大学時代,読む本といったら専門書や旅行本,料理本の類で,小説といっても司馬遼太郎を筆頭に歴史小説がメインだったから,この手の小説を手に取ったのは本当に久しぶりのことだ.高校時代には吉本ばななあたりが好きで隅から隅まで読んでいたこともあったけれど,本当にここ数年間,小説からは遠ざかっていた気がする.
そんなだから,たまたま気分で手に取った一冊が自分の感性や価値観を安心してゆだねられる一冊だったということは,それ自身どこか運命的でもあるし,そこに理由付けしたくもなってしまう.ピュアで,ストイックで,だからといって静的というよりは動的で,上品.読む人が読めば「何が面白いの?」とバッサリ斬り捨てるのだろうけれど,自分は読み終わったあとに残った幸福感だけでおなかいっぱいだ.気まぐれで入った小さなケーキ屋さんで,一生モノのアップルパイと出逢えたようでもある.
骨董屋に育った女性の,半生折々の覚書のような4章.研ぎ澄まされた感性が,センスに,仕事に,恋に,少しずつ居場所を見つけていく.そのどれもがくすぐったい.ところどころで目元が潤んでしまったのも,うれし涙のせいだ.
最近,男性達と話をしていても,彼らはこんな感性を持ったことがないのかな,と不審に思うことが多々ある.世の男性たちの多くの下品さに男性不信に陥りそうな気すらする……というのは半分冗談で半分本当.
やっぱり,自分は感性が女性的だと思うし,そういう自分が嫌いじゃない.それでいてセクシャルにはストレートなんだから,ずいぶん得に生まれてるじゃないかとすら思う.この本を読んで,何となく,感性を共有出来る親友と,感性をさらけ出せる恋人とに,同時に出逢えたような気がした.



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