コイノカオリ (角川文庫)
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角田 光代 島本 理生 栗田 有起 生田 紗代 宮下 奈都 井上 荒野
角川書店
売り上げランキング: 16232
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恋愛小説の短編集.宮下奈都さんの短編が入っているということで購入.これを書いている時点で,宮下奈都の作品は残すところ一冊となってしまった.既に積読されている残り一冊を読み始めるのが哀しい.
どの作品も期待していたよりは面白かった.同じ短編集で最近読んだものなら,『孤独な夜のココア』より年代と文化が近くて親近感がある.大人の女性達が抱える大なり小なりの問題が,異性の壁を越えて(というか自分の価値観はどちらかというと女性側にあるので)ピリピリと伝わってくる.それにしたって,宮下奈都の別格感は正直凄い.この本はAmazonで買ったのでレビューの高さは知っていたけれども,読み終わっていざレビューを読んでみると宮下奈都への圧倒的な支持率が痛快だった.
宮下奈都の『日をつなぐ』については,古い短編ということもあって,その後の作品に再利用されているキーワードがところどころにある(スープとかブルーハーツとか).ただ,後々の青春小説と違ってシビアな題材を選んでいるだけに,物語り全体はとても危うくてスリリングだ.主人公の主観で見た修ちゃんでさえ心が放れていっているのは明白で,曖昧な形で終わる最後のシーンは,最早絶望的な予感しか感じさせない.このラストへ向けての数ページが急激に主人公への関心をそそるだけに,読む側には重々しい余韻がいつまでも残る.短編集のほかの作品達が,総じてハッピーエンドでないこともそう感じさせる原因の一つで,宮下奈都を知らないで読んだ人にはまた違った何かを感じさせるだろう.
けれども,彼女の他の作品(特に『太陽のパスタ、豆のスープ』)を読んだ上でこの短編を読むと,ところどころに明るい兆しが見えないでもない.修ちゃんは,別れを決意して家に帰るだろう.しかし,豆のスープの匂いはきっと彼の気持ちを一瞬鈍らせてくれる.そこからまた取り戻せるものがある.そんな余韻を残す.そういう視点でこの物語を読み終えたとき,タイトルの“つなぐ”という言葉が絶妙に響く.作品の中で輝きだすものは何一つ無いけれど,読者に委ねられた余韻の中で期待が見える.そんな作品.



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