2010/07/12

瀬尾まいこ『図書館の神様』

図書館の神様 (ちくま文庫)
瀬尾 まいこ
筑摩書房
売り上げランキング: 60925

 前の二冊がクリティカルヒットだったこともあってそれほどインパクトは感じなかったし,トピック的にも,自殺だとか,不倫だとか,あまり好きじゃないネタがところどころにあった.それでも最後までノンストップで読める爽快感はあった.

 一つには,文学的なエッセンス.怠惰でリアルな教師が主人公なだけに,やれ夏目漱石だのやれ川端康成だのと,昔読んだような文豪たちの影がチラつくたびに物語が引き締まる.一つには,風景.海を背景に思い浮かべさせるような全体感があって,主人公のクールで渇いた存在を引き立てもするし,潤わせもする.

 マイナスから始まったストーリーが涼しげに淡々と進み,最後の10ページくらいでグッと胸に来る.ミスをしないで勝ち続ける人生より,挫折続きの人生の方が自分は好きかも知れない.主人公の犯したミスは,ひとよりずっと重いものだったかも知れないけれど,そこから新たな一歩を踏み出す勇気と不安が,この物語を輝かせる.

 最後に……文学って素敵だなぁ…….答えなんて要らない,感じるままに楽しめばいいじゃないか.何がクリティカル・リーディングだ,何がロジカル・リーディングだ.文芸も美術も,感じるままに感じればいい.科学より,もう何次元か自由度が高くていい.

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