2009/10/07

鹿鳴館

 浅利慶太さん演出の三島由紀夫原作『鹿鳴館』.「アイーダ」を見る予定だったのが,日程調整でゴタゴタしている間にチケットが完売してしまったのでこちらを手配した.

 四季の新劇舞台は初めてだったけれど,ミュージカルの方がいいかなぁ.原作を読んでいないので,ひょっとするとこの傾向は三島由紀夫によるものなのかも知れないが,一つには,説明的な台詞がとても多い.自分の演劇観は,平田オリザさんのリアリズムにおおむね賛成で,日常的な脚本になるべく近い形で観る側と徐々にコミュニケーションの糸を紡いでいくところに魅力があると思っている.その意味で,冗長で語り過ぎな脚本と演出がやや残念.台詞の語り口調も,ミュージカル向きかなといった印象.

 一方,作品そのものには物凄くインパクトがあった.今や昼ドラでありがちにさえされそうな人間関係だが,その中での人間模様,愛憎の描き方や展開の仕方はとても見事.特に,鹿鳴館の華やかさと人間の卑しさのコントラスト,客観的に自分を見つめる事で内なる醜さに理屈を与えようとする人間の滑稽さなど,(良くも悪くも)文で伝わる以上の情報を持って容赦なく,その世界観が脳裏に焼き付けられるようだった.

 これも,原作知らずなので,三島の文才によるものか,浅井さんの演出力によるものかは分からないが,『金閣寺』などを思い出してみるに,三島由紀夫の文学観のあらわれの一つである事には違いないと思う.

0 comments:

© Crescent Moon - Template by Blogger Sablonlari - Header image by Deviantart