2009/11/30

L' Amant (1992)

愛人(ラマン) 無修正版 [DVD]
東北新社 (2000-08-25)
売り上げランキング: 28988

 タイで知り合った日本人に紹介して貰ったフランス映画で,帰国してからわりと直ぐ観た.植民地時代のベトナムを舞台にしたラブストーリーで,時代背景などを全く無視して観てしまうと,延々とセックスシーンが続くただのかったるい映画にしかならないかも知れない.

 フランス映画らしいというか,色彩やBGMに加えて,台詞のいいまわしがとても凝っていていい.何というか,フランス映画は数を観ていないので一概にはいえないけれども,全体的に五感すべてにうったえてくる映画が多いように思う.色彩や音楽,カメラワークや台詞を上手につかって,視覚,嗅覚,味覚,聴覚,触覚のすべてを覚醒させるというか,そんな感じ.この映画も,そういうセンスは感じた.

 しかし,色々な意味でのただただネットリとした描写はやや退屈.最後のラスト5分でそうした気持ち悪さがサッと洗われるのだけれど,そこまでが冗長過ぎてやっぱり少し気持ち悪さがが残る.

 余談だけれども,韓国映画でほとんど同じタイトル,同じパッケージの映画があるようなので(お店で見かけて勘違いしそうになった)間違いに注意.

2009/11/29

雑記#009

 最近でも,レビューしている映画は1ヶ月以上前に観たものがほとんどで,タイムラグがある.夏以降に観たものでもまだ30作くらいストックがあるけれども,少しずつたまって来た今となってはそれに固執する必要もないし,さすがにそろそろ本業で時間を取られていることを考えれば,就職活動中のものや過去のものもそろそろチミチミ載せていこうと思う.

 それでも,なるべく最近見たものはホットなうちに.ブログとは別に簡単なデータベースとコメントリストを作るようにしたので,それを見ながらレビューは幾らでも出来るのだが.

 ちなみに,現時点で,今年観た洋画は大体150本(2回目多数),邦画その他は30本,海外ドラマが約260話(洋画約80本分)くらいか.やっぱり就職活動中の分が相当効いている.

2009/11/28

TAXi (1998)

TAXi [DVD]
TAXi [DVD]
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ポニーキャニオン (2005-03-02)
売り上げランキング: 30837

 アド街ック天国を彷彿とさせるOP(挿入曲そのものは「Pulp Fiction」で既出かと).

 多分テレビで散々放送していたはずなのだけれど,実は見ていなかった映画.フランス映画だということも知らずに見たら言葉はチンプンカンプン.仏語難しい…….
 ストーリーも王道ながら期待を裏切らない痛快なカーアクション映画.もう少しアクションシーンが多ければなぁと思わないでもないけれど,結果オーライというアメリカンな盛り上がり方とは一味違った面白さがある.

 ただ,車の改造の仕方がフランスというよりドイツや日本的な感じがするのは気のせいだろうか.イタリア車やフランス車の美しさの一つは,曲線美にあるようにも思うので.

2009/11/27

The Invisible Circus (2001)

姉のいた夏、いない夏。 [DVD]
ギャガ・コミュニケーションズ (2007-06-01)
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 Cameron Diazは主演という名の助演.欧州で不可解に死んだ姉の足取りを追う妹のストーリー.

 描くべき心理描写が描かれていないのではなくて,描くべき感情そのものがないといった方がいい.見えるべきものが描かれていないのではなくて,もともとFaithには何も見えていなかったといった方がいい.
 この映画の失敗は,ドラッグを登場させてしまったこと.ドラッグを言いわけにすれば,どんな不可解な行動も,どんな奇妙な思考も,全て無意味に片付けられてしまう.姉のFaithはそれでも,確固たる信念に従って行動したのだ,という一番大事な部分を放棄してしまったら,この旅にも,この物語にも価値がほとんどなくなってしまうように見える.父の存在がうやむやなのもイマイチ.

 演出の面でも,最終的にWokfの主観で物語が語られるのなら,Wolfの見た光景だけをつなぎ合わせて映画をつくりあげた方がリアリティがあっていい.結局,そのあたりも中途半端.

 淡々と登場する欧州の風景は心地よかった.観終わったあとにそこそこ気持ちよさが残っただけに,それぞれの部分でもう少しこだわりと情熱を魅せて欲しい映画.

2009/11/26

The Dead Pool (1988)

ダーティハリー5 [DVD]
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ワーナー・ホーム・ビデオ (2009-11-18)
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 ダーティハリーのラストシリーズ.若き日のLiam NeesonやJim Carreyが初々しくていい.

 ストーリーはというと,Harryが結構丸くなってしまった一方で,事件そのものもご都合主義的な感じが否めず,全体的に迫力に欠ける.Clint Eastwoodの年齢的な温かさも,ダーティな雰囲気と相いれなくなって来ていたというのもあると思う.一つのシリーズで間があいてしまうと,時系列でストーリーが進んでいくものじゃない限り年齢的なギャップは避けられない.

 ラストに関しては,もうアクションとかサスペンスじゃなくて,どっちかというと戦隊ヒーローものっぽい空気.ついでに,ラジコンカー爆弾.あれだけの威力の爆弾を乗せた高性能マシンを80年代の素人が作れるもんなのかなぁ.

2009/11/25

Lifeboat (1944)

救命艇 [DVD] FRT-108
救命艇 [DVD] FRT-108
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ファーストトレーディング (2006-12-14)
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 Hitchcockの映画.Hitchcockは何年も前に友達に勧められていたのに,結局初めてみたのは今年の春.こちらはHitchcockの中では異色の作品,なのかな.

 戦火から逃れた船の乗客たちが,一隻の救命艇という閉鎖的な空間の中で漂流を続ける物語.ほぼ一つの舞台で繰り広げられる戯曲的な展開と,非日常的な状況下での人間の心理描写が面白い.

 ただ,その心理描写もちょっと違和感がある.極限状態まで追い詰められた人間たちにしてはあまりに楽観的に冷静でもあるし,一つ一つの行動に不可解な点も多い.エンディングも,この長い航海の幕切れとしてはあまりに中途半端な感じだ.映像的にも,下手に安っぽい星空なんか張りつけない方が良かったと思う.

 上に書いたような物足りなさの背景には,戦時中という特殊な時代背景もあるのだと思う.当時の映画が自由に作れたとはとても思い難いし,映画がプロパガンダとしての役割を大きくになっていたことを考えれば,アメリカ人に甘くドイツ人に冷酷な脚本も仕方ないのかも知れない.

2009/11/24

Friends season 6

フレンズ VI 〈シックス・シーズン〉 セット1 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2008-05-08)
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 RossとRachelの泥酔結婚からMonicaとChandlerの婚約までを描いたシーズン.ルームメイトが変わったり人間関係が変わったりと,シーズン5とシーズン7の間の緩衝材的な部分もあって劇的な展開は少ないけれど,その分,ゲストの存在感が大きい.

 ゲストの中でひときわ目立つのは,Bruce WillsとRalph Lauren.ってかRalph Laurenドラマになんか出るんだ,って感じ.Bruce Willsはゲストの中では登場回数も多く,この大物が脇役でおさまってしまうのを見ては改めてメインの6人を“ああ,この人達ってスゴいんだな”と思わされた.

2009/11/23

Friends season 4

フレンズ IV 〈フォース・シーズン〉 セット1 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2008-05-08)
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 ドラマ「Friends」の4thシーズン.このシーズンの主役は,代理母出産を決意するPhoebeと新たな結婚に向かうRossといっていい.米英での国際結婚でもいろいろと障害はあるようで…….あとは,ラストでマイラブリーChandlerに大きな進展があるのも嬉しい.順不同で観て,結末を先に知っていただけに待ってましたといった感じ.

 このドラマのキャラクターはそれぞれ救いようのない欠点があるから面白いのだけれど.やっぱりシリーズ通して人間関係ではRachelが一番損してるよなぁ…….逆に,Chandlerが一番得してる,っていうか彼だけ魅力があり過ぎる.

2009/11/22

Copying Beethoven (2006)

敬愛なるベートーヴェン [DVD]
video maker(VC/DAS)(D) (2007-11-07)
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 むかしに観た映画も少しずつストックして行こう.「Inglourious Basterds」に出演していたDiane Krugerの名演が光る.むしろ,Beethoven役のEd Harrisの方は演技が若過ぎたように見える.

 「Amadeus」と一緒に観たBeethovenのフィクション映画.と言っても,むしろ主人公はBeethovenではなく,その写譜師Anna Holtz.歴史的に空白の部分を埋めるフィクションと,歴史のパラレルワールドを描くフィクションとでは全く意味合いが違う.この作品も「Inglorious Basterds」も後者で,コンセプトとしては苦手.

 この映画の魅力は,何と言っても音楽.そりゃそうだ,一番の山場がBeethovenのオケで彩られているんだから.脚本も悪くはないし,音楽は大迫力だから,観終わったあとの心地よさは抜群なのだけれど,題材と主観の選び方でちょっと失敗してしまっている感じ.

2009/11/21

Inglourious Basterds (2009)

 Quentin Tarantinoの最新作「Inglourious Basterds」.Tarantinoの趣味の悪さはもう分かっているのに,何やらコミカルな英雄伝みたいに宣伝している広報が何よりいただけない.上映中,大量のグロテスクな殺戮シーンに気分を悪くした観客も多かったと思う.

 また,外国人の多い街,ということもあるのだろうが,鑑賞客の外国人比率が異常に高かった.観客の3割くらいは欧米人だったんじゃないだろうか.この映画,英語のみならずドイツ語,フランス語,イタリア語がそこらじゅうに登場する上に,それらの言葉を多少なりとも知っていないと笑えないツボがある.

 自慢じゃないけれど,自分は英語とドイツ語はソコソコは使えるし,イタリア語も趣味でかじっているので,劇場にいた外国人と同じタイミングで笑えたのが痛快だった.周囲の日本人の中には,なんで今のところで笑えるのか分からなかった人も少なからずいたのではないか.そういう意味でも,一般人には不向きな映画だと思う.

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 さて,映画について.以下,多少のネタばれもあるのでご注意を.

 まず,この映画,世界大戦中の事実に“基づいて”つくられているというだけに,ストーリーの方向性を完全に見誤ってしまった感でいっぱいだ.物語後半の見どころとなる作戦の成否は作品の運命を握る重要な鍵ではあるけれども,まさかHitlerやGöring,Goebbels,Bormannといったナチスの最高権力者たちが作戦で全員惨殺されてしまうなんて思いもしない.彼らの最期は史実から教えられているからだ.
 こうした脚本に仕上げた狙いとしては,一つには自分みたいに史実からラストを推測している人に肩透かしを食らわせること,一つにはファシズム体制(あるいは国による映画への介入も含めて)に対する皮肉,一つにはHitlerのような歴史的犯罪者を虐殺することで欧米人にある種の痛快さを味わわせること,一つにはTarantinoの趣味(笑),といったところがあると思うし,その効果は絶大だったけれども,舞台が舞台だけに,歴史的リアリティまで放棄して欲しくはなかった.

 また,作戦の裏で進むナチスへの「報復」が,ナチスを鏡に映したような残虐なアイディアと台詞で遂行されるのも,もの悲しい.もっとも,それはそれで観終わった後,観客達に「戦争とは,報復とは,何て無意味で儚いなものなんだ」と強烈に思わせる狙いがあったのならばいいのだろうが,Tarantinoにそんな趣味があるなんてとても思えない.とは言え,この点は結果オーライで,多分,下手な戦争映画よりよっぽどショックを与えられていると思う.

 結局,ショッキングな戒めを与えながらも,ラストシーンで完全に虚構であることを暴露してしまい,後味が中途半端になっているのが残念.ショックだけを残して安心感を与えられるような構成になっていれば秀逸だが,気持ち悪さだけを残して裏切られた感を抱く人の方が多いのではないか.まぁ,その二流感もTarantinoの為せるワザなのかもしれない.

 あと,あくまで1976年の元映画「The Inglorious Bastards(地獄のバスターズ)」のリメイク作品という位置づけなので,ひょっとすると原作の方にルーツがあるのかもしれない.チャンスがあれば是非観たい.

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 一方,そうした脚本の中,この映画が欧米で大絶賛されている真の理由は,役者たちの演技だと思う.ブラピの表情には無理があるとしても(笑),役者たちの熱演,特にChristoph Waltz演じるランダ大佐の存在感と迫力は圧倒的で,ブラピや他の出演者たちを完全に負かしてしまっている.

 まぁ,ちょっと期待し過ぎたというのもあるけれど,正直イマイチ(上に書いたような理由が逆に功を奏してあとからジワジワ来るかも知れないけれど).Tarantinoのやり方や美学でネタにしていいテーマじゃないと思う.4ヶ国語を巧みに使ったことば遊びが一番面白かった.あとは,この映画,タイトルの付け方が一番間違っている気がする.

2009/11/18

Book of the Year 2009

 2009年も終盤.そろそろこの一年を振り返り始めよう.多分,研究が忙しくなってきて本を読む時間はこの先ほとんどないので,今年読んだ本のヒット作からまとめてみる.

 今のところこのサイトはほぼStand Aloneにしているので,自分と接点のない人は読んでいないはずなのだが,このブログを知らない人が読んだら「多趣味な文化系自由人」くらいにしか見えないんじゃないか.映画のレビューもコツコツ書きためてはいるけれど,PCで映画を見ている裏で,もう一つのコアCPUをフル回転させて,量子統計の計算を走らせたり,設計した人工知能に記憶を組み込んでいたりするなんてちょっと想像しがたいと思う.

 そんなだから,Books of the Yearと銘うってイキナリ数学の専門書が出て来たら肩透かしを食らわせてしまうかもしれないが,あくまで本業は数理屋のハシクレ.一日5回は積分を欠かさない生粋の理系人であることはご了解のほど.

【Book of the Year 2009】

  • 平田オリザ/『演劇入門』
演劇入門 (講談社現代新書)
平田 オリザ
講談社
売り上げランキング: 21865

 自分の中で「文芸復興年」とも言える今年を象徴する一冊.

 この本をタネにして,さまざまに思索と模索を繰り返した結果,演劇にとどまらないアートの意義を,ひとまず自分なりに見出せたと思う.それは,もはや,自分の専門研究テーマやその理論をも侵し,再考させる材料となっている.

 この本で主張されている演劇観に,自分はおおむね賛成だけれど,これが絶対の価値観ではない.しかし,演劇という形式を通じて,いまの社会に欠けているものや大衆が忘れかけているものをひたひたと伝えてくれる一冊.この本を読み終わったとき,この本もまた,本書で主張されている演劇論的「リアル」のたまものであることに気付かされる.

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【文芸部門】

 小説をほとんど読まなかったけれど,それに準ずるものは結構読んだと思う.
  • Richard Linklater/『Before Sunrise & Before Sunset』
Before Sunrise & Before Sunset: Two Screenplays (Vintage)
Richard Linklater
Vintage
売り上げランキング: 1594

 今年の自分の中での断トツのヒット映画,「Before Sunrise」と「Before Sunset」の脚本集.演劇的なセンスが最高にいい.脚本,演出という観点で,一つの自分の理想形とも言ってもいい.

  • Emanuel Derman/『物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進』
物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進
エマニュエル ダーマン
東洋経済新報社
売り上げランキング: 93378

 来春からクオンツとして働くにあたっていろいろ学ぶべきところが多かった一冊.物語としてはやや専門用語が多いかもしれないけれど,自分の仕事を理解してもらうにもいい一冊だと思う.

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【自然科学部門】

 本業の分野では論文とレビューに特化していたので,本はほとんど読まず.その代わり,ちょっと斜めにずれた分野とか,来年以降のカギになりそうな本は幾つか読んだ.
  • Kurt Gödel/『不完全性定理』
ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)
ゲーデル
岩波書店
売り上げランキング: 19852

 Roger Penroseを読むための前菜として読み始めたのだけれど,この一冊で自然科学に対する世界観が一変する.数学がなぜ欧州では哲学とされるのか,その意味を突き付けられる.

  • David Nualart/『The Malliavin Calculus and Related Topics』
The Malliavin Calculus and Related Topics (Probability and its Applications)
David Nualart
Springer
売り上げランキング: 75876

 かいつまんで読んだ程度.Itoの確率積分に対する微分形とも呼ぶべきMalliavin解析に関する本.主にファイナンスにおいて,事前にどういった応用性があるのかは概観しておいたので,かいつまんで眺めるだけでも十分収穫のあった本.

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【人文科学部門】

 人文科学といっても,経済学とビジネスがらみの本ばかり.このジャンルで読んだ新書は20冊以上.
  • 若林秀樹/『ヘッジファンドの真実』
ヘッジファンドの真実 (新書y)
若林 秀樹
洋泉社
売り上げランキング: 68890

 映画「ハゲタカ」を観たあとで,あらためてヘッジファンドについて考えたときにいいヒントになった.実態も知らずにあたまごなしにヘッジファンドをたたいているアレな人には是非読んで貰いたい.

  • Nassim Nicholas Taleb/『ブラックスワン』
ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
ナシーム・ニコラス・タレブ
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 1077

 今年の経済系のベストセラー.言わずもがな.警鐘を鳴らすだけじゃなくて,活路を与えるところがもう少しあっても良かったけれど,経済への(ネガティブな?)影響力を与えた本として読む価値はあるかと.

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【芸術部門】

 平田オリザのオンパレード.芸術系の本も,就職活動中に20冊くらいは読んだ.千住博さんの本もチラホラいいのがあったけれど,平田オリザの存在感には勝てない.
  • 平田オリザ/『演技と演出』
演技と演出 (講談社現代新書)
平田 オリザ
講談社
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 『演劇入門』よりももう少し方法論として洗練されている感じ.最初に手にとってのがこの本だったら,総合トップもこの本だったはず.

  • 平田オリザ/『芸術立国論』
芸術立国論 (集英社新書)
平田 オリザ
集英社
売り上げランキング: 19186

 内閣官房参与としての活躍に期待.芸術と産業に関する自分の長いあいだあたためて来た考え方や理想と,少なからずオーバーラップしていたというだけでも奇跡的な一冊.

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【コミック部門】

 オノナツメ一色.bassoはオノナツメの別名義.
  • オノナツメ/『not simple』
not simple (IKKIコミックス)
オノ ナツメ
小学館

 画風,配置,台詞,時間,全てにおいてセンス抜群.もはや他のマンガ家の追随できる世界じゃない.オノナツメ作品はコンプリートしてしまった.その中でも,一番,社会的テーマを隠喩的に組み込んだ傑作.

  • basso/『amato amaro』

 自分は断じてストレート.だけれど,社会的にはBL&GLも意味があることだなと思い始めていたり(腐女子のようなチャカシではなく.そう思う理由は学術的にちゃんと持っている.).中でも,人間のインテリジェンスや政治・経済とシンクロさせたこの一冊はスゴい.“ボディガード×経済学者”.このキャッチコピーだけでおなかいっぱい.

2009/11/17

Crash (2004)

クラッシュ [DVD]
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東宝 (2006-07-28)
売り上げランキング: 22505

 半年前に観た映画.今年観た中ではベスト10には入るかも.近年の歴代アカデミー賞作品は,この春まとめて見漁った.たまにはその頃の映画のレビューも書きためておこう.

 人種や国籍による差別というテーマやメッセージは誰もが分かる.大事なのは,それを自問自答できるかどうかだと思う.

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 自分は人種や国籍で人をみてはいないという自負がある.そういう大きなカテゴライズに意味がないと思っている(新興宗教に対してはクラスタリングに妥当性があると思うし,ある程度は警戒はするけれど).

 最近,政治的な影響もあってか,日本人によるアジア系の人達への誹謗中傷を目にすることが多い.別に中韓を愛しているとは言わないが,ここまで卑しい反応を見せる理由が自分には正直,理解できない.この国の元来の美しさを知ろうともしないで,他人から聞いた受け売りと,まわりの空気だけで,いつの間にか反発の輪に加わってしまっているだけじゃないのか.

 自分の場合,愛するものが少な過ぎることの裏返しかもしれない.ただ,怒れる人達,憎める人達は,それほどまでに何かを愛しているのか.じゃあ結局どうしたいんだ,という解決策も持たないままに狂気をふるうこの国の空気の方にこそ,最近じゃ嫌気がさしてしまっている.

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 そもそも,例え何かの因果があったとしても,それを同じ因果で返そうとする姿勢そのものがナンセンスだと思う.相手を引きずり下ろすではなく,自分が上に登ったり,相手に手を差し伸べることで補完していく方が,なにごとも円満に進んでいきそうなものだけれど.

 ただし自分は,人種や国籍,学歴でフィルタをかけない代わりに,同じ条件下での人の実力や引き出しの広さ,考え方の柔軟性などなど,内面的な部分ではちゃっかり優劣をつけている.それはそれで,悪いことだとは思っていないけれども,実際のところどうなんだろ.基本,来るもの拒まずな自分と似ている性格を選り好みしているだけのエゴだとも思うけど.

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 映画の話をしよう.この映画,「Love Actually(ラブ・アクチュアリー)」と似たような構図のドラマになってて,登場人物たちの相関がやや強過ぎる気はするけれども,それ程にこの社会には,人種差別がはびこっているということの裏返しなのだと思えばいいか.

 この映画のいいところは,最終的に人種差別の無意味さをその淡々とした脚本と音楽とで如実に悟らせるところであり,逆に悪いところは,エンディングの心地よさに酔ってその戒めが美化され,忘れ去られてしまうところだ.
 この映画の叫びは,脚本の台詞の中ではなくて,むしろ声に出してあらがえなかった人達の無言と,あとから過ちに気付かされる人達の苦悩と,そして観る者すべての経験の中にこそある.

 地球の裏側で起こっている人種差別のドキュメンタリーとして見捨ててしまうには,あまりにもったいない作品だと思う.

2009/11/16

The Whole Ten Yards (2004)

隣のヒットマンズ 全弾発射 [DVD]
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 まさか続編映画だなんて思わなくて,Matthew Perryが出演しているってだけでレンタルして観た映画.続編で全て前作の展開を拾えてしまうので,後から見た前作の方が不発だった.

 ドタバタのアクションコメディ映画.「Ocean's Eleven(オーシャンズ11)」みたいにしてやったりな後味を出そうとしているようで,それが全く出し切れていないのは惜しいけれども,却ってB級コメディっぽくて好き.Bruce Willisも適役でいい.

2009/11/15

Sudden Impact (1983)

ダーティハリー4 [DVD]
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ワーナー・ホーム・ビデオ (2009-11-18)
売り上げランキング: 19748

 Sondra Lockeは綺麗だが,推理モノの面白みはなし.行き当たりばったりで物語が終わってしまった感じ.

 もっとも,それはこの作品に限らずシリーズに共通して言えることかも知れないけれど,役者の豪華さを除けば,日本の二時間ドラマの方がいい刺激になりそうな気がする.

2009/11/14

Running on Empty (1988)

旅立ちの時 [DVD]
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ワーナー・ホーム・ビデオ (2002-08-09)
売り上げランキング: 40485

 River Phoenixに鳥肌が立った.

 英題がいい.演技がいい.モチーフがいい.そして音楽の使い方が,反則的なまでにいい.最近観た映画の中では一番良かったかも.

 この映画を単なる感動のストーリーと観てしまってもいいと思うけれど,親と子どもの愛のバランスについて問題提起をしているようなところが感じられて個人的に好きだ.

 映画「Before Sunrise」の中で,“何でも子どものいう通りにしてしまう親もまた悪い”といった台詞がある.自分の経験からすれば,そういう親は愛情を勘違いしてしまっているのが半分,怒ったり正面から向き合ったりする面倒くささから逃げているのが半分,といった感じがするのだが,逆に,何でも親の言うとおりにしてしまう子どもはどうだろうか.

 この映画でRiver Phoenix演じるDannyが不幸な境遇に従順だったのは,両親を愛していたからだ.ラストシーンで両親がDannyを旅立たせるシーンで,Dannyもまた別れを哀しんでいることを,自分が脚本家ならもう一歩踏み込んで魅せたかった.
 しかし,そういう感情の葛藤を,River Phoenixの演技がそれだけで補完出来てしまっている.それくらいに,River Phoenixが素晴らしい.これはもしかすると,Riverの演技力に加えて,River自身の複雑な家庭環境が少なからず彼を感情移入させてたんじゃないかな,なんて思ったりもした.

 あとは,ここ何年か感じている国家機構に対する違和感を再確認したり.

2009/11/13

Murder on the Orient Express (1974)

オリエント急行殺人事件 スペシャル・コレクターズ・エディショ [DVD]
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 Agatha Christieの小説の方を読んだことがあったので結末は知っていたが,コレを映像化するのは意外と難しかったんじゃないだろうか.

 原作は,自分の読んだ数少ない古典推理小説の中ではいまひとつインパクトに欠けていた作品だったので,旅行記と喜劇的なエンターテイメント性を兼ね備えた映画の方がやや好み.昔,何かの評論で,マラソンや駅伝が楽しい理由の一つは,めまぐるしく背景が流れて,自分も一緒に旅しているかのような錯覚に陥るところにある,といった類の話を読んだことがあるけれど,この作品なんかはまさにそれに近い面白さがあるんじゃないかなと思う.

2009/11/12

CUBE (1997)

CUBE ファイナル・エディション [DVD]
ポニーキャニオン (2003-12-03)
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 システムの概略はぼんやりわかった……が…….

 偶数や5の倍数の素数判定に何秒も費やすような奴に数学まかせんなよ……しまいにゃ,3ケタの因数分解にスパコン使い出すとか言ってるし……そうだね,3つも3ケタの数が出て来たらCPU3つで並列計算させないと時間かかっちゃうもんね.

 そういう数理的なところ以外でも,全体的に,解き明かしていく感が全くない.それどころか,脈絡もなく理論や仮説が登場しちゃうし,とても気持ちが悪い.用語もところどころ誤用があるので,まともに高校レベルの数学と物理やってる人ならミスリーディングまでされてしまう.

 基本,ポジティブなことを書きたいのだけれど,脚本も舞台設定もイマイチ面白さが感じられなかった.極限状態での人間の心理を描写したにしては甘っちょろく,ホラーやサスペンスというにも実在主義的で,インテリジェンスをチラつかせたにしては詰めが甘すぎ,結局,全部が中途半端な感じ.

 数学的なモチーフを選んだ映画で気にいった作品ってあんまり記憶にない.スパイス程度に効いている映画なら,「Good Will Hunting」はじめ,いい映画たくさんあるんだけどなぁ…….

2009/11/11

Kate & Leopold (2001)

ニューヨークの恋人 [DVD]
ハピネット (2007-02-09)
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 安心のラブストーリー.ツッコミどころは多いけれど,それはそれでそういうものなんだと思えば後味がいい.ただ,やっぱり時間やら空間やらがどうこうと言い出されると,ソッチ系の血が騒いでしまう.

 Kateより,弟のCharlieをめぐるエピソードの方が可愛げがあって好きだったかも.

 冒頭の過去のシーンで,Meg Ryanをあからさまに映してしまっているのがいただけないかなぁ…….こういう演出は,二度目に注意して見て初めてわかる,くらいのさりげなさが大事だと個人的には思っているので.

2009/11/10

American Beauty (1999)

アメリカン・ビューティー [DVD]
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (2009-04-10)
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 就職活動の一環として(笑),今年の春くらいにアカデミー賞作品をまとめて観た.そのときに良くも悪くも気になった映画を,先月もう一度見直してみたのだけれど,その一つがコレ.

 半年前に観たときは気持ち悪さしか感じなかったけれども,「Friends」のおかげでアメリカンカルチャーに毒されたのか,改めて見直してみると結構面白かった.アメリカの抱える病的な要素を,躊躇なくネタに選んで,なお小綺麗に完結させてしまうセンス.この映画を絶賛出来るアメリカ人の感覚が逆に好きだなぁ…….Chris Cooperの演技と迫力がとてもよかった.

 ただ,バラの演出がひどい.もともと「American beauty」というのはバラの品種名だそうだけれど,幾らなんでもあの演出はない.作中で,バラのシーンになるたびに,この映画のいいギリギリ感が台無しにされてしまった.
 また,脚本も,最初のナレーションがなかった方が,ラストシーンがよりショッキングに映ったんじゃないかなぁなんて思ったり.

2009/11/09

Basic Instinct (1992)

氷の微笑 [DVD]
氷の微笑 [DVD]
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ジェネオン エンタテインメント (2004-11-25)
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 やっぱSharon Stoneイマイチ好きになれない…….セックスシンボル過ぎるんだよなあ,きっと.

 かなり前から観たかったのに,なぜか観ていなかった映画.この映画の真相については,諸説あるようだけれど,まぁそんなに深く伏線を考えなくていいのだろう.監督自ら,真犯人を認めているようだし.

 ただし,この映画のいいところは,その真相が“唯一”の答えとは証明出来ないところだと思う.

 何やら,webでは誰もかれも自分の支持する一つの結論にまとめたいらしく,なかばケンカ腰で議論がなされているけれども,そんなのはナンセンスだと思う.こういう不毛な議論,文学屋さんとか経済学屋さんとかがいかにも好みそう.

 自分としては,一般的に支持されている結論でもいいし,別の結論でもいいし,(個人的にはシーンや脚本の必然性などから一票入れたい)連鎖的な殺人という裏の解釈でもいいと思う.結局,どちらの結論も「ダメ」と言えないところに,NP的なインテリジェンスがあるのだ.

2009/11/08

Friends season 10

フレンズX〈ザ・ファイナル〉 セット1 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2008-05-08)
売り上げランキング: 4701

 Friendsのラストシーズン.と言いつつ,最初に観たのがこのラストシーズンだというのはここだけの話.実際のところは,近場のレンタルショップで唯一DVDが揃っていたラストシーズンを前半だけ観て,ほかのシーズンを半分かじってから後半を補完したかたちだ.

 まわりの評判は賛否両論だったけれども,個人的には好きなシーズン.シーズンが進めば進むほどJoeyのバカさ加減がノイジーになってきた感があって,そういう意味では,仕事や社会的な話題が多かったシーズンでもあり,全てが綺麗にまとまったシーズンでもあり,幼稚さが無くて良かった.

 最後は,Rachelのハッピーエンドでお腹いっぱい.ChandlerとRachelに幸あれ!

2009/11/05

第36回創画展

  • 第36回創画展
  • 京都市美術館
 京都市美術館で開催されていた日本画の創画会の展覧会.通りがかりに目に付いたので寄ってみた.気まぐれに寄れる場所に美術館がある,というのは自分にとって,日々の生活を充実させる大事なファクターだ.生活圏に,美術館,図書館,喫茶店は欠かせない.

 一般の美術展というのも結構いい.昔は,画家の先生が知人にいて,上野の美術展なんかに招待されていっていた事もあったけれども,下手な企画展より統一感やテーマ性が無い分,たいてい,一枚か二枚は自分の気に入った絵と出逢えるのだ.

 普段も,東京都美術館とか京都市美術館とか,六本木の新美術館とか,大きな企画展の傍らで開催されている一般の美術展もついでにのぞいていくことが少なくない.

 今回の展覧会は,いわゆる伝統的な日本画ではなくて,モダンアートの色が強烈なものだった(創画会そのものが,自由度の高い作風の画壇であるらしい).なので,正直,賞をもらっているような作品と,それ以外の作品との評価の差異が自分にはイマイチ分からない.
 結局,賞を貰っている作品の中で強烈に記憶に残りそうなものは無くて,賞は付いていなかったが浅野秀和さんという方の「花めく」という絵が,一番良かった.

2009/11/04

ボルゲーゼ美術館展

 Raffaello来日,しかも歩いて5分とあれば行かないわけにはいかない.本当は初日に行く予定だったのだが,入用があったので文化の日に朝一番で行って来た.

 今回の美術展で目玉になっているのは,Raffaelloの「一角獣を抱く貴婦人」.イタリア未踏とは言え,今までRaffaelloの絵は色々なところで見て来ているので,その中で特別インパクトのある絵だとは思わなかったけれども,不自然に描きかえられたものを修復によって取り出すことに成功した,というプロセスは面白い.上塗りされた絵と元絵のどちらに価値を置くか,というのは難しい判断だと思うが,この絵に関しては素人目にも下絵の方が優れている事は明らかだった.

 Raffaelloの絵の中ではわりときめの細かいタッチで描かれたものだと思うけれども,表情や服装にトコトン凝っているのとは対照的に,背景や部屋の描き方がものすごく雑で,実際の視覚に忠実なのが良かった.

 全くの余談ではあるけれども,この手の女性の肖像画で今まで見たものの中では,高校2年の冬に横浜で観たda Vinciの「白貂を抱く貴婦人」が断トツだ(この夏に自転車で京都に来ていて,すれすれで京都で観られなかったので横浜でリトライした形).というより,Vermeerの「真珠の首飾りの少女」「リュートを調弦する女」と並んで,今まで見た絵画の中で三強といっていい.ルネサンス系の画家の肖像画は,いつもこのda Vinciと比較してしまうのだけれど,いまだにこのda Vinciのインパクトを超える絵には出逢えていない.

 ところで,今回の美術展で一番印象的だったのはJusepe de Riberaの「物乞い」.
 この画家の名前も知らなかったので,メモして帰って来たのだけれど,この絵の黒赤の色彩と,濃厚な絵具加減は,もう何というか,「熱」を感じずにはいられない.光熱を発する直前まで熱せられた鉄のようで,近付くだけで空気が重くなるような迫力.タッチや構図ではなくて,色遣いでグッと来た作品は久し振りかも.
 この絵の為だけに,図録を買おうか相当迷ったけれども,「美術館展」であるならば,いずれボルゲーゼ美術館現地に行って,現地の英語版ないしはイタリア語版を買った方がよっぽどいい.というわけで,今回はパス.Jusepe de Ribera(José de Riberaとも)という名前は覚えておこう.

 そんな美術展だったが,例によって,「美術館展」というジャンルの美術展はやっぱり現地の美術館に敵わないと思う.それこそ,名画のワンシーンだけ(それも名シーンかどうかは分からない)を切り取って見ているのと同じで,Borgheseがどのような思想を持ってこれらのコレクションを集めたのかまでは見えてこない.いずれはボルゲーゼ現地へ.

2009/11/03

The Enforcer (1976)

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 ダーティハリーのシリーズの中では一番好きかも(コレを書いている時点で全部観た).事件やキャラクターにも,いろいろな人間模様や利害関係が見え隠れして面白い.

 それでも,やっぱりそういう設定を活かしきれていないかな.様々な伏線を張っている(ように見える)割には,それらを全然回収出来ていないというか.原発の話なんか出て来た日には,「24」なら本当に核施設襲撃されちゃうわけで.

 そもそも伏線が見事に回収されたストーリーの方が痛快で面白い,と思う自分の感覚がまだまだ若いのかも.編集も舞台切り替えも自由な映画に,現代演劇のようなリアリティは求めないけれども,もっと映画は未完成で粗削りでもいいのかも知れない.

2009/11/02

2 Days in Paris (2007)

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 監督・脚本・音楽はJulie Delpy.才色兼備そのもの.自分の中で今年のPerson Of the Yearのベスト5には入る.
 「Friends」で変人役をやっていたAdam Goldbergの役が,やっぱり癖のある変人.もうこの人は変人にしか見えない(「Saving Private Ryan」とか「A Beautiful Mind」とかの役の印象は薄い).

 超絶にセンスの良さは感じるけれども,オシャレさと自由さと下品さの歯止めがきかなすぎて,半ばパニック映画みたいな雰囲気を醸し出してしまっている.パリに上品な憧れを抱いている人が見たら,ドン引きしてしまうんじゃないだろうか.一歩間違えたら,被害妄想から始まるサスペンス映画みたいになってしまうんじゃないかという危うささえある.

 それでも,撮り方や小ネタの綺麗さは否めない.
 普通のアメリカンでは服のセンスも芸術観も絶対にこうはならない.フレンチのJulie Delpyがやってるからこそのハイセンス.

 あとは,複雑ネットワークの話が登場するのは,個人的に見逃せないかな.もう少し数理的なスパイスを添えてsmall-worldを演出出来たらなおベター.

 ちなみにこの映画も,観たのは3週間も前のことだが,観た直後に「Before Sunset」を観直してしまった.

2009/11/01

アンコールワット展―アジアの大地に咲いた神々の宇宙

  • アンコールワット展―アジアの大地に咲いた神々の宇宙
  • 美術館「えき」KYOTO
 夏に行き損ねたアンコールワットの出土品達に会いに,京都駅まで行って来た.

 夏にタイの東部で遺跡巡りをしていたときにも感じたけれども,クメールの遺跡群はとても魅力的だ.しかし,タイでは残念ながら自分がタイ語を読めなかったが為に,これらクメール美術の生まれた背景を十分に知ることが出来なかった.今回,美術展に出掛けたのは,その手っ取り早い埋め合わせという意味合いもあった.

 クメール美術の魅力は,背景にある神話の面白さにあるように思う.シヴァ神とその子供たちにまつわる様々なエピソードを,仏像たちの表情が如実に裏付けているように見えた.

 美術もまた,言葉だ,と思った.
 文字で語られる神話や歴史は,具体的なイメージに欠けてしまいがちな上に,脚色もしやすい.クメールの歴史においては,そうした危うさを仏像達が存分に穴埋めしている.

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 余談ではあるけれども,現在わかっている脳の構造では,視覚として得た映像と,想像によって得た映像とでは根本的に記憶のシステムが異なっているようだ.ひょっとすると想像した映像などというものは,脳の虚像に過ぎないのかも知れないという見方も出来る.

 美術は,そうした想像や印象を,視覚としてアウトプットもインプットも出来る,まさに画期的なツールでもあるかも知れない.

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