2010/05/10

Mystic River (2003)

ミスティック・リバー [Blu-ray]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2010-04-21)
売り上げランキング: 1250

 Clint Eastwood監督の「Mystic River(ミスティック・リバー)」.もう相当むかしに見た作品で,観たときにはEastwood監督なんて全く意識していなかったし,今見てもやっぱりそれらしく見えないと思う.監督Eastwoodを取り上げてきたけれども,この作品に関しては,役者の演技力一つに尽きると思う.ストーリーに至っては,同情の余地も救いどころもない.Eastwoodらしい「逃げ道」が欲しかった作品.後味の悪さは保証できるけれども,かといって,もう二度と観たくないかといわれると意外とそうでもないから不思議だ.

 個人的にTim Robbinsは大好きな俳優の一人だし,Kevin Baconの役どころも絶妙なのだけれど,この作品ではSean Pennの存在感がとにかく圧倒的.悪役のイメージがなかったSean Pennが完全に悪役にしか見えないこの演技力,完全に残り二人を食ってしまっている.それでも尚,残り二人の演技が半端なく重々しいから,物語を通じて飽きは来ないけれども,他の役者だったらどうなっていたか分からない.

 ストーリーに関しては,ラストが印象的.ジミーやデイヴの妻セレステが,罪を抱えて尚,ふてぶてしく生きていくであろう力強さを感じさせる表情とカメラワーク,あるいは演出は,後味の悪さをいっそう際立たせる一方で,多くの人間の本質を捉えているようにも見える.このラストシーンのおかげで不憫さが際立ってしまうデイヴの正義に,純粋さと歪みが混在していたことも忘れてはならない.怒りや報復をモチーフにしているという点で,「Gran Torino(グラン・トリノ)」と比べてみると面白いのだが,怒りや報復というのは,自分にとって割と遠くにあるテーマであるだけに,後々に引きずって考えさせられる部分や発見はこの作品のほうが多いように思う.

2010/05/05

Gran Torino (2008)

グラン・トリノ [Blu-ray]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2009-09-16)
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 Clint Eastwood監督・主演の「Gran Torino(グラン・トリノ)」.観る前からまわりの前評判が良くて,5人くらいからすすめられ,観たのは今年の年明けくらいか.

 この作品のテーマとして,暴力への反対であるとか,人種差別への批判であるとか,アメ車のPRであるとか,そういうことが言われているようだけれども,正直,そういうところにはあまり惹かれなかった.この作品で一番いいなと思ったのは,頑固で偏見のかたまりのような老人が,ひょんな縁から近所の少年を懸命に育てていくという世代交代の構図が見え隠れしたところだ.
 「近ごろの若者は……」とついつい言われがちな社会.しかし,そんな台詞は現代でなくとも何百年も前から使い古されていたはずで,ジェネレーションギャップは文化を持つ人間のいわば宿命といってもいい.そんな中で,相手に気付き,相手を理解し,相手に伝え,相手から学ぶといった基本的な人間関係が築かれていく過程が,とても温かかった.

 一方,この作品が傑作かといわれれば,個人的にはNO.この作品の最大の見どころであるギャングへの復讐シーンは,自分のまわりの人間も含め,多くの感動を呼びこんだようだ.ところが,自分の場合,この手の報復の方法はそもそも一番最初に考えてしまう手だったりする.そういう意味で,この作品のクライマックスは,自分の予想を一切裏切らない平凡なものにしか映らなかった.
 元々,暴力に訴えるのは得意でもないし好きでもない.出来るなら争い事からは全力で逃げるし,ここ10年くらいはまともに怒った記憶だってない.そんな中で,心の底から怒ることがあるとすれば,それは自分のためではなく大切な誰かのためで,そんなときも,自分は一番建設的なやり方を選ぶのだと思う.

2010/05/04

Changeling (2008)

チェンジリング 【VALUE PRICE 1800円】 [DVD]
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 Clint Eastwoodの監督作品.あるシングルマザーのもとから失踪した一人息子と,半年後,無事保護され帰ってきたまったく別の少年.この奇怪な事件を巡って明らかにされたいたたまれない悲劇と警察の実態を描いた作品がこの「Changeling(チェンジリング)」だ.

 主演のAngelina Jolieは,個人的にどうしても好きになれない女優の一人ではあるが,この作品における演技は素晴らしいの一言.もともとアクション俳優としてのイメージが強かった分,そのギャップにも驚かされた.強いていえば,彼女の化粧スタイルが時代背景にややミスマッチだった感がしないでもないか.

 ストーリーは史実に沿って脚色されたものだ.描きようによっては「Se7en(セブン)」のようなただの残酷な犯罪映画にしかならなかっただろうし,そうでなくてもこの物語の展開から希望を見出すことなんて到底出来そうにない.実際,クリスティンが警察から迫害を受けるストーリー前半も,犯罪の全貌が明かされていくストーリー後半も,観るに堪えないくらいの重い話が続く.
 それにもかかわらず,この作品のエンディングで一抹の希望や勇気さえ感じられるのは,ストーリーの随所に散りばめられたクリスティンの強さを暗示させる演出とAngelina Jolieの演技があるからだろう.史実の上でのクリスティンがどのような女性だったか知る術はないが,監督の演出力と女優の演技力が作品のコンセプトを決定づけてくれていると思う.

 エンディングで,やはりクリスティンの希望が報われなかったことがテキストで語られてしまうのは,一見するとにわかに抱いた希望を裏切られるようでもあるが,実際のところはこの絶望的な事件を色褪せさせないための布石になってくれるのではないだろうか.

2010/05/02

Flags of Our Fathers (2006)

父親たちの星条旗 [Blu-ray]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2008-06-11)
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 先日,会社のちょっとしたアンケートで「上司にしたい著名人」と聞かれ,Clint Eastwoodの名前を書いた.そこでふと思い出したのが,年明けにやっていたClint Eastwood特集.中途半端なまま終わっていたので,また少しEastwoodに回帰してみよう.

 「Letters from Iwo Jima(硫黄島からの手紙)」をアメリカの観点から描いた映画.というより,「Letters from Iwo Jima(硫黄島からの手紙)」がこの映画を日本の観点から描いた映画,といった方が正しいか.
 扱っているモチーフ自体は同じだが,物語の展開もテーマも全く違う.個人的には,戦勝国アメリカの兵士たちの葛藤と苦悩を描いたこの作品の方が断然好きではあるが,「Iwo Jima」を先に観ていたお陰で,この作品ではモブでしかない日本兵たちが強烈な存在感とともに生々しい戦争のインパクトを与えてくれたのが良かった.所詮は戦争映画でしかない.それこそ,先日訪れたベオグラードやサラエヴォの紛争の傷跡を直接見た方が,何倍も衝撃的ではあるのだが,近代戦争に限らず,歴史を,複数の観点から見るということがいかに重要かをあらためて思い知らされ,戒めさせられる.

 この作品で問題となるのは,硫黄島において星条旗を掲げた兵士たちの写真における嘘である.といっても,結果的にこの嘘がアメリカの戦況を大きく変えたわけでもないだろう.にもかかわらずこの嘘が映画の主題となるのは,硫黄島の写真がアメリカ戦史におけるとてつもなく有名な写真である(と思われる)からだ.この一枚の写真の裏に見え隠れする,兵士たちが背負ったとてつもなく大きなプレッシャーと葛藤,そしてアメリカ軍やメディアを通した戦争のいやらしさ.日本人の自分でさえ,それらを強烈に感じるのだから,当のアメリカ人ならばなおさらだ.

 だが一方で,この映画は兵士の「英雄観」を否定してはいない.“英雄になるべきは自分たちではなかった”という葛藤は,兵士たちの戦争行為への後悔や反省を意味するものではまったくない.その意味で,Eastwoodが一番描きたかったはずの反戦的なメッセージは極限までぼかされてしまっている.

 しかし,「Iwo Jima」を併せて観ることで,このメッセージは観る側の中から自然に湧き上がってくるだろう.米兵の銃撃で次々と倒れていく兵士たち.普通の戦争映画なら見過ごしてしまいそうなモブの兵士たちの一人一人に,人間的なバックグラウンドがある.それは観る順を逆にしても同じことだが,兵士が特殊訓練を受けたロボットではなくて,やはりどこまで行っても人間であることをもう一方の映画によって改めてさらされてしまうから,この映画を観るのは辛いのだ.
 観る側にメッセージを能動的に委ねるEastwoodのやり方には,大絶賛を送りたい.

2010/05/01

Avatar (2009)

アバター ブルーレイ&DVDセット [初回生産限定] [Blu-ray]
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 アカデミー賞にからんで何かと話題の多かった「Avatar」.公開が長引いたせいもあって,BD&DVD化が早かった.3D時代の幕開けとして映画館で観るべきだったし,観る時間もあったのだが,実は3D映像を劇場で観て酔わなかった経験がいままで一度もないので,敬遠してしまっており,ここに来てようやく鑑賞.

 映像技術に関してはスゴい.これだけ精巧な作りであれば,10年20年くらい前から流行り始めた安っぽい3Dとは違って,臨場感を楽しめるに違いない.技術屋のハシクレとしては,製作の過程も興味があるところ.
 だが,基本的に実写映画におけるCGに対してアンチな自分にとっては,この手の映像技術は映画の良しあしにまったく影響しない.技術大作という偏見を抜きにしてみたら,ストーリー自体は相当コテコテだったりする.

 人類が進出した新惑星における,資源をめぐる原住民との戦いを描いた作品であるが,「ONE PIECE」と「もののけ姫」からをエッセンスをレンタルしたようなストーリー.コンセプトの深さも描き方も,ワンピやジブリの方が断然うえだと思う.実際,アニメやゲームでSF肥えした日本での反応は賛否両論のようで,予想を裏切らない展開に失望の声も多かったそうだ.

 ただし,だからと言ってつまらないかと言われればそうでもなくて,予想は裏切らないけれども期待も裏切らない.それこそ,個人的にはCG技術なんかよりも大事なシーンの魅せ方の巧さが好印象で,先行きの見える展開を絶妙な時刻にじっくり味わわせてくれるから,何というか,推理小説で自分の推理が当たっていたときのような爽快感すら感じられそうな心地よさはある.ラストにかけての展開はやや陳腐だったかなという気がしないでもないが,「自分ならこうする」という視点で観るといろいろ勉強になる作品だった.

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