2010/12/23

Movie of the Year 2010

 昨年に比べて半分も映画を観ていない上に,昨年の「Before Sunrise」と「Before Sunset」が圧倒的だったので,どうしても今年の一本を決めるのが難しい.結局,選んだ映画もニアミスの首位といった感じで,特に上位三作は明日にも入れ替わるかも知れないといった具合だ.しかし,本数が少ない割にそこそこ前評判や予告なんかを踏まえて観た映画が多いので,大ハズレは少なく,平均点としては昨年を大きく上回っていると思う.尚,ついついレビューを書くのが遅れてしまって,Top 10に選んだ映画は殆どここに載せていないものになってしまったけれど,今年も60本くらいは観られているので悪しからず.

【Movie of the Year 2010】

ずっとあなたを愛してる [DVD]
角川映画 (2010-09-09)
売り上げランキング: 12336

 京都シネマで観たフランス映画.安楽死という賛否両論あるテーマを題材にしているので,好き嫌いが分かれるのは仕方ないけれど,テーマそのものよりとにかくKristin Scott Thomasの存在感がずば抜けている.妹役のElsa Zylbersteinはじめ,キャスト全員,大味ではないけれどとても脚本もとてもいい.京都シネマにはマイナーな映画を観にちょくちょく足を運んでいたので,この映画は予告編で知ったもの.だから,主人公のジュリエットが息子を殺した罪で服役していたことは観る前から知っていたのだけれど,改めて観直してみると,こういった過去が明かされていく過程もとても丁寧かつ自然に描かれている.予告を見ずに観ていたら,最初からもっと高評価だったかも知れない.
 この映画で唯一ピンと来なかった音楽も,改めて見直してみたら全然違和感を感じなかった(実はTSUTAYAで大々的にレンタルされるなんて思わなかったものだからDVDも予約購入した).多分,映画館の音響のせいでギターが耳障りに感じただけなんだろう.そんなわけで,元々今年のTop 10は間違いないだろうと思ってはいたものの,DVDで観直してみたらもう一歩引き込まれてしまって,今年のベスト作品に選ばせて貰った次第だ.

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【Top 10 Movies 2010】
  • The Usual Suspects(ユージュアル・サスペクツ)(1995)
  • Dead Poet Society(いまを生きる)(1989)
  • Brave Heart(ブレイブハート)(1995)
  • Le Concert(オーケストラ!)(2009)
  • PARIS(パリ)(2008)
  • L'Heure d'été(夏時間の庭)(2008)
  • Pride & Prejudice(プライドと偏見)(2005)
 実に6作が非アメリカ映画!今年は,アメリカ映画以外の映画を積極的に観た一年.そもそも今のハリウッドで受けそうなド派手な映画はあまり趣味ではなくて,脚本やテーマ性に重きをおいた映画がいいので,フランス映画やイギリス映画の方が合っているのだと思う.
 一つ一つをざっくりコメントしていくと,「Into The Wild(イントゥ・ザ・ワイルド)」は価値観がストライクど真ん中の作品.ドキュメンタリー的な仕立ての映画で,自分が日々感じている疑問の一つを共有できた作品.多くの人に一度は観て貰いたい映画だった.この映画は,会社の同僚から紹介されて観たもの.紹介してくれた同僚(女性)は,好きな映画が「Before Sunrise」「Before Sunset」「Stand by Me」という奇跡的なチョイスの人で,「Into The Wild(イントゥ・ザ・ワイルド)」と「Pride & Prejudice(プライドと偏見)」はこれらと並ぶ彼女のイチオシ作品.どちらもとてもいい映画で,薦めて貰ってとても良かったのだけれど,映画の趣味は運命的なまでに合致しているのに他……いや,とにかく,映画の趣味が合っているからといって相性がいいとは限らないということだ(笑).
 「Hotel Rwanda(ホテル・ルワンダ)」はルワンダ紛争を描いた作品.描かれているテーマも主人公の人間性も(必ずしも善意で動き始めたわけではないところなども),「Schindler's List(シンドラーのリスト)」に通じるものがあるけれど,政治的な宣言の匂いがしないこと,一般的に認知度の低い出来事を扱っていること(自分が無知だっただけでもあるのだが)などを考慮すれば,こちらの作品の方が圧倒的に好きな映画.ここまで挙げた三つの映画は,どれも同じくらいにいい映画だった.ストーリーや映像,演技も然ることながら,エンディングの明るい選曲がとても印象的だった.
 「The Usual Suspects(ユージュアル・サスペクツ)」と「Dead Poet Society(いまを生きる)」「Brave Heart(ブレイブハート)」は今年の年明けに観た作品.どれも前評判が高いことは知っていたけれど,期待を裏切らない傑作だった.中身を全く知らないで観たのが良かった.「Le Concert(オーケストラ!)」はMélanie Laurentは勿論ステキなのだけれど,主演のAleksej Guśkowの存在感が素晴らしい.演技力という点で言えば,Kristin Scott Thomasに次ぐ名演だったと思う.コメディの要素が大きい作品ながら,クライマックスでのTchaikovskyは素晴らしかった.「PARIS(パリ)」と「L'Heure d'été(夏時間の庭)」はどちらも2008年のフランス映画.前者は,「Le Concert(オーケストラ!)」のMélanie Laurentが観たくて観た映画.フランスの御洒落さが憎らしいくらい滲んだ群像劇だった.後者は,オルセー美術館の開館20周年記念で作られた作品.小道具に実際のオルセーコレクションが登場していることが売りらしいのだが,そんなものが無くても美術ファンには十分得るものがある映画だと思う.美術館に飾られている名画や芸術品,それらがどういう“人生”を歩んで来たのか.この映画を観たあとで美術館を訪れると,絵に対する見方が少し変わる.「Pride & Prejudice(プライドと偏見)」は既に書いたとおり,同僚に薦められたもの.

 今年は観た映画をこの備忘録に書き留めることに時間を割かなかったので,ここに挙げた映画のレビューも,それ以外の作品たちも,あまり時間が経ってしまったものは適宜観直すなどしつつ,時間を見つけて少しずつ書きためていければと思う.

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 今年のベストを決めるにあたって,「Il ya long temps que je t'aime(ずっとあなたを愛してる)」「Into The Wild(イントゥ・ザ・ワイルド)」「Hotel Rwanda(ホテル・ルワンダ)」の三つで迷ったので,期待を込めていわゆる今年大ヒットした作品を年末にまとめて観たのだけれど,Top 10に食い込むほどの作品ではなかった.特筆すると,「Inception(インセプション)」についてはそもそもCGがあまり好きではない上に,別にテーマもコンセプトも新しくはないし,同じカテゴリならアニメの「攻殻機動隊」や「パプリカ」の方が遥かにしっかりしていると思う.そして何より期待はずれだったのが「Toy Story 3(トイ・ストーリー3)」.悪い映画ではないけれど,あそこまで大絶賛されるストーリーじゃないと思う.最初の15分と最後の5分以外は個人的にはマンネリ.あのエンディングにつなげるならもっと幾らでも緻密な構成が出来ただろうに!成長したアンディのおもちゃとの別れという,大人向けのテーマを持っていたはずなのに,物語の大半は子供向けに作られた感じ.大絶賛され過ぎて,期待度がかなり高かっただけに残念.ついでにPixar系のCGIが好きじゃないのも,この映画を手放しで絶賛できない大きな理由の一つ.

 一方,来年日本で公開される映画には期待の作品が多い.「Social network」,「The King's Speech」,「The Way Back」,「Black Swan」……etc..これ以上情報を入れないで観にいこうと思っているのだけれど,今聞いている感じだと,今年のヒット作品群とは少し違った展開を見せてくれそう.監督の顔ぶれを見ても,期待して良さそうな作品が多い.というわけで,来年もいい映画に出逢えますように!

2010/12/12

Book of the Year 2010

 今年はいい本との出逢いがきっかけで,学生時代以上に小説を読んだ一年だった.と言っても30冊とか40冊とかその程度でしかないけれど,社会人一年目で生活の変化や適応に追われる中ではまずまずの及第点だと思う.きちんと数えた訳ではないけれど,専門書やビジネス書も入れたら60冊70冊はあるのではないかと思う.まだレビューを書いていない本も実は沢山あるのだけれど,それらはまた時間のあるときに書くことにして,取り敢えずはこの一年の「Book of the Year 2010」と,各ジャンルでのイチオシの本を書き留めておこう.

【Book of the Year 2010】

スコーレNo.4 (光文社文庫)
宮下 奈都
光文社
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 全てはここから始まった.6月,「久々に小説でも読んでみようかな」と,新宿の紀伊国屋で偶然手に取った一冊.作者の名前も知らないし,タイトルも聞いたことが無い.「かつて少女だったあなたへ」という帯の謳い文句に惹かれたわけでもなく,まさに気紛れという言葉以外に適当な言葉が見つからない.帰って何となく読み始めたら,翌日の仕事のことなんて忘れてあっという間に読み終わってしまった.結局,半年間で3回も読んでしまった.一つ一つの言葉の選び方がとても美しい.そこに描かれる感性や価値観は,オーダーメイドされた靴みたいに自然にしっくりフィットする.親友であり,恋人のような一冊だった.
 結局,ここからスタートして宮下奈都さんの著書は,最新刊も含めすべて読んだ.そのどれもが素晴らしく良かったけれど,作品としての質に最初の一冊としてのインパクトも加わって,この作品が宮下作品の中でも頭三つくらい上を行っているといったところ.既刊の本は読み終えてしまったので,それらをまた読み返しながら,宮下奈都さんの次の作品を心待ちしたい.

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【文芸】
ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)
サリンジャー
新潮社
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 小説では,宮下奈都さんの独壇場.『スコーレNo.4』に次いで良かったのは,『遠くの声に耳を澄ませて』.宮下作品のパターンの一つらしい,短編集と 言う名の長編小説なのだけれど,個別の短編で言えば,「どこにでも猫がいる」は『スコーレNo.4』の上を行く短編だったと思う.
 そういう中 で,唯一同じオーダーにあったのが,吉田篤弘さんの『それからはスープのことばかり考えて暮らした』.実は,この本は『スコーレNo.4』を読んだ直後 に,感性にまかせて買った本で,このときの自分の研ぎ澄まされた直感が恐ろしくもある.実は,吉田篤弘さんの本はまだ読んでいない本が沢山あるので,来年 上期は彼の作品を読むところから始めてみようと思っている.
 サリンジャーは,村上春樹の『ノルウェイの森』を読み返したことがきっかけでふと読み返した.『ライ麦畑でつかまえて』は野崎訳(今年読み返した)も村上訳もそれほど違わなかったし,相変わらず好きになれなかったのだけれど,ふと思い立って『ナイン・ストーリーズ』に手を広げたら抜群に面白かった.特にインパクトがあったのが,「笑い男」.世界的に知られる日本アニメの至宝の一つ,「攻殻機動隊 S.A.C.」でもモチーフにされている作品だけれど,それを抜きにしても,サリンジャーの不気味な魅力を理解するに十分な短編だったと思う.

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【自然科学】
  • 伊庭幸人ほか 『計算統計Ⅱ マルコフ連鎖モンテカルロ法とその周辺』
計算統計 2 マルコフ連鎖モンテカルロ法とその周辺 (統計科学のフロンティア)
伊庭 幸人 種村 正美
岩波書店
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 仕事の関連で,MCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ法)が必要そうだったので,早い段階で自分で読んでおいた本.ある分布を仮定してモデルを構築する数学的な方法よりもしっくり来るし,物理や計算機に近い自分としてはとても大きな武器になりそう.
 実際のところ,現場で正規分布で妥協できる局面なんてほとんど無い,というのが実際に仕事を始めてみたところの印象.かといって,LevyやScale-freeから理論を構築するのが得策かというと,理論は複雑になるし,それらが必ずしも正規分布に比べて優れた再現性を持っているわけでもない.と言うわけで,実データから分布を再現するのが一番実用性に長けているように見える.実際に必要に迫られたら,適宜読み返したいところ.

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【人文科学】
  • スコット・パタースン 『ザ・クオンツ 世界経済を破壊した天才たち』
ザ・クオンツ  世界経済を破壊した天才たち
スコット・パタースン
角川書店(角川グループパブリッシング)
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 人文科学というには違う(寧ろ背景にあるのは今年読んだ本のどれよりもグロテスクな数学)けれど,職業柄,小説に分類したくもないのであえての選択.ただ,ジャンル問わずなら今年読んだ本の中ではベスト3に入る一冊.投資銀行のクオンツたちがいかなる方法・ロジックでリターンを追及し,そこにどのような盲点があったのか,それぞれの局面,ファンドでの話が盛り沢山に詰め込まれている.話の展開そのものも面白いし,読む人が読めば得るものも多い.

 投資銀行関連の本では,今年の下半期で読みたい本が沢山出版された.『リーマンショック・コンフィデンシャル』,『ゴールドマン・サックス』然り.これらには未だ手を付けられていないので,少しずつ読み進めて行こうと思う.

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【コミック】
  • 椎名軽穂 『君に届け』

 人に紹介されて読み始めたら一気に最新刊まで到達.高校生のピュアな恋愛模様が人気の大ヒットコミックだけれど,個人的には親友との友情模様の描かれた2巻がストライク.特徴的なキャラクターや設定があるわけではないし,絶対的な魅力があるわけではないと思うのだけれど,それでも尚,これだけこの作品がヒットしているところを見ると,今の若い人たちが結局のところ何を求めているのか,現実とのジレンマが分かるような気がする.

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