2010/07/25

青山七恵『ひとり日和』

ひとり日和 (河出文庫)
青山 七恵
河出書房新社
売り上げランキング: 49072

 芥川賞受賞者の名前なんて綿矢りさあたりから全然記憶に残っていなかったので(一応ニュースとして読んではいるのに),本の帯に「芥川賞」なんて文句が大々的に掲げられていなかったら素通りしていたかも知れない一冊.文庫本になったのは最近のようだけれど,旬の頃ではなく東京に帰ってきた今になって読んだのは正解だったと思う.

 内容云々はさておき,読み始めて「おや?」と思ったのは主人公の故郷.文章から察するに,熊谷あたりじゃないかと思ってふと筆者の青山七恵さんをググってみたら……く・ま・お・ん・な!熊女の2つ上の先輩ですか!鈴懸祭やら何やらで本人を見てるかも知れない,と思ったらちょっと愛着がわいた.少なくとも同級生を探れば,友人の知り合いくらいにはなるに違いない.

 内容はというと,とにかく文章が抜群に上手い.言葉の選び方,表現もそうだし,文の長さや話の起伏,安定感と,本当に上手い.無気力なフリーターの女性が,ひょんなことから親戚の老女と同居を始め,少しずつ変わっていくというか,影響されていく過程の心理描写や空気が,淡々と,しかし生々しく伝わって来る.それだけで面白い物語だった.
 ストーリーそのものは,本当に気だるい.老女との同居で,無気力でひねくれた女性の本性が一転するかと思いきや,大筋ではあまり成長もしていなくて,相変わらず気だるい空気を残し続ける.その中でも,手癖の悪さが落ち着いていたり,社会の価値観を受け入れてしまっていたりと,良くも悪くも随所に見られるごくごく小さな変化が光るのもやっぱり文章力のお陰かなと思う.

 自分の毛色に合う小説ではなかったけれど,読み終わった後に読んでよかったという達成感みたいなものもあったし,日常生活の中の何気ない出来事について考えるときにこの小説をふと思い返してしまいそうな存在感もあった.

2010/07/24

黒野伸一『万寿子さんの庭』

万寿子さんの庭〔文庫〕 (小学館文庫)
黒野 伸一
小学館
売り上げランキング: 47120

 ある新社会人の女性が,近所に住むおばあさんと,絆を深めていくストーリー.といっても,よくありそうなお決まりの展開というわけでもなく,そこそこいい意味で期待は裏切られる.タイトルから思い描いていたイメージがストーリー序盤で突然崩れ,そこからやっぱり当初のイメージに少しずつ軌道修正していくような感じ.読み終わったあとは,どことなく心温まる.余談として,今一番欲しいものはキッチンだけれど(事情で今の住居にはキッチンがない),次はガーデニングの出来る庭が欲しくなった.

 ただ,文がところどころ読みにくい(自分が言えた義理ではないけれど).特に,会話文の書法が滅茶苦茶で,カッコの中でも平気で改行が続くし,時々誰の台詞なのかこんがらがるような書き方も多かった.文章そのものが上手いわけではないように思うし,話の展開にもいわゆる文学的な高尚さはあまり無いので,頭には残るものが少ないかも知れない.

2010/07/23

シャガール―ロシア・アヴァンギャルドとの出会い

 ……藝大いい…….大学にブランドを求めたくは無いけれど,やっぱり格が違うなと思うのは東京藝大.附属美術館に入るのは今回で二回目だが,やっぱりいい.日本で唯一,海外の大学っぽい空気が張り詰めている気がする.

 そんな藝大の美術館で開催された「シャガール展」.今までChagallの作品を生で観る機会というのは意外と少なかったことに気付いて行って来た.Chagallのイメージはキュビズムに似たところがあったけれども,実際に観てみるとやっぱりそうで,人間も動物も彼の特徴的な描き方があった.その画風が,年代とともに着実に変わっていく様子は面白かったし,美術展としての魅せ方もとてもいい.
 ただ個人的にはChagallの幾何的な作風は予想通り好きとも嫌いともならなくて,惹かれたのはむしろ色使いの方だった.かなり原色に近い色を多用しつつも,色を連続的にも離散的にも使う感じ.彼の絵には,連続と離散が共存しているような柔らかさと固さがあって,それはどちらかというと形ではなくて色によるところが大きいように感じられた.
 あとは,彼は宗教画は描かないものの,故郷ロシアへの愛着や,ユダヤ人としての迫害の経験がところどころに垣間見られるところも,いい意味で面白かった.

 最後に,余談ではあるけれども,Chagallの絵に登場する動物たちを見ていて,映画「魔女の宅急便」に登場するウルスラの絵は,間違いなくChagallにインスピレーションを受けたものだと確信した.そんなことを思ったら久々に魔女宅を観たくなった.

2010/07/20

ナポリ・宮廷と美―カポディモンテ美術館展

 イタリアはナポリのカポディモンテ美術館のコレクションを集めた美術展.美術館の名前もこの企画展で初めて聞いたし,特に見たい作品があったわけでもないし,特によく知っていた画家の絵があったわけでもないのだけれど,たまたま通りがかったついでに寄って来た.何も知らない美術展にこそ,思わぬ発見はつきものだ.

 しかし結局,発掘,といった感じの自分好みの絵はあまり無かった.美術は理屈ではないと思うものの,考えられる最大の理由は,宗教的・歴史的背景だと思う.
 17世紀までのイタリアの地方絵画が大多数なので,トレント公会議の影響でモチーフや表現が大きく制限されている模様.お陰で,いまひとつダイナミクスに欠けたり,オリジナリティに欠けたり,といった印象.唯一印象に残ったのは,El Grecoの「燃え木でロウソクを灯す少年」.光の使い方と,皮膚のタッチがとても荒々しくて良かった.光と闇,というコントラストは,描き方によって本当に印象が変わるものだと思う.

 それ以外では,あまりインスピレーション(というのはおこがましいが)は感じず仕舞い.最近観た美術展の中では,自分としては不発の部類.休日にもかかわらずあまり人も多くなかったので(それでも関西の企画展よりは断然にぎわっている),ゆっくり楽しむにはいいかも知れない.

2010/07/18

Stand by Me (1986)

スタンド・バイ・ミー コレクターズ・エディション [DVD]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2007-05-30)
売り上げランキング: 1114

 Stephen King原作『Different Seasons』の短編,『The Body』を映画化した名作中の名作.昨年まで,自分の好きな映画ナンバーワンに輝き続けていた映画だ.余談になるけれども,この『Different Seasons』の中にはあの名作「The Shawshank Redemption(ショーシャンクの空に)」も収録されていて,まさにシネマ業界では必読の原作と言っていい.自分も,この短編集だけは原作も邦訳も両方読んだ.

 舞台は50年代のオレゴン.家庭を背景にそれぞれ心に影を抱えていている4人の少年達(Vernはそうでもないか)の,短くて永い友情と,著しい成長と,卓抜した才能を描いた物語.物語を担う少年達の表情,しぐさ,その全てが自然でいて,情熱的で,率直で美しい.中でも別格に輝くのは,Wil WheatonとRiver Phoenixの二人だ.この二人の圧倒的な存在感と演技力が随所で光る作品でもある.時代を感じる風景と音楽に合わせ,少年達が描き,奏でる物語の何と美しいことか!

 そんな中でも,自分が強く感じるこの映画の魅力は,二つだ.

 一つは,少年達の見方や感じ方.
 4人の境遇はそれぞれ違っていて,それぞれが環境や家庭に埋没してしまいそうになるけれど,それぞれ違った個性や才能を持っている.大人達はそれらを見抜けなかったり見過ごしてしまったりする中で,少年達は深くを理解し,多くを考える.背の高さが違うように,声の質が違うように,大人と子どもでは見える景色も感じるものも違う.このことは我々が大人になって初めて知ることであり,やがて忘れていくことでもある.
 この映画を初めて観たのは幼稚園児のときで,こんなことを思ったのは小学生くらいのときだと思う.昔からこんなことを感じていたから,親や大人の言うことは(従う従わないは別としても)もちろんよく聞いていたけれど,友達の言葉にも昔から耳を傾けていたと思う.今思い返しても,友達の言葉は的確で,本質的だったと思う場面は多々あるし,今は連絡すら取っていない友人達の言葉を思い返しても,熱いものが込み上げてくる気がする.

 もう一つは,友情のかたち.
 この物語でリアルなのは,友情は続いても4人の交友関係が恒久的に続いているわけではないところ.元々,4人全員に特別な共通項や結びつきがあったわけでもなくて,GordieとChris以外は割とただ集まっていただけのようにも見える.にも関わらず,小説を書くGordieがこの友情を人生最高のものとして描くのはなぜか.一つには,友情がそれだけ偶発的なものであるからだと思う.一期一会,という言葉は好きではないが,少なくともどの出逢いも確実に偶然の上にあって,そこに必然性なんて何一つ存在しないのだ.そして一つには,彼らが共有した時間が,少年時代だったからだ.最も多感で,純粋なこの少年時代を共有したということがこの友情が終わらない一番の理由のように見える.

 前者は少年時代に,後者は大人になって気付きたいことだ,と個人的に思う.

 自分の少年時代はどうだったか.自分にとっての少年時代は,小中高の合わせて10年分くらいあったようなものなので,思い出される友人たちは何百といるが,今ここで思い出す誰しもに,少なくとも自分の側からは変わらない友情を抱き続けている.彼らと同じ時代に生まれ,同じ時間を共有出来たことを,自分もまた誇りに思う.

2010/07/17

A Night in the Life of Jimmy Reardon (1988)

ジミー ~さよならのキスもしてくれない~ [DVD]
カルチュア・パブリッシャーズ (1998-05-25)
売り上げランキング: 8919

 River Phoenix主演「A Night in the Life of Jimmy Reardon(ジミー ~さよならのキスもしてくれない~)」.タイトル詐欺,パッケージ詐欺もいいところで,中身はチャラチャラした悪ガキのストーリー.特別面白い映画でもなかったし,River Phoenixの演技が格別に光る作品というわけでもない.

 家庭が上手くいっていないのはもうお決まりの設定.映画は父親と電車に乗るラストシーンから始まって,同じラストシーンに収束していくけれども,物語を通して父親の存在が主軸にないので,ラストシーンでの盛り上がりもいまひとつ.

 この映画で収穫だったのは,若き日のMatthew Perryが出演していたこと.このときとほとんど変わらない「Friends」のMatthewが逆にスゴい.

2010/07/16

Little Nikita (1988)

リトル★ニキータ [DVD]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2008-06-25)
売り上げランキング: 8220

 River Phoenix出演のスパイ映画.
 つまらない映画ではないけれど,アクション映画にもなりきれず,サスペンスにもなりきれず,中途半端になってしまった感が否めない.尤も,River出演作の中で自分の好きな作品は正直二つしかないので,他の作品と比べてストーリー的に見劣りするわけでもない.

 River Phoenixの生い立ちもあるのかないのか,彼の演じるキャラクターは,総じて恵まれない家庭環境に置かれた青年が多い.両親がスパイ,という設定は,家庭崩壊のような痛ましさとは違うし,当時は冷戦のご時勢と相まって新しかったかも知れないが,それなら「Running on Empty(旅立ちの時)」の方が圧倒的にいい.こちらの先に見てしまっていたので,この映画で新鮮さは全く感じられず,2時間ドラマと同じくらいのインパクトしか残らなかった.

2010/07/15

My Own Private Idaho (1991)

マイ・プライベート・アイダホ [DVD]
角川映画 (2009-11-20)
売り上げランキング: 2373

 Jennifer Anistonはキャラクターが愛らしいだけで,役者としては特に思い入れがあるわけではない.じゃあ好きな俳優は?と聞かれて,まぁ最初に名前が挙がるのはRiver PhoenixとTim Robbins.今度は,River Phoenix関連で少し書いてみる.

 「My Own Private Idaho(マイ・プライベート・アイダホ)」は,River PhoenixとKeanu Reevesが主演の映画.家族に捨てられた少年と,束縛された少年,境遇は違えどともに繊細な問題を抱える男娼の物語.かなわぬ同性への純愛だとか,その先にある絶望だとか,苦悩だとか,或いは家族への恐怖や美化された母親への憧れ,そういったものが凝縮されている.そのいずれも,自分の経験と照らし合わせて共感することは出来ないけれど,切なさが痛いくらいに伝わってくるのはRiver Phoenixの役どころによるところが大きいと思う.

 River Phoenixの代表作ということで,前から見たいみたいと思っていたのだが,いまだかつてどこのレンタルショップでもこの作品を見たことが無く,先日セールをしていたときにAmazonで買ってしまった.正直,DVDを買うどころか,個人的にはあまり好きになれない映画の部類だったけれども,River Phoenixの主演作というだけで,一見の価値はあると思う.若くして亡くなったのが残念でならない.

2010/07/12

瀬尾まいこ『図書館の神様』

図書館の神様 (ちくま文庫)
瀬尾 まいこ
筑摩書房
売り上げランキング: 60925

 前の二冊がクリティカルヒットだったこともあってそれほどインパクトは感じなかったし,トピック的にも,自殺だとか,不倫だとか,あまり好きじゃないネタがところどころにあった.それでも最後までノンストップで読める爽快感はあった.

 一つには,文学的なエッセンス.怠惰でリアルな教師が主人公なだけに,やれ夏目漱石だのやれ川端康成だのと,昔読んだような文豪たちの影がチラつくたびに物語が引き締まる.一つには,風景.海を背景に思い浮かべさせるような全体感があって,主人公のクールで渇いた存在を引き立てもするし,潤わせもする.

 マイナスから始まったストーリーが涼しげに淡々と進み,最後の10ページくらいでグッと胸に来る.ミスをしないで勝ち続ける人生より,挫折続きの人生の方が自分は好きかも知れない.主人公の犯したミスは,ひとよりずっと重いものだったかも知れないけれど,そこから新たな一歩を踏み出す勇気と不安が,この物語を輝かせる.

 最後に……文学って素敵だなぁ…….答えなんて要らない,感じるままに楽しめばいいじゃないか.何がクリティカル・リーディングだ,何がロジカル・リーディングだ.文芸も美術も,感じるままに感じればいい.科学より,もう何次元か自由度が高くていい.

2010/07/11

吉田篤弘『それからはスープのことばかり考えて暮らした』

それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)
吉田 篤弘
中央公論新社
売り上げランキング: 14841

 今までの人生で食べた中で一番美味しかったスープは?と聞かれたら即答出来る.
 1998年の冬にカナダのトロントのホテルで食べた,パプリカのスープだ.適度なスパイスで素材の味を存分に活かし,食感ものどごしも抜群.パプリカそのものも相当いいものを使っていたはずだし,たぶん果物や他の野菜も細切れに入っていたはずだ.それまでピーマンは嫌いな食べ物の一つだったけれども,このスープとの出逢いが,ピーマン克服(どころか好きになる)の第一歩だった.
 母が料理関係の仕事をしている人なので,家族で食べた料理なら大抵は母が再現してしまえるのだが,残念ながらこのトロントには自分ひとりしかいなかったので,日本に帰ってきて以来,このスープの味に近いものにすら出逢えていない.学生時代に自分で試行錯誤して試してはみたものの,まるで求める味にはならなかった.

 それは余計な話.

 『それからはスープのことばかり考えて暮らした』.前回の『スコーレNo.4』に続き,表紙と帯だけ見て買ってしまった一冊.これが更なるヒット.気紛れで手にとったはずなのに,2回も10点満点(主観)が続くと流石にほかで不幸を疑いたくなる.

 作家の文体の漂わせる雰囲気なら『スコーレNo.4』の方が好き(勿論内容も大好き)だけれど,作品の世界観や価値観は,男性視点だからか,こちらの作品のほうが現実の自分に近いと思う.最近少し思うのは,映画にせよ小説にせよ,素敵な老人が登場する物語というのがとても心地いい.この物語では,ストーリーの中核を担う初老の女性がとても素敵で,思わずため息が漏れる.
 物語は,ただの失業中の青年が,時系列で5つ6つのモチーフから日常をつづっていくだけなのだが,その各モチーフが,実はつながっていたりつながっていなかったり,概念的に同じであったり同じでなかったり,このモチーフたちの間で切れるか切れないかの瀬戸際のような複雑ネットワークが辛うじて張られている,そんな感じ.

 人間関係の葛藤や裏切りも,(一般的な)恋愛の話題も,小説につきものなそういう人気トピックは遠いところにあって,スローライフな昭和臭にまぎれて美味しいスープの香りがぷんぷん漂ってくるよう.

 気紛れで選んだ小説が2冊とも,(ジャンルは違うとはいえ)司馬遼太郎の上を行くような自分好みの作品だったのに味をしめて,完全に小説志向になってしまった.朝の通勤時間,帰宅後のアフターライフ,やらなきゃいけないことから目を背けて,しっかり別世界に身を投じる生活が始まってしまった.
 歴史的にも文学的にも,それほど評価のある文芸は読まないかも知れないけれど,それでいい.読み終わったとき,自分の感性の透明度と鋭さがまた一つあがっていればそれでいい.

2010/07/09

He's Just Not That into You (2009)

そんな彼なら捨てちゃえば? [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2010-07-14)
売り上げランキング: 769

 Jennifer Aniston出演作,「He's Just Not That into You(そんな彼なら捨てちゃえば?)」.とりあえず自分の知り合いの女子たちからはそこそこ好評だった超絶なスイーツ映画.まず何しろ,邦題ね.直訳したら「彼はあなたに興味ないだけよ♪」なのに,“いいえ!私が振ってやったの!”という実に独りよがりな発想.そこに食いつく女子たち.世の中の男性たちからは共感を得られないであろう映画だと思う.

 ただし.

 かく言う自分はちゃっかり,二つの意味でスイーツ男子なので,この辺の女の子トークが結構楽しかったりする.「Love Actually(ラブ・アクチュアリー)」の二番煎じと言えば否定はしないし,アートな映画では決してないけれど,メロドラマとしてはそこそこ楽しめちゃう.“いいえ!私が振ってやったの!”と言うのなら,“そうそう,アイツが悪いのよ!”と大きく首を縦に振りたくなってしまう.
 一つ一つのエピソードはリンクが弱いと思うし,内容も浅くて軽い.心に残る映画ではないし,何度も観たい映画ではないけれど,どこかもどかしさを抱えているときはいい発散になりそうな気もする.

 最後の一言.
 この映画,実は昨年映画館で観た(まだ「Friends」を観ていない時期だったのでJennifer Anistonの復習用に昨冬DVDで観直したのだけれど).映画館のチケット売り場で男一人で「“そんな彼なら捨てちゃえば?”一枚」と言うのは,昨年一年間でベスト3に入るくらい恥ずかしかった出来事.

2010/07/07

Marley & Me (2008)

マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと [DVD]
20世紀フォックス・ジャパン (2010-06-25)
売り上げランキング: 2438

 Jennifer Aniston主演,「Marley & Me(マーリー―世界一おバカな犬が教えてくれたこと)」.とりあえず……この邦題を何とかしてくれ…….かと言って,原題でかけている(に違いない)「Marry Me(私と結婚して!)」が妥当かといえば,これも物語前半で消化してしまうのであんまりいいタイトルだとは思えない.

 内容はというと,それほどバカでもないキュートなラブラドール・レトリバーの生涯を描いた作品.ある恋人同士がMarleyを飼い始め,やがて結婚し,家族を築いていく中で,Marleyもまた家族の一員として愛を深めていくストーリー.とはいえ,ストーリーは実に単調.犬を飼ったことのある人なら,大なり小なり誰だって経験しているようなことなんじゃないだろうか.それとも,日本とアメリカでペット感がそんなに違うだろうか.それとも,あまりに現実的過ぎて,ラストで共感してみんな泣いてしまうのだろうか.
 自分はワンワン大好き派で,綺麗な女性と可愛い犬が並んでいたら有無を言わさずワンワンに駆け寄ってしまうような人間ではあるものの,家で犬を飼ったことはない.その上で泣き上戸の自分ですら,教科書通りすぎて泣けなかった.

 と,散々叩いているように書いてしまったけれども,別につまらない作品ではない.ただただ,いい話.泣けるか泣けないかは別としても,観たあとで温かくなる映画.愛もあるし,笑いもあるし,マイナスポイントはあまり無い.その代わり,プラスポイントもあまり無い.
 唯一,ラブラドールのMarleyが可愛すぎて観ている最中,こちらもデレデレしっぱなしだったというのはここだけの話.

2010/07/06

The Good Girl (2002)

グッド・ガール [DVD]
グッド・ガール [DVD]
posted with amazlet at 10.07.09
パラマウント ジャパン (2005-10-21)
売り上げランキング: 33290

 Jennifer Aniston主演「The Good Girl(グッド・ガール)」.タイトルとAnistonのイメージからは想像できないくらい暗い話.田舎町でマンネリと暮らす若い主婦が,不倫をきっかけにその人生をどんどん踏み外していくストーリー.驚くくらいにJennifer Anistonの表情が無く,Friendsの豊富な表情に馴染んだあとで観た自分には衝撃的だった.イマイチ名演っぽく見えない(と自分は思う)彼女の演技が光る数少ない作品.不倫だの浮気だののトピックが大嫌いな自分でも,不快感を感じないまま観られてしまった.とはいえ,作品全体としてはモノトーン.

 「good」と銘打って,夫にも不倫相手にも同僚にもいい人であろうとして,結局空回りしてしまうのは,そもそもこの「good」の姿からして間違っているから.その辺が皮肉っぽい.気紛れで欲望に耽るのも,他人に嘘をつくのも,自分を偽るのも,やっぱり何だかんだでマイナスに跳ね返って来るわけで,主人公と不倫相手の幼さや軽さがコミカルに痛い.
 同じ不倫の話でも,「The Bridges of Madison County(マディソン郡の橋)」がいいストーリーで終わったのは,お互い気紛れでもなく,子供でもなかったからなんだろうな.

2010/07/04

Love Happens (2009)

 映画は観ていないわけではないのに,最近レビューがめっきり減っているので,今度は好きな俳優関連で少し書きためてみようか.Jennifer Anistonは,昨年「Friends」でドツボにはまってファンになった女優さん.ただ,正直,演技派かといわれればそういうわけでもなくて,Jennifer Anistonの出演作でブラボーな作品はいまのところ無い.ひとえに明るいキャラクターが魅力.「Friends」が終わってから映画出演がグッと増えているので,そろそろ毛色の違ったキャラクターもみたいかも.

 「Love Happens」は日本未公開映画.AmazonでもまだDVDが売られていないこの作品を見ることができたのは,先日欧州に旅したときの飛行機の中.ストーリーは,数年前に交通事故で妻を亡くして,その哀しみから立ち直れないでいる男性と,過去の失敗から恋愛に消極的である女性とが,少しずつ歩み寄っていくというもの.

 ……今年のワースト5候補の作品の一つ.ラブストーリー万歳な自分でも,あまりに単調なストーリーと,自分のセンスに合わない演出,宗教チックな啓発セミナーなどなど,観ていて首を傾げるところが多かった.ラストシーンだって,正直感動も何も無い.予想を裏切らないだけ.加えて,Jennifer Anistonの登場シーンで,難聴者の振りをして誘いを断るシーンがあって,これが何しろ不快.障がい者を必要以上に持ち上げるのがいいとは思わないけれど,こういう無神経なことは絶対にやっちゃいけない.

 尚,字幕なしの英語で観ているので,会話が半分も聞き取れていないのはご愛嬌.実は聞き逃している中に,物凄~く深い話があったとしたらそれはそれで自分の英語力が残念.

2010/07/02

宮下奈都『スコーレNo.4』

スコーレNo.4 (光文社文庫)
宮下 奈都
光文社
売り上げランキング: 9617

 大学時代,読む本といったら専門書や旅行本,料理本の類で,小説といっても司馬遼太郎を筆頭に歴史小説がメインだったから,この手の小説を手に取ったのは本当に久しぶりのことだ.高校時代には吉本ばななあたりが好きで隅から隅まで読んでいたこともあったけれど,本当にここ数年間,小説からは遠ざかっていた気がする.

 そんなだから,たまたま気分で手に取った一冊が自分の感性や価値観を安心してゆだねられる一冊だったということは,それ自身どこか運命的でもあるし,そこに理由付けしたくもなってしまう.ピュアで,ストイックで,だからといって静的というよりは動的で,上品.読む人が読めば「何が面白いの?」とバッサリ斬り捨てるのだろうけれど,自分は読み終わったあとに残った幸福感だけでおなかいっぱいだ.気まぐれで入った小さなケーキ屋さんで,一生モノのアップルパイと出逢えたようでもある.

 骨董屋に育った女性の,半生折々の覚書のような4章.研ぎ澄まされた感性が,センスに,仕事に,恋に,少しずつ居場所を見つけていく.そのどれもがくすぐったい.ところどころで目元が潤んでしまったのも,うれし涙のせいだ.

 最近,男性達と話をしていても,彼らはこんな感性を持ったことがないのかな,と不審に思うことが多々ある.世の男性たちの多くの下品さに男性不信に陥りそうな気すらする……というのは半分冗談で半分本当.
 やっぱり,自分は感性が女性的だと思うし,そういう自分が嫌いじゃない.それでいてセクシャルにはストレートなんだから,ずいぶん得に生まれてるじゃないかとすら思う.この本を読んで,何となく,感性を共有出来る親友と,感性をさらけ出せる恋人とに,同時に出逢えたような気がした.

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