ドイツから一旦スイスへ入国.ここまでのベストシティはベルリン.ただ,正直なところそのベルリンも京都やバンクーバーを超えるかというと,多分同じくらい(改めて見返してみると訪れた時に感じた以上にベルリンはとても魅力的な街だったと思う.ベルリンは空港から中心部までの街並のマイナス点が結構引き摺っていた感がある.).
ところが,旅のダークホースはスイスの首都,ベルンだった.後述の通り,実は訪れるかどうかすら迷った街だっただけに不意打ちの感動も絶大だった.
尚,今回の旅のテーマの一つだったのが,物理学者を訪ねる旅(もちろんこれはテーマの一つでしかなかったわけだが).この期待に一番応えてくれたのも実はスイスで,主役であるEinsteinの足跡が沢山残っていたのも嬉しい誤算だった.
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【バーゼル(スイス)】★★★★★
数学者Eulerの生まれ故郷.と言ってもEinsteinのウルムと同じく,生まれて間もなく転居しているのでそれらしい史跡が残っているわけでもない.日本では,昨シーズンまで中田浩二がバーゼルでプレイしていたので聞き覚えがある街かも知れない.中心街とEulerの生家跡を散策した程度.
それでも,ライン川を挟んで発展して来た国境の街は,それまでのドイツのどの街よりも欧州らしい雰囲気を漂わせた美しい街だった.チューリヒ,ジュネーブに次ぐスイス第三の都市でありながら,非常に趣深い雰囲気が漂う.
因みに,バーゼルはフランス・ドイツ・スイスの国境にあるので,ここからフランスにもとんぼ返りで入国出来たのだが,やっぱり時間がもったいないので却下.こういう無駄な入国を頑張れば,今回の旅で7カ国か8カ国位回れたには回れただろう.
これはもちろん,数学者のEulerに因んで名づけられたホテル.高級ホテルなので自分の旅程には勿論入らない.Eulerに関する史跡はほとんど残っていなかったが,かつてスイスフランの10SFr札に肖像画が描かれた事もあった天才は国民にとってもポピュラーな存在なようだった.
- 市立劇場
- エリザベート教会
- タンガリー噴水
- 市立美術館
- 大聖堂(ミュンスター)
- ミュンスター広場
大聖堂はライン川沿いに建っており,大聖堂の裏庭からはライン川と対岸の街並が臨める.この裏庭と表のミュンスター広場は市民の憩いの場ともなっているようで,市庁舎前のマルクト広場に次いで賑わっていた.かといって,店や下世話な宣伝文句がズラリと並ぶでもないところがスイスの良い所だ.
- フライエ通り
- 市庁舎
- 聖マルティン教会
- マルクト広場
- 魚市場の噴水
- 聖ペーター教会
- バーゼル大学
奥の方まで入って見れば,ここにはEulerの足跡が随所に残っていそうな気配もしたけれど,時間の関係で軽く流し見する程度に留めてしまった.
- 聖レオンハルト教会
- バールフュッサー広場
- 聖マリエン教会
- オイラー生家
結構情報収集をしたのだが,確信情報を得るには至らず,ドイツ語で現地調査して何とか探し当てたのが生家.ただ,何も表示が無かったので,それが本当にEulerの生家かどうかちょっと怪しい.また後で再調査の必要あり.
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【ベルン(スイス)】★★★★★【別格】
今回の旅のベストシティ.というよりも,これまで訪れた世界の街の中でも断トツの首位.
スイスの首都.といっても,政治と経済の中心はジュネーブとチューリヒが担っているので,連邦議会がある以外は至って長閑な田舎町.実は,旅程によっては却下最有力候補だった街.それでも結局訪れたのは,Einsteinが相対性理論を書いた街でもあり,旧市街が世界遺産にもなっているとの理由から.
東南北を川に囲まれた稀有な地形に恵まれ,川向うに山々を臨むベルンの中心街は,見事に現代の風景から切り離されたまさに秘境的な美観.自然の地形と,欧州の伝統的な建築風景が見事に絡み合った世界.旧市街は理想化されたジオラマの中に迷い込んだような非の打ち所のない街並.自然も非常に豊か.唯一残念だったのは,バスとトラムという街の公共交通がどちらも電気稼働なので,街の中心部には電線が張り巡らされてしまっていること.しかし,自然への影響を考えての事がスイスでは一般的な光景であり,一般家庭の電線と違って将来的な改良も容易だろう.
- 聖霊教会
- 駅前広場
- ブーベンベルク広場
- バグパイプ吹きの噴水
ベルンには,モニュメントの施されたお洒落な噴水が多く,街のランドマークにもなっている.これらが街の風景に彩りを添える.化け物が子供を食べているような残酷なものがあるのも欧州ならでは.ドイツで観た天気予報では雨が降りそうだったが,バーゼルからベルンに掛けては見事に天気に恵まれたのも良かった.因みに,ベルンでの一夜は激しい雷雨だった.
- 牢獄塔
- 時計塔
- アンナ・ザイラーの噴水
- 狙撃手の噴水
- リフリの噴水
- ヴァイゼンハウス広場
- 子供喰いの噴水
- コルンハウス広場
- 市立劇場
- ツェーリンゲンの噴水
- アインシュタインハウス
Einsteinが特殊相対性理論を書いた当時の家は今も残っている.Einsteinが相対性理論を書いた机を実物で見て,鳥肌が立った.Einsteinが特殊相対論を書いたのは,正規の研究者ではなくベルンの特許局で働いていた時期のこと.数学と物理学で抜群の才能を見せた妻のミレーヴァと共に,仕事の合間に研究を進めたEinsteinの最盛期だとも言える.もちろん,特殊相対論のみならず,ノーベル賞論文の光量子仮説やブラウン運動の論文もこのベルンの部屋で書かれたものだ.
余談だが,アインシュタインハウスで放送されていたEinsteinの経歴のビデオの中で,一枚の集合写真があった.この集合写真の中に,Einstein,Schrödinger,Heisenberg,Pauliという奇跡の4人が全員写っていて鳥肌が止まらなかった.この写真の正体をハウスの人に尋ねたが,詳細は分からなかった.
丁度,アインシュタインハウスにテレビ局の取材が来ていたので,独語でインタビューに答えて来た.もしかするとスイスでテレビ出演しているかも.テレビを見ていないので真偽は不明.
- サムソンの噴水
- 旗手の噴水
- 市庁舎
- モーゼの噴水
- ミュンスター広場
- 大聖堂(ミュンスター)
ベルンの旧市街が一望出来る場所.やはり高所恐怖症が発動して足がガクガクになったが,自然に恵まれたベルンの素晴らしい風景にも出逢えて大満足.航空写真のように街全体は観られないが,塔の頂上を一周すれば,ベルンの市街地と八方を囲む川と山々の見事な風景を臨む事が出来る.
「ベルン(Bern)」の語源はクマ.という訳で,街の熊公園(普通の公園なので入場料も無し)では熊が飼育されており,街行く観光客の人気の的となっている.超絶ラブリー.くまタンが可愛過ぎる.これで萌えない方が異常.公園の案内所ではベルンの歴史に関する資料や映像も充実.
- バラ公園
- ウィンタートーア橋
- 伝令の噴水
- ミューレ広場
- スイス・アルプス博物館
- ベルン歴史博物館
- アインシュタイン博物館
2005年,日本では静かに幕を下ろしてしまった「世界物理年」だったが,この年にベルンではEinsteinに関する催しが活発化し,当時開催されていた「Einstein特別展」が最近,歴史博物館の一部を独立させて正規の博物館として公開される運びとなったそうだ.ガイドブックにも載っていなかった大規模な「アインシュタイン博物館」(因みに,最新の『地球の歩き方』には一言説明が載っていた.これを観ていたらベルン来訪を迷う事も無かっただろう.)も観る事が出来,ドイツではほとんど残っていなかったEinsteinの遺品や手記の数々を目にする事が出来た.
スイスとドイツを訪れて再確認したのは,Einsteinはドイツ出身であってもその本質はスイス人だという事.本人も,ドイツに対して良い言葉をほとんど残していないし,ベルンやチューリヒでの生活を恍惚と綴っている点を見てもEinsteinの足跡の多くがスイスにある事は明白だが,今回の旅でそれが身に沁みて分かった.博物館でアインシュタインの資料集を買いたかったのだけれど,あまりに荷物になりそうだったので悩んだ挙句断念.ベルンにはいずれ住むのだ,急ぐことはない(笑).
尚,Einstein本人は遺言により,記念館の設置はもちろん,埋葬まで拒んだような人だったが,子孫が個人で開いた記念館ではないし,こういう博物館が一つあればいいと個人的に長く思っていたので,ベルンを訪れたのはこの旅最高のファインプレーだった.
少しだけ余談.アインシュタイン博物館で印象的だったのは,広島の原子爆弾や被害写真と共に,相対性理論との連関が展示されていた事.Einsteinが1999年にTIMEのPerson of the centuryに選出された時,Stephen Hawkingが同誌に次のように寄稿している.
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マンハッタン計画に参加していないEinsteinに原爆の責任を負わせることは,万有引力の発見者であるNewtonに航空事故の責任を負わせるのと同じだ.原爆の爆発は,Einsteinの心を深く傷つける出来事だったのだ.
(『相対性理論の一世紀』より一部修正)
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Einsteinのその後の平和活動を見ても明白だが,そもそも相対性理論を学んだ人間ならば,物理学にまで平等と調和を持ち込もうとしたEinsteinの思想が分からないはずがない.
それでも.
万有引力が発見されなければ航空機は発明されなかっただろうし,相対論が提唱されなければ原子爆弾は開発されなかっただろう.その本当に僅かな屁理屈を大きな十字架として背負い自責の念に囚われ続けたEinstein. 当人と血の繋がりもない博物館がここまで展示するのはやり過ぎな気もするが,それでも,自分にはEinsteinの遺志を汲んでいるようにも思われ,物凄く厳かに感じられた.今回の旅でEinsteinという存在をいい意味で再発見できた.
とにかくベルンは別格に素晴らしい.もはや,これから先ベルンを避けて欧州旅行は出来ないだろう.都市機能は無いに等しいので,住むには不便かも知れないが,むしろ便利過ぎる現代に首を傾げたいくらいの自分には実に魅力的だ.
京都とは比べ物にならないほど胸躍る街.文化と歴史では京都の方が圧倒的に上だろうけれども,街の風景と秩序と自然,そして相対論の街となれば,自分の中で京都に勝つ余地は無い.どうにかしてベルンに移住するチャンスが掴めないものか.
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【チューリヒ(スイス)】★★★★
綺麗な街でだったが,生憎の雨に見舞われてしまったことと,前に訪れた街がベルンだったこともあってやや期待外れ.又,バーゼルやベルンと違って,都会色が濃厚目だったのも意外だった点.チューリヒでの最大の目的地はETH.逆に,街の景観を一番の楽しみで来たわけではなかったので,この日に雨が降ってくれてかえって幸いしたと考えることにした.
ドイツ語圏にはおもちゃ博物館が非常に多い.ここも是非とも入りたかったのだが,残念ながら午後の短時間しか開いていなかったので断念した.結局,チューリヒには午後まで居たので,入れない事も無かったのだが.
- リンデンホフ
- アウグスティナー教会
- 聖ペーター教会
- ヴァイン広場
- 市庁舎
- バイヤー時計博物館
- パラーデ広場
- 聖母聖堂(フラウミュンスター)
- 大聖堂(グロスミュンスター)
- ギルドホール・ツア・マイセン
- 国立銀行
- チューリヒ湖
晴れていれば湖畔の風景が非常に美しいだろう.午前中は未だ雨が酷くはなかったので,多少遠くの岸まで見えた.
- ゼクセロイテン広場
- オペラハウス
- チューリヒ美術館
- チューリヒ大学
1833年創立のスイスの最高学府.Einsteinはこの大学に博士論文を提出している.直ぐ隣に立っているETH ZurichがEinsteinの出身校.ただ,後に書くようにETHよりも寧ろチューリヒ大学の方がEinsteinの出身校として売り出している印象.尚,スイスの最高学府と言いつつノーベル賞受賞者ではETHの圧勝.チューリヒ大学の自然史博物館はなかなか面白かった.ベルリンの自然科学博物館は古臭くてイマイチだったが,こちらは無料公開されている上に,剥製を中心に実物標本が非常に充実しており,期待以上.
- ETH Zurich(スイス連邦工科大学チューリヒ校)
1855年創立の欧州の理系大学最高峰.Einsteinの出身校として知られる.Einsteinは後に教鞭も取っており,その他にSchrödingerとPauliも教授として在籍.もうこの顔ぶれだけで普通は失禁するレベル.
ただ,期待とは裏腹にあまりEinsteinを前面に出しておらず(ウィーン大学でSchrödingerが神格化されて称えてられていたのとは対照的だ),常に未来を見ているようだった.この日丁度,大学のオープンキャンパス的なイベントが開催されており,修士のパンフや入学案内まで貰って来てしまった.最初は入学式かと思ったのだが,見たり話を聞いたりするとそうではなく,公開講義なども企画されていた.残念ながら数学や数理物理系の講義は時間が合わなかったので出席せず.パンフを大量に貰って来たので,これが結構かさばって後々まで大荷物になったというのは笑い話.
非常に充実していた博物館の一つ.特に,世界的に知られるスイス傭兵など軍事関係の展示は面白かった.「家族」というテーマで企画展が開催されていて,スイスを中心とした欧州の家族の歴史や変遷を展示すると共に,様々な大人向けの家族企画が催されていた.こういう企画展は今の日本では流行らないだろうなと思うと寂しいものがある.
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【雑談】 スイスは物価が高いとよく言われる.それは事実で,例えばMcDonaldのノーマルなハンバーガーが日本円で400円.バリューセットで2000円.しかし,市民が利用するスーパーマーケットに足を踏み入れると,むしろ日本より物価が安いくらいで肩透かしを食らった.基本的に,飲み物や軽食はこういったスーパーで買うようにしていたけれども,500mlのコーラでも100円でお釣りが来るし,マックより遥かに中身の入ったバーガーパンでも200円出せば買える.他の日用品などもEURO圏や日本よりかえって安かった.
単純に美味しい商売をしているだけなのか,それとも為替などの問題があるのか,法的な規制があるのか,その辺は良く分からないが,スイスの金利が異常に高い理由が何となく分かった気がした.取り敢えず,スイスで生活するにしても思ったほどお金はかからないかも知れないと思った.因みに,今回の旅で一番物価が高いと感じたのはウィーン.