
渋谷東急のBunkamuraで開催されていた「語りかける風景」展へ.この一ヶ月,休日を思うように有効活用できずアートと疎遠になってしまっていたけれど,やっぱり美術館はいい.ようやく仕事も一息ついたので,ここから自分の時間を上手く作っていこう.
さて,先日の「
ボストン美術館展」との関連でもあるのだが,風景画はいい.実にいい.東京に帰って来て,空間的にもだだっ広い開放感を味わえる場所が無くなってしまったし,社会的にもあまりにラフなことは慎まなければならなくなってしまったからかも知れないが,風景画の中に自分を見てしまう.今回の美術展は,そんな自分のロールプレイングに絶好の企画展だったし,おおむね期待した通りに癒しを得られたと思う.
「語りかける風景」と銘打って,さまざまな角度から風景画を集めた今回の企画展.「窓からの風景」であるとか「水辺の風景」であるとかといったセクションのカテゴライズは正直無理やりだったけれども,有名無名問わず,自分好みの絵が多かった.モチーフという点ではバルビゾン派と関係深い画家の作品が中心的に集められていたので開放感のある自然風景が多かったし,作風という点でも落ち着いたタッチ,落ち着いたトーンの作品が多かった.実際,Camille Corotとその弟子達の作品が多かったのもお得感があった.

今回の美術展で一番印象的だった絵は,Maurice Herriotの「年老いた人々」.この画家に関しては調べてもいまのところ詳細が分からないのだが,Claude Monetの画風を抜群のモチーフと抜群の彩色でやってのけた奇跡の一枚に見えた.観た瞬間の彩色とタッチの圧倒的なインパクトも然ることながら,田園風景の中のモチーフのコントラストがとてもいい.空間的には遠近のコントラストであるのに,老夫婦とその孫娘らしい少女との間の,時間的コントラストやコミュニケーションのコントラストが,却って空間的なコントラストを和らげているというか.観れば観るほど魅力が見つかる不思議な一枚.Monetの影に埋もれてしまった画家なのか,はたまたMonetの作風を我流に真似ただけなのか.興味は尽きない.
もう一枚,Gustave Brionの「女性とバラの木」も良かった一枚.これは単に感性的なもので,全体的に暗い配色の中の明るい少女がかわいらしく映る.隣に添えられた解説によると,この絵は夜の風景を描いたものだという.描かれているのは,水をやり忘れたことを思い出して夜中に庭に出た二人の女性だ.光源は月明かりなのか庭の灯りなのか,いずれにしても現実の夜の庭には実際のところこんな明暗のコントラストは存在しない.だからこそ,この絵にこめた作者の主観やテーマが見え隠れする,そんな優しい絵だと思う.
その他,さすがバルビゾン一派の絵はいい.敢えて挙げなかったCorotの絵も印象的なものが多かった.逆に,中途半端に名前だけで入っていたPicassoの絵なんかは,無いほうが全体の統一感が取れたんじゃないかななんても思ったり.実際,ところどころミスマッチな感じの絵もあったので,企画展の完成度としてはやや疑問かも.