2009/10/24

武松打店・活捉三郎・関羽と白猿

 前から観たいと思っていた京劇の公演が近場であったので行って来た.学生は料金1000円と安いのも魅力.

 今回は,北京京劇院の訪日公演ということで,短い演目が三つ演じられた.京劇については殆ど予備知識なしで出掛けたのだけれど,京劇には立ち回りが中心の演目,武戯と,歌や台詞が中心の演目,文戯とがあるそうで,今回はその両方を観られたのが良かった.日本の新劇や現代劇とも,西洋のオペラなどとも違う,オリエンタルな演劇は新鮮そのもの.特に,最終演目の「関羽と白猿」は,雑技団的な立ち回りもあって楽しかった.

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 ただ,新鮮だったという点を除いては,今回の公演は決して大絶賛したくなるようなものではなかった.

 まず,音楽.大鑼,鐃,小鑼と呼ばれる金属楽器のいずれかだと思うのだけれど,余韻を残さずに手で音を止めてしまう演奏の仕方がとても気持ち悪い.日本人の音感に合わないのか,この演者の演奏の仕方に問題があるのか,劇場の音響が悪いのか,その辺りは幾つか公演を観て比較してみない事にはわからないけれども,不快な感じさえする途切れ方だった.この金属楽器と太鼓が,一貫して劇の拍子を取っていくものだから,音楽の後味は良くなかった.

 音楽に限らず,大道具や舞台芸術もさびしい.個々の俳優の衣装は,それこそ「京劇」の印象そのものともいえる鮮やかなものが仕立てられているのに,広い部隊の上に大道具や舞台背景は殆ど無し.いや,殆ど無かったり,全く無い代わりに,全てを演技でカバーするというコンセプトならそれはそれで却って面白いのだけれど,中途半端に舞台が仕上げられてしまっている感は否めない.時折でてきた小さめの背景も,正直,プロと呼ぶにはあまりにお粗末な仕上がり感だった.

 また,台詞.これも,京劇のスタイルなのか,俳優の問題なのかは分からないけれども,完全に声量が音楽に負けてしまっている.今回は,日本公演ということで日本語字幕があったから良かったけれども,中国で舞台に立つとき,あの声量ではオペラやミュージカルのように台詞を観客に伝える事が出来ないのではないか.

 最後に,脚本.古い演劇のスタイルという背景もあるのだろうけれど,脚本が陳腐でいま一つ.同じ古いでも,オペラや歌舞伎の方が断然,奥深さがあっていい.今回観た演目は,そこから煮えたぎるメッセージやテーマといったものが微塵も感じられず,どちらかというと雑技の立ち回りを魅せるところに重きを置いている印象だ.

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 そんなわけで,初の京劇で,新鮮味と演舞の迫力は大いに味わえたけれども,自分のセンスとの相性という意味ではいま一つ.これを京劇との相性と決めつけてしまうには少し尚早な気がしないでもないので,機会があれば本でも買って京劇のなんたるかを勉強してみたい.

 余談にはなるけれど,京都芸術劇場は,京都造形芸大の持つ劇場だ.有名公演も行われる大きな劇場だ.造形芸大には,むかし学園祭に遊びに行った以外では,就職活動をしているときにデザインや演劇関係の勉強で何度か足を運んだ.

 当時は勉強のつもりで出掛けていたので,あまり他の情報には目もくれなかったけれども,劇場や大きいギャラリーをいくつも持っているだけあって,毎週のように面白そうな公演や展覧会が開催されているらしい.京大なら,有名な研究者の講義や研究会が毎日開催されているけれども,自分には芸術関係の方がよっぽどインスピレーションになるんじゃないかな.これは6年間惜しいことしたかも…….京都を離れるまで,通い詰めてしまいそう.

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