- 三菱が夢見た美術館―岩崎家と三菱ゆかりのコレクション
- 三菱一号館美術館
ところが,これが意外に面白い.まず,次の単語の意味がお分かりだろうか.
- Meaco
- Iendo
- Xenday
- Sacay
中でも一番面白かったのは,16世紀~18世紀にかけて海外で製作された日本地図,世界地図だ.中には「中華帝国図」(1682年)の一部として日本が描かれているものもある.北海道が無かったり,九州が無かったりと,その精度はひどいものだが,測量や翻訳も難しかった時代の趣を感じさせる.ついでに,お世辞にも地図といえないような代物ながら,日本の地名がきちんと調査して書かれているのも愛らしい.実は,先に挙げた単語はこれらの地図に書き込まれていた日本の地名で,それぞれ「都(京都)」「江戸」「仙台」「堺」を表している.かなり細かい地名が記入されている一方で,位置があべこべだったり地名が聞き間違いだったりと,見ていてとても面白かった.博物品とは別に,展示されていた絵画群も,基本的に個人蔵や企業蔵のもので,普段美術館でお目にかかれない作品であることも特筆すべきこと.美術展の広告の顔にもなっている岸田劉生の「童女像(麗子花持てる)」は,西洋画の画風を引き継いだ日本人の肖像画ということで,黒髪の質感や,肌の赤らしさがいい意味での違和感を感じさせる.日本人の美しさを,改めて引き立てるようだった.今のご時勢では,染髪や化粧でこの魅力が意図的に殺がれてしまっているのがあまりに哀しくもある.
これ以外にも,Millet,Renoir,Monetといった定番の画家達の作品はそれぞれ見応えがあったし,元々の期待値がかなり低かったこともあって,お腹一杯で美術館を出た.三菱一号館美術館,いつ行ってもそこそこ空いていて,美術館の雰囲気もとてもいいのが好きだ.仕事帰りに何処の美術館に寄って帰るとは言いづらいけれども,お忍びでは常連になりたい美術館だ.
ついでに一言加えておくと,否応無しに,三菱グループの存在感を見せ付けられる美術展でもある.坂本龍馬と並んでブームとなりつつある岩崎弥太郎の影は,一時的なブームにとどまらず結果的に今後の日本をいっそう強く引っ張っていく確固たる象徴になるかも知れない.就職活動をしていたとき,幕末フリークでありながらなぜ三菱系列の企業を一社も受けなかったのか,今さらながらもったいないことをしたような気がしないでもない.




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