2009/10/03

古代ローマ帝国の遺産―栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ―

 就職の関係で東京に滞在していたので,久し振りに美術展をハシゴする贅沢なオフが楽しめた.やっぱり東京はいい.美術館と劇場とカフェをまわるだけで気持ちが浄化されてしまう.向学心にまかせて一人で歩く京都とはまた違った味がある.

 どちらかといえば博物展に近い展覧会ではあるのだが,古代ローマ帝国の魅力は期待以上だった.何といっても,キリスト教の影が感じられないのが新鮮だ.西洋史には常にキリスト教がつきもので,美術や建築にもその影響が如実にあらわれる.宗教的な意図のあるそれらはそれで魅力的ではあるのだけれども,芸術家の主観が殺されてしまったり,芸術の並列化が起こってしまったりといった印象も否めない.宗教を否定はしないけれども,個人的にはキリスト教にせよイスラム教にせよ,宗教は大きな目で見ればある種の帝国主義だとも思う.

 ところが,古代ローマはCaesarの独裁的な影響力はあったものの,その文化は宗教よりも神話によっているところが大きい.神話とは,突き詰めれば自然の解釈であり,人間の空想である.これらを芸術に昇華した古代ローマ帝国の文化は,一般に連想させられる西洋の文化とはかなり異質な雰囲気が感じられた.

 政治の概念や,休日の概念など,現代の文化に引き継がれる社会システムの萌芽が文化から垣間見えるのも実にいい.モザイクで飾られた食堂や噴水,広場の遺構の数々には,2000年の時を経ていまなお人々の生活に引き継がれている人間臭さが漂う.それも,異国情緒としての魅力ではなく,むしろ日本人にさえつながる人間臭さなのだ.

 余談ではあるが,平日の昼間という事もあって人が少なかったのも良かった.何しろ,この後にハシゴした東京都美術館のエジプト展では,中年の鑑賞客がごった返していて,とても落ち着いて観られる状況ではなかったのだ.いくら収益が伴うといっても,これくらい静かで落ち着いた環境は保持する努力をして欲しいと思うのは傲慢だろうか.

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