2010/10/31

赤毛のアン

 劇団四季ミュージカル「赤毛のアン」.千秋楽ギリギリ滑り込みで鑑賞.千秋楽を観られればベストだったのだけれど,予定も入っていたしいい席も取れなかったので却って良かったと思う.
 本当は,新しく出来た大井町の「美女と野獣」を先に見たかったのだけれど,こちらの方こそいい席はかなり先まで満席.また時間を置いて調整しよう.

 というわけで観て来た「赤毛のアン」だったのだけれど,期待以上に面白かった!と言うのは,何よりダンスが物凄い.動きの緻密さも,激しさも,最早「ライオンキング」より断然上でしょう.四季の子役さんは(下手をしたら大人以上に)役者な子が多いけれど,子役がいないほうがダンスのバランス感覚や統一感を出せるのかも知れない,というのは昨年末の「コーラライン」を思い出した上での感想.とにかく,ダンスが観ていて痛快で素晴らしい!
 加えて,勿論,歌や役者さんもGood.特に主演の笠松はるさん.声量が求められる舞台演劇であれだけ繊細に声色を使い分けられるというのが流石.歌も素晴らしいし,綺麗だし,言うことないや.前回の「サウンド・オブ・ミュージック」では井上智恵さんの舞台だったのだけれど,この人でもう一度「サウンド・オブ・ミュージック」を観てみたい.

 脚本に関しては最後の方をもう少し濃密に,なんて欲がない訳ではないけれど,時間との兼ね合いもあるかな.ともあれ,千秋楽よりもっと前に一度行っていれば,間違いなくリピーターしたのになぁと思うと残念で仕方が無い.また東京に来るのを気長に待つことにしよう.

 仕事のほうも軌道に乗って時間が作りやすくなる(また12月にかけて忙しくなるかも知れないけど)ところで,演目がガラリと変わるシーズンに突入.この年末から来春にかけては,お財布の許す限りで四季はじめ演劇づくりのシーズンに出来たらいいなと密かに期待している.

没後120年ゴッホ展―こうして私はゴッホになった

 六本木の新美術館で開催されているゴッホ展.開催早々に出掛けるつもりでいたのに,今月は思わぬ仕事ラッシュでなかなか行けず,やっとのことで来訪.大混雑という話を聞いていたのだけれど,台風直撃の中だったせいか,思ったほどには混んでおらず(それでも関西の企画展に比べれば大盛況だけれど),そこそこ自由に見て回れたので大満足.
 とは言え,実を言うと別に個人的にはGoghに思い入れがあるわけでもないし,あまり期待もしていなかった.更に言えば,Goghについては,第一に,一昨年ウィーンのアルベルティーナ宮殿で全欧的なGogh展を観ていること,第二に,来年オランダを訪れる予定であること,などを理由にこの美術展に固執する理由があまり無いというのが正直なところだ.実際,普段は必ず買っている絵葉書や図録も,今回は買わず仕舞いだった.

 とは言え,収穫がなかった訳では全くない.というのは,Goghが影響を受けた画家達の作品や,その比較の展示が非常に充実していたからだ.その代表格は,何と言ってもJean Francois Millet.先週,山梨でMilletコレクションを久々に見たばかりだったこともあり,MilletとGoghの近さを生々しく感じることが出来た.Goghの絵画は基本的に我流で,Milletらの作品を模写,派生するところから学んだ模様.後々,より多くの画家から影響を受け,鮮やかな色彩と荒々しいタッチの作風が確立されているのだけれど,個人的にはまだMilletらの作品から学ぶか学ばないかという若かりし日の暗い色彩のGoghの作品の方がとても好きだと思った.

 又,同じく後々で影響を与えた画家の一人としてMonetの絵が二点展示されていたのだけれど,このうちの一点「Vetheuil」が,Goghとは無関係に非常にストライク.「ストラスブール美術館展」以来気に入ってしまっているピンクの色彩が,絶妙なタッチと割合で描かれている.空は勿論のこと,草原や木々にまで広がるピンクの色彩がどれだけ絵を明るいものにしているか.この絵は,今年観た絵画の中でも五本の指に入れてもいいくらいに気に入った作品.

 そんな訳で,Goghについてはまずまず良い準備運動が出来たので,来年予定しているオランダ紀行の際には,是非とも本家のVGMにお邪魔させて頂きたいと思うし,来年は時間的に難しいだろうけれど,いずれは南仏のアルルにも行ってみたいと思いを膨らませる.

山梨県立美術館

 山梨県は甲府市にある山梨県立美術館.見過ごされがちな地方美術館の一つではあるが,常設展のコレクションでは国内最高クラスだと思う.というのは,地方美術館には珍しく「Milletコレクション」というテーマ性を持って作品が集められており,国内随一のMilletの作品群を誇る美術館となっているからだ.
 かく言う自分も訪れるのは久し振りのこと.実家から自動車で一時間強というところにありながら,長いこと京都で過ごしていたので,なかなか訪れる機会もなかった.訪れてみると,以前には無かった作品が追加されていたり,作品の修復が為されていたりと,以前より一層充実度が増したように思う.

 「Pauline-Virginie Onoの肖像」は久し振りに観たかった作品の一つ.Mona Lisaに似た印象を感じさせる一枚だったように覚えていたけれど,久し振りに観てみると意外とタッチや色遣いが荒かった.また,この美術館で一番の売りにしているのが,Milletの名作「種をまく人」.こちらは同じ構図の絵が二枚現存していて,一枚は山梨に,一枚はボストン美術館に所蔵されている.ボストン美術館の一枚は,この春に六本木の「ボストン美術館展」で来日していたのでその時に見ているけれども,半年を経て見比べてみると,やっぱりボストンの方が完成版かなといった印象.タッチや構図がボストンの方が繊細に描かれているように思う.全体的に,Milletの作品群には昔見たときほどの衝撃を感じなかったというのが正直なところ.

 一方で,同じバルビゾン派のCorotの作品は相変わらず光る.この美術館に所蔵されている「大農園」もその一つ.Milletの関連でバルビゾンの資料も沢山展示されているので,それを見た上でCorotを見るとまた面白い.尤も,この「大農園」についてはパリ郊外を描いた作品のようなので,直接バルビゾンとは関係ないのだが.
 加えて目に付いたのは,藤田嗣治のエッチングの肖像画.この肖像画,構図こそ違うものの,藤田の表情といい猫の表情といい,現在「ウフィツィ美術館自画像コレクション」で来日している藤田の肖像画の画稿に間違いない.

 そんな訳で,この美術館を訪れて以来,地方美術館も侮らずにこまめにまわって来たつもりではあるのだけれど,未だに山梨県立美術館以上にコレクションの豊富な美術館には出会えていないように思う.

2010/10/27

伊吹有喜『四十九日のレシピ』

四十九日のレシピ
四十九日のレシピ
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伊吹有喜
ポプラ社
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 Amazonで「宮下奈都」と検索すると,どういう訳か候補にヒットするこの作品.Amazonの評価も高そうだったので,これまただいぶ前にジャケ買いしておきながら,つい先月まで読まずに放置していた一冊.丁度一ヶ月くらい前に読んでいた本がどうも自分には合わず,なかなかページが進まなくなってしまったので気晴らしに読み始めたら,夜更かしをして一夜で読み終えてしまった.翌日,仕事にまで支障をきたしてしまったというのはここだけの話.

 恐らく,宮下さんの作品を買っているユーザーの何人かがこの本を買っていて,それが商品リストにあがるからヒットするのだと思うけれど,宮下作品とは世界観や作風こそ違うものの,期待以上の一冊だった.これを書いている時点で伊吹さんの作品はもう一冊読み終えている(今のところ二冊しか出版されていない模様)けれど,伊吹有喜さんの小説にも,純粋さや優しさの中に伊吹流の強烈な個性が色濃く出ていて,一度ファンになったら止まらなくなりそうな,いい意味での中毒性がある.宮下奈都さんのあとに読んだのがあまりにも惜しい.

 作品は,とある家族のストーリー.再婚した妻に先立たれた夫とその娘の,家族愛や自身の葛藤が描かれる.亡くなった妻,義母の,教え子と名乗る女性が突然あらわれ,奇妙な付き合いを続けていく中でおぼろげだった妻,義母のくっきりとした輪郭が浮かび上がっていく.家庭での生き方を何一つ知らない夫,夫婦関係に問題を抱える娘.その妻,義母が残した「四十九日のレシピ」を頼りに生活をしてみることで,少しずつ答えが見えてくる.
 伊吹さんの作風のようだが,ストーリーの視点が夫と娘とで交互に変わっていくのが面白い.章ごと,段落ごとにバトンタッチする主観は,まるで二人の対話のようでもあり,しかし二人の思いがなかなか溶け合いきらないところを見ると,寧ろ先立った妻であり母である人を理由にお互いを探り合っているようでもある.

 言葉の選び方やモチーフが洗練されているというわけではないし,必ずしも純粋な話題ばかりを扱っているわけではないけれど,世にありふれている安っぽい恋愛小説や家族小説とは確実に一線を画した,暖かさがある.
 家族とは何か.幸せとは何か.自分は何のために生きていて,誰とどのようにつながっているのか.登場人物たちに感情移入していく中で,いつの間にか自問自答して,言葉には出来ないまでも読み終える頃にはおぼろげに答えが胸の中で出ている.宮下作品が一人ひとりの中に眠るオンリーワンを気づかせるものだとしたら,伊吹さんのこの小説は,一人ひとりにとってのアナザーワンの存在を気付かせる愛にあふれたものであるように思う.

渡辺剛セッション feat. 折笠富美子

  • 渡辺剛セッション feat. 折笠富美子
 折笠富美子さんの直近2枚のアルバムのプロデュースをされている渡辺剛さんが,折笠ライブを企画.ファンとして見逃せるはずもなく,ベストポジションで席を手配した.にもかかわらず,不可避の仕事でまさかの遅刻.いっそ仕事を辞めてやろうかという気持ちを抑えつつ,社会人の哀しさを知る.尤も,この日の仕事は例外中の例外なので,今後同じようなバッティングがあったときにはもう少し自由に帰宅時間や半日休暇は調整出来るので,今回だけは泣く泣く我慢.
 それはさておき,折笠富美子さんの実質単独ライブ!折笠さんの生歌の上手さは昨年の舞台「作者をせかす6人の主人公たち」で証明済み.その上,今回は3mの至近距離で生ソング.恍惚寸前で聞き入る.もう説明は要らないくらいに,上手い.歌手が本職でないのが残念でならないのだけれど,舞台に立ったら立ったで舞台俳優が本職でないのが残念に思えてしまう.
 ライブは二部構成で,丁度,第一部と第二部の間に滑り込み入場.とある掲示板によれば,前半も含めセットリストは以下の通り.

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【第一部】
01 (inst.) / 02 Garden / 03 おかっぱちゃん
04 あなたに会えてよかった(小泉今日子) / 05 夕陽の約束
06 ひとつだけ(矢野顕子) / 07 Promenade / 08 Lady Wendy

【第二部】
09 WALL FLOWER(inst.) / 10 Sentence / 11 Sweetie / 12 晨星
13 ステキな果実(コミネリサ) / 14 ひいふうみい / 15 心の輝き / 16 Tomorrow

【アンコール】
17 さらば(キンモクセイ)

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 最初のGardenが一番好きなので,知ってしまうと仕事で帰さなかった会社を呪わずにはいられない.しかしそれ以上に,カバー曲がとてつもなく良い.オノナツメ原作『リストランテ・パラディーゾ』のEDだった「ステキな果実」と,『あたしンち』のOPだった「さらば」の二曲が自分にとっては後半のメインディッシュだった.
 特に,「さらば」.アンコールの曲ということもあってか,“こんにちは”,“ありがとう”,“さよなら”,“また会いましょう”のそれぞれを表情や首の傾きで演じてしまう折笠さん,役者過ぎてこちらは心臓が止まりそう!目が合っても咄嗟に目をそらさないとその場にいられないような素敵さに,帰り道もポカポカしぱなしだった.
 やっぱり,この人はアニメ声優を本職にさせておくにはあまりにもったいない.あれだけ多彩なのだから,演劇や歌の世界でもっと活躍の場を広げて欲しいなと思いつつ,それでも今回みたいな小さなライブも定期的に開催して頂きたいなと期待してしまう.

 一方で,今回参加されていた渡辺剛さんとギターの馬場一嘉さんが想像以上に素敵で思わぬ収穫だった.特に,渡辺剛さんが思いのほかのほほんな素敵なお兄さん.ピアノの演奏もゆったりで聞き入ってしまい,12月にある彼自身のライブのほうにもついつい参加してしまいたくなっている今日この頃.

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