田辺聖子の短編集.この本が出版されたのが1978年だということを知った上で読むと,なかなか感慨深い.昭和の大人たちの恋のある面が今とそう変わっていないという安心感と失望感を感じ,一話一話を読み終えてみるとそれぞれ温かさが残る感じ.決して美談ばかりではなくて,むしろ後ろめたい話の方が多いから,読み始めは億劫な気さえするのだけれど,結局全編飽きずに読み終えてしまった.
個人的には,まるで恋愛小説のエッセンスを漂わせない「中京区・押小路上ル」が好きだ.土地勘があるから話の舞台が見えてしまうというのもあるけれど,誇りや意地を自覚しないままに,それでも伝統を守っていく京都人の本質みたいなものまで見え隠れして,懐かしくなった.
ただ,どうにも大阪弁に抵抗を感じてしまう.文字として,しかも恋愛小説として大阪弁を書き起こしてみると,これほどまで違和感のあるものになってしまうのか.


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