2010/06/30

シェイクスピア『ハムレット』

ハムレット (新潮文庫)
シェイクスピア
新潮社
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 昔,どこかで聞いた話(たぶんZ会の旬報か何かだったと思う).

 英国でとある老婦人が劇場で『ハムレット』の舞台を観たとき,「この演劇はやけに慣用句だのお決まりの台詞だのを多用していてお高いね」と評したという話だ.実はこれは笑い話で,要するに今の英語の慣用句や定型句の多くがShakespeareに由来していて,そういった母国語の歴史や背景を知らない豆老婦人への皮肉とShakespeareへの賞賛をこめたものだ.

 自分自身,Shakespeareの作品をきちんと脚本で読んだことはほとんど無くて,大抵は映画やドラマで知っていた程度だった.この邦訳版の『ハムレット』も,戯曲文として読んだのはエンターテイメント業界の就職活動をしていたときの話で,そう古い話ではない.結局,今はもう少し専門的な道を選んだわけだけれども,趣味との接点,教養,語学,さまざまな場面でShakespeareはむしろ原作を読まないとダメだな,とすら感じることが多い.

 「生か死か」みたいなお決まりの台詞もShakespeareの読みどころのひとつなのだと思うし,それより何より,現代の演劇の脚本と違って読みにくさも一入だから,読んでいって物語の展開が見えてくるとグッと面白さが開ける.このあたりは,古典ながらも自分の好きな平田オリザの演劇観に通じるところもあって,古典戯曲と現代劇との間のジレンマも感じないではない.もっともそれは,英語に馴染みのない自分が読んでいるからこそ抱く印象なのかも知れないけど.

2010/06/28

Hamlet (1990)

メル・ギブソン ハムレット [DVD]
ビクターエンタテインメント (2009-09-18)
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 せっかく舞台の「ハムレット」を観たので,映画版も観てみようかなと思って少し前にレンタルショップに出掛けた.本当はKate Winsletが出演している1996年版の作品を借りるつもりでいったのだけれど,レンタル中で代わりにパッケージすら観たことのないMel Gibson主演の作品があったのでそっちを借りてきた.

 ……Mel Gibson若い……やれハムレットだのやれShakespeareだの言う以前に,このインパクトが大き過ぎる…….むしろ,いきなりこの映画を見せられたらひょっとしたら自分は最後までハムレットがMel Gibsonだってことに気付かなかったんじゃないか,というくらいの違いっぷり.
 作品自体は,役者も演出も音楽も舞台設計も,期待していたよりずっと良かった(もともと観ようと思っていた作品ではなく期待もしていなかったから).前日に四季の舞台を観ていたので,先代のハムレット王の登場シーンだけは普通過ぎて違和感があったけれども,それもまた面白いか.そもそも,Shakespeareの時代の亡霊観というものがどのようなものかも正直分からないし(今度気が向いたときに絵画から追ってみようか).

 日本では公開もされなかったようだけれど,思いのほか楽しめるし,『ハムレット』がよく分かる作品でもあると思う.但し,文学的なエッセンスや政略的なエッセンスはだいぶ削られているかも知れない.

2010/06/25

ハムレット

 長期休みを利用して観に行った演目の一つが,劇団四季の「ハムレット」.ハムレット訳の田邊さんは何だかんだで一番観ている役者さんの一人.この人の舞台を観るたびに,テレビや映画の演技と,舞台の演劇とがどれだけかけ離れたものか,ということを思い知らされる.のだが,実を言うと,こういう舞台舞台な感じの方が断然好き,というわけでもない(勿論好きではあるのだけれど).ただ,シェイクスピアみたいな古典戯曲に関しては,舞台が限りなく映える,というのが今回の感想.

 シェイクスピアの脚本をかなり直接的に還元していたので,ストーリーの厳かさと舞台特有のカツゼツの良さが見事にはまった感じ.あれだけの脚本をがっちり覚えてくる田邊さんも尋常じゃないなと思った.演出も想像以上に良かったし,最後まで気が抜けなかった.観終わってみると疲れてしまったくらい.

 ただ,『ハムレット』のストーリーそのものが,涙なみだのストーリーだとはあまり思えない.政略の面白さや言葉・脚本の面白さ,人間関係の面白さといったところは感じるものの,自分自身,感情移入できるポイントはあまり無い.それだけに,隣で観ていた女性がエンディングでポロポロ涙を流していたのは意外だったかも.

2010/06/22

The Sound of Music (1965)

サウンド・オブ・ミュージック [DVD]
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 ミュージカル映画の金字塔,「The Sound of Music(サウンド・オブ・ミュージック)」.たぶん,初めて観たのは幼稚園の頃で,それ以来も何度となく観てきた作品.でも,この映画の音楽になじみがあるのは映画を何度も観ているせいではなくて,あちらこちらで楽曲が使われているからだと思う.特に,「My Favorite Things」はJR東海のCMのお陰で,自分の10年越しの京都への片思いと切っても切れない関係にあって,今でもオーストリアの山麓風景と京都の妖艶な季節美をステレオで脳裏に浮かばせる思い入れの一曲だ.

 それはさておき,映画の方は今観ても見ごたえがある.特に,Julie Andrewsの歌がいい.少しだけいやなことを言うと,この物語はノンフィクションということもあってか,ストーリーの山場や盛り上がりには若干欠けるところがないでもないと思う.それでも観た後に拍手喝采を送りたくなるのは,結局のところ楽曲が抜群にいいからだろう.先日観た四季の作品は,劇場での臨場感も相まって身震いがしたけれども,それでもやっぱりJulie Andrewsの英語の歌の方が「Sound of Music」らしさを感じてしまう(もっとも本来ならドイツ語であるべきなんだろうけど).オーストリアとスイスの大自然と家族愛を少しでもリアルに感じるなら,四季の演劇より英語版のこの映画,という気がする.

2010/06/17

サウンド・オブ・ミュージック

 仕事を始めて以来,今夜が一番,自分の進路選択を省みているかも知れない.やっぱり,多少の食い違いがあったとしても,目を瞑ってエンタメ業界に飛び込むのもありだったかなぁなんて.今更遅いなんて思わず,自分に出来ることの中からこういう業界との接点は常に探り続けていきたい.

 せっかくの長期休み,京都にでも帰ろうと思っていたのだが,諸事情により東京でセコセコ過ごす羽目に.それでも連休を無にするのはもったいないので,劇団四季で気分転換.何だかんだで東京に帰ってきてから最初の観劇.劇団四季は昨年末以来だ(そういえばウィーンで聴いたオケとプラハで観たオペラのレビューを書いていないので気が向いたらあとで書いておこう).東京帰還に合わせて四季の会の会員にもなったし,いよいよ職場も大手町なので,仕事帰りに寄って帰る,なんて楽しみ方も出来るようになるかな.

 さて,今春から公演が開始した劇団四季の「サウンド・オブ・ミュージック」.
 もう,観ていて身体を動かさずにはいられなかった.ミュージカル,なんていいんだろう.実は二本立てで直前に「ハムレット」も観ていたのだが,小難しさもないし観客全員が一体化できるミュージカルの方が断然好きだな.これは,昨年,「鹿鳴館」を観たときにも思ったこと.

 作品を音楽的に楽しむなら,「ライオン・キング」より断然いい.初めて観るには「ライオン・キング」のほうが造形美も話題性もあるけれど,「サウンド・オブ・ミュージック」の音楽で知らない曲って少ないと思うんだよなぁ.言ってみれば,好きなミュージシャンのライブに行って期待通り聴きたいヒット曲をちゃんと歌ってくれるようなもので,加えて歌にも演技にも舞台にも高いクオリティがあるのだから,楽しめないはずがない.況して,劇場は[秋]なので,音楽はすべてオーケストラ生演奏.東京公演をしている間に一度は行っておきたい.

 細かいところで言えば,脚本の中盤で大佐の価値観が変わっていくプロセスを,もうちょっと脚本で引っ張れたらよかったのかな,なんて思った.また,「サウンド・オブ・ミュージック」の曲は全体的に尻すぼみというか,最後にクライマックスを持たない曲が多めなので,スタンディングオベーション,という雰囲気のシーンが少ないかも知れない.カーテンコールで全員で歌ってくれた一曲が一番盛り上がった.

 まぁそんなことは思いつつ,やっぱり家で映画観るよりは断然ミュージカルがいい.「サウンド・オブ・ミュージック」だけで,今年まだ何回も行っちゃいそう.東京勤務で良かった!

2010/06/11

語りかける風景―ストラスブール美術館所蔵

 渋谷東急のBunkamuraで開催されていた「語りかける風景」展へ.この一ヶ月,休日を思うように有効活用できずアートと疎遠になってしまっていたけれど,やっぱり美術館はいい.ようやく仕事も一息ついたので,ここから自分の時間を上手く作っていこう.

 さて,先日の「ボストン美術館展」との関連でもあるのだが,風景画はいい.実にいい.東京に帰って来て,空間的にもだだっ広い開放感を味わえる場所が無くなってしまったし,社会的にもあまりにラフなことは慎まなければならなくなってしまったからかも知れないが,風景画の中に自分を見てしまう.今回の美術展は,そんな自分のロールプレイングに絶好の企画展だったし,おおむね期待した通りに癒しを得られたと思う.

 「語りかける風景」と銘打って,さまざまな角度から風景画を集めた今回の企画展.「窓からの風景」であるとか「水辺の風景」であるとかといったセクションのカテゴライズは正直無理やりだったけれども,有名無名問わず,自分好みの絵が多かった.モチーフという点ではバルビゾン派と関係深い画家の作品が中心的に集められていたので開放感のある自然風景が多かったし,作風という点でも落ち着いたタッチ,落ち着いたトーンの作品が多かった.実際,Camille Corotとその弟子達の作品が多かったのもお得感があった.

 今回の美術展で一番印象的だった絵は,Maurice Herriotの「年老いた人々」.この画家に関しては調べてもいまのところ詳細が分からないのだが,Claude Monetの画風を抜群のモチーフと抜群の彩色でやってのけた奇跡の一枚に見えた.観た瞬間の彩色とタッチの圧倒的なインパクトも然ることながら,田園風景の中のモチーフのコントラストがとてもいい.空間的には遠近のコントラストであるのに,老夫婦とその孫娘らしい少女との間の,時間的コントラストやコミュニケーションのコントラストが,却って空間的なコントラストを和らげているというか.観れば観るほど魅力が見つかる不思議な一枚.Monetの影に埋もれてしまった画家なのか,はたまたMonetの作風を我流に真似ただけなのか.興味は尽きない.

 もう一枚,Gustave Brionの「女性とバラの木」も良かった一枚.これは単に感性的なもので,全体的に暗い配色の中の明るい少女がかわいらしく映る.隣に添えられた解説によると,この絵は夜の風景を描いたものだという.描かれているのは,水をやり忘れたことを思い出して夜中に庭に出た二人の女性だ.光源は月明かりなのか庭の灯りなのか,いずれにしても現実の夜の庭には実際のところこんな明暗のコントラストは存在しない.だからこそ,この絵にこめた作者の主観やテーマが見え隠れする,そんな優しい絵だと思う.

 その他,さすがバルビゾン一派の絵はいい.敢えて挙げなかったCorotの絵も印象的なものが多かった.逆に,中途半端に名前だけで入っていたPicassoの絵なんかは,無いほうが全体の統一感が取れたんじゃないかななんても思ったり.実際,ところどころミスマッチな感じの絵もあったので,企画展の完成度としてはやや疑問かも.

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