンのドクの台詞はじめ,台詞がやや臭すぎる感がしないでもないが,1990年前後の作品としてはこれくらいがちょうどいいのかも知れない.

2010/01/09

菊池契月展

 ビックカメラに所用があったので,ついでに京都駅で開催されていた「菊池契月展」へ.秋にアンコールワットの企画展を観に行ったときから気になっていて,割引券も取っておいたものだ.

 菊池契月といえば,日本を代表する日本画家.主に京都で活躍した画家ということもあって,京都市内の美術館には彼の作品が数多く残されているのだが,出生地の長野県のものも含めて多くが集まる企画展に行ったのは初めてのことだ.

 久々に会心の展覧会だった.

 彼の作品を年代順に追っていくのだが,初期の作品をまじまじと観るのは初めてだったかも知れない.そのインパクトたるや!色づかい,タッチ,構図,全ての点で圧巻だ.とりわけ特徴的なのは,薄めの黒で強調された太い線描.迫力あるモチーフを印象的に浮かび上がらせるその手法は,四条派と呼ばれる京都画壇の中でも特に顕著で(あると思われ),鳥獣戯画に始まる日本の「マンガ」のルーツのようなものさえ感じられる.もちろん,マンガとは違って絵画ならではの風格はあるのだが,これまで見てきた菊池契月の作品たちとはあまりに印象が違ったのだ.

 ところが,画壇でにわかに脚光を浴びるようになってから,契月は自らの絵の可能性をさらに追究していく.その結果が,世間で知られる「少女」のような穏やかでシャープな日本画になっていくのだ.
 また,欧州への研究で残された数々の模写も多く展示されていて,契月の絵に対する真摯でストイックな姿勢が強く感じられた.

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 今回の美術展で収穫だったのは,初期の契月のまったく違った作風を知ることで,一般的に知られている契月の作風の奥深さが見えたことだ.

 力強い線描と濃厚な色づかいから,シャープな線描とやわらかい色彩への作風を変えていった契月.本来の日本画の美を追究した,といえばそうなのだが,この美術展で自分自身が感じたのは,それだけではない.
 「少女」や「友禅の少女」より少しあとの,例えば1930年の「婦女」(画像は探せなかった)が今回の美術展で一番好きだった絵だ.線描はもはやあるかないか分からないくらいまで極限まで細く薄いものになり,色彩も大部分が乳白色であわい.となれば,モチーフと背景とのコントラストが弱くなってしまいそうなものだが,それでいて初期のころ以上に圧倒的な存在感を魅せつけるのだ.これは何だ.

 人間社会でも,実力があってなお「私は強い」とか「私は偉い」といってしまえば印象はどうであれ世間には強いもの,偉いものとして認識されがちなものだ(自分自身こういう「能ある鷹は爪を出せ」なスタイルが実は大好きなのだが).絵でも同じで,あえて線描を力強くすることでモチーフそのものを強調的に描きだした典型例がマンガだ.

 しかし,本当にいいものは,強いとか偉いとか自己主張しなくてもおのずと存在感を感じさせるものだ.黙っていて知らず知らずのうちにまわりから認識されるものだ.
 初期のころの契月の絵を観たあとで観る彼の全盛期の絵たちからは,契月があえてインパクトのある画風を選ばなかったという日本的な美意識とつつましさが感じられ,だからこそ契月の絵がいまなお美しいのだと諭されたようだった.

 むかし,Georg Simmelの額縁に関する評論を読んだことがある.額縁は,架空の風景である絵画と現実世界を隔離する役割を担っている,というのが彼の主張の一つだったように思う.ならば額縁が無ければ,絵の魅力は無造作に現実の部屋の中で拡散してしまうだろうか.本当に迫力のある絵は,空間そのものを引きずりこんでしまうくらいの引力がないものだろうか.

 菊池契月の絵はSimmelの額縁論とはまったく逆行して,不意にかけられた掛け軸の中の溶けこむようなモチーフが観る者を引き込むような圧倒的な存在感を感じさせる.

2010/01/07

THE ハプスブルク

 京都国立博物館で始まった「THE ハプスブルク」展へ.東京(六本木)と京都の二都市開催で,秋に六本木を通りながらも時間が無くて行けなかったので,地元開催を待って初日に行って来た.
 出展はほとんどすべてが,ウィーン美術史博物館とブダペスト国立西洋美術館から.ウィーンもブダペストも来月訪れるので,今回来日している作品たちは現地ではお出かけ中になるが,ハプスブルク家をめぐる絵画を予習として観られたのでかえって良かったと思う.

 ところで,ウィーン美術史博物館の作品展,ここ数年多すぎないか.来日してくれるのはありがたいのだけれど,現地のコレクションが薄くなってしまうことを考えると,どうにも申し訳ない.収益にはなるとしても,お金をまわすだけでなんでも解決してしまう日本経済のやり方を象徴しているみたいだ.日本からも,高山寺の鳥獣戯画はじめ国宝級の美術品を出展したらいいのに.

 さて,今回の企画展の目玉は何といってもハプスブルク家の肖像画たち.Möllerの「11歳の女帝マリア・テレジア」やWinterhalterの「オーストリア皇妃エリザベート」など,世界的に知られる名画が狭いフロアに集まる.前者は一昨年,現地のウィーンで観ていたので対面するのは二度目だ.

 ただ,欧州指折りのコレクションを誇る美術史美術館の絵画の全てを現地でじっくり観られたわけではないので,素通りしてしまったり見逃してしまった,あるいは忘れてしまったのであろう作品もわりと多く,来日していた多くの絵たちは新鮮だった.特に印象的だったのは,van Dyckの「ヤン・ファン・モントフォルトの肖像」.van Dyckの作品はこれまでもたくさん見てきたけれど,表情の捉え方がものすごく巧い.美術の技巧以上に感性的なセンスが漂っていて,今回来日していた作品たちの中では,この作品が一番温かみと人間臭さがあった.

 それ以外にも,BrueghelやRubens,Rembrandt,Goya,Dürerなど名だたる画家たちが勢ぞろいで,見どころは満載.ただ,「THE ハプスブルク」と銘うっているわりにはハプスブルク家とゆかりの深い絵画は少なく,どちらかというと「ウィーン美術史美術館&ブダペスト国立西洋美術館」展,といった方が的を得ていたのは残念.もっとも,ハプスブルク家をめぐる名画で統一しようとしたら,それこそルーブルはじめそうそうたるコレクションを集めなければならないのであまりに難しい.

2010/01/06

Back to the Future Part II (1989)

バック・トゥ・ザ・フューチャー Part 2 [DVD]
ジェネオン・ユニバーサル (2009-07-08)
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 「Back to the Future」の続編.やっぱり何度も観ている映画.なんか未来の話ってイメージがあるけれども,実際には変わってしまった現代と過去が主な舞台.前作が一応ひとつの作品で完結しているのに対して,こちらは完全にTo be continuedで終わるのがやや気持ち悪い.

 むかしは未来のシーンで登場するCGや世界観が凄いと思えた時期もあったけれど,今見るとそのあたりは物凄くチープに感じる.ちなみに設定上はこの映画の未来は2015年.5年後の世界だと思うと,なおさらリアリティに欠ける.当時としても未来的なSF映画はたくさんあったはずだし,この作品の見どころはやっぱり未来じゃなくて別のところにあると思う.

 個人的には,去年Clint Eastwoodの作品をたくさん見ているので,Part IIIにつながるところどころの小ネタが嬉しい.パラレル現代でビフの観ている映画は「Per un pugno di dollari(荒野の用心棒)」,次回作のオマージュにつながる布石だ.去年この映画を観たとき,「Back to the Future」にやっと追い付いた気がして嬉しかった.
 或いはビフの家系が西部のビュフォード・タネンにさかのぼることが紹介されていることや,ドクの口から西部の言葉が漏れるのも次回作への布石.

 以前はPart IIの方がPart IIIより好きだったけれども,観れば観るほど,SFというよりはアドベンチャー的な面白さが映えてきて(自分が物理に長けてきたのとも相まって),マカロニ・ウェスタンなClint Eastwoodに骨抜きにされてしまったこの一年で形成は完全に逆転.舞台はウェスタンへ.

2010/01/02

Back to the Future (1985)

バック・トゥ・ザ・フューチャー [DVD]
ジェネオン・ユニバーサル (2009-07-08)
売り上げランキング: 376

 新春トップバッターは「Back to the Future」.やすやすと“人生を変えた映画”なんて言葉は使うべきじゃないけれども,この映画だけは特別.この映画が自分を科学と,そして京都と引き合わせた一番最初のトリガーである.この映画と出逢わなかったら始めからコテコテの文系人間になっていた可能性だってあるわけだし(実際に趣味では完全に文化系&体育系だし),いまの立場や交友関係も8割以上違っていたかも知れない.

 いわずと知れたドクことEmmett Brown博士が発明したタイムマシン,デロリアンが次々に引き起こす“タイム・トラブル”を面白おかしく解決していくSFアドベンチャー.いまの時代から見れば映像技術,科学的な矛盾,などなど突っ込みどころは満載だが,この手の話を本格的に映像として成功させたさきがけの映画であり,いまなお古さを感じさせない圧倒的な存在感がある.「タイムマシン」と聞いてこの映画より先に思い浮かべられるような名作は,もうこの先登場しないんじゃないかな.

 単なるSF映画にとどまらず,古き良き時代を思い起こさせるオールディーズ映画でもあったり,人間模様をポップに描くコメディ映画でもあったり,ロックミュージックを斬新に描くヒストリック映画でもあったり,楽しみ方は千差万別.そのすべてで楽しめる自分にはボリューム満点過ぎて目移りしそう(Chuck Berryの名前が出ただけでニヤけてしまう).ちなみに自分が一番好きな小ネタは,2匹の犬の名前のネーミングセンスだったりする.

 Christopher Lloydはじめ,キャスティングも素晴らしい.Emmet Brownことドクがあれだけ魅力的に映ったのも,ひとえにChristopher Lloydの存在感ありきといっていい.Michael J. Foxもシリーズを通じて,至って普通の高校生から未来の息子役,西部のガンマン役まで違和感なくこなす名演が光る.

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 もう20回以上観ている映画だが,冷静に考えてみるに,この映画の面白さの秘訣は,実は科学的な理論に足を突っ込み過ぎていないところなんじゃないだろうか.下手に本格的に物理学の理論や専門用語なんかを持ち出してしまうと,必ずどこかで無理が生じてしまうし,まして自分みたいにちょっとでも科学をかじっている人間にしてみたら専門用語はかえって空想を制限する足かせにしかならない.
 その点,この映画は一貫して,誰にでもわかるようなシンプルな「ヘリクツ」を圧し通してストーリーが展開していくから,SF臭さを感じさせないアドベンチャー的な面白さが最初に引き立つのだろう.

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 さて,新年トップバッターに超大作を持ってきたわけだが,実はこの映画を選んだのはあとあとへの布石だったりする.

2010/01/01

A Happy New Year 2010

 新年あけましておめでとうございます.

 ……年末4日間インフルエンザでダウンしてました(ずっと寝ているわけにもいかないので暇つぶしに更新はしてましたが).「交通事故より死亡率低いじゃん」とか笑ってたけど実際かかって39.5℃とか出るとアレですね,流石にちょっと不安になりますね.それでも3年前にかかったノロウィルスの方が3倍以上きつかったですけど.

 まぁお陰さまで年末に仕上げる予定だった論文の草稿もまだ手付かずの状態でして,論文と学会投稿がますます切羽詰まってきまして,お先真っ暗です.それでも一つオリジナルの状態方程式は導出できているので修論は通るとは思うんですけど.次のプレゼンまで時間が無過ぎ.

 それでもストックは山ほどありますし,今月もチョコチョコ近場の美術展には出掛ける予定ですので,気晴らし程度にマイペースでやっていこうと思います.本年もよろしくお願いいたします.

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 余談ですが,来月,大学の仲間と修了旅行と銘うって海外に行って来ます.トルコ~ポーランド,ドイツへ抜ける10ヶ国の旅です.イスタンブールが目的地に加わった途端,予習ノルマが半端ないことになっている今日この頃です.

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