宮下奈都『よろこびの歌』.短編集かとおもいきや,一つ一つの物語がつながっていて,何でもない女子高での一連の日々が,6人の視点で進んでいく.
出来事にしてみたら本当に何でもない日常的な話で,展開上の面白さは何も無いといっていい.短編の一つ一つをハイロウズの曲にかこつけて描いているのも読む人が読めば安っぽく見えるだろうし,幽霊が見える,なんてテーマが紛れ込んでいるという点も自分を含めてお世辞にも文学的な高潔さは感じさせない.序でに,サブタイトルに併記された音階がドレミファソラシで1人目に戻ってくるのも,もう一人登場人物を加えてドレミファソラシドで一周させてくれないと,音階の美しさがまるで映えないじゃないか,なんて気持ち悪さもある.
しかし.それなのに.
読み終わった後の心地よさは何だろう.平凡な日常の中から見逃しがちな特別なものを発見し,拾い上げていく宮下奈都の視点の美しさ.況してや,今回の主人公が『スコーレNo.4』の麻子にも増して圧倒的な才能を秘めた少女だっただけに,彼女が再発見する才能の迫力と,それがまわりに伝播していく拡散の力強さがとても印象的だ.途中,ところどころ平凡なストーリーもあるけれど,読んでいながら読んでいて周りの雑音が一切聞こえなくなるくらいに引き込まれるシーンもある.主人公一人では眠ったままであったはずの才能が,友人の輪の中で一気に開花し,逆に友人達の才能に主人公も彼女達自身も気づき始める.人間の生きる喜びや面白さを,人の輪の中で発見していく面白さ.だから人生は面白く,美しい.そんな作品.



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