Kristin Scott Thomas主演のフランス映画「Il ya long temps que je t'aime(ずっとあなたを愛してる)」.京都シネマで「Caravaggio(カラヴァッジョ/天才画家の光と影)」に続いてハシゴした作品.先日の東欧紀行の復習も兼ねて久々に「Mission Impossible」を見たせいで彼女の印象がわりと鮮明に残っていたのと,予告編がものすごく自分好みのものだったので気まぐれに観た映画だったのだが,細かいところでのりしろはあるものの,たぶん今年のベスト10には入るだろうというくらいのストライク作品となってしまった.
物語は,自分の息子を殺した罪で服役していた中年女性が,刑期を終えてその妹の家族のところに身を寄せるところから始まる.彼女の罪に対して一概にその是非を論じることは出来ないのだが(彼女が医師であっただけに余計に),そうした複雑な背景を抱える母親の,苦悩と心境の変化を浮かび上がらせるKristin Scott Thomasの演技が抜群に上手い.ほとんど無表情といっていいほどの中に,微妙ながら誰もが気付き共感を覚えるような感情をにじませる名演.それ一つで,彼女の大ファンになってしまった.妹役のElsa Zylbersteinの演技も,「Modigliani(モディリアーニ 真実の愛)」とは全く違った深みがあってとてもいい.この二人に限らず,出演者たちすべての演技に深みがあるのだが,その中でもKristin Scott Thomasだけは圧倒的にずば抜けていると思う.
作品そのものの主題,脚本もとてもよく,集中力は片時も削がれなかったが,更に言えば,もっと活かせたはずの素材や伏線(例えば言葉の話せなくなった祖父の存在であったり養子に迎えられた少女たちの存在であったり)がもったいないくらいに散りばめられているのが惜しい.もっとも,素材を全部使ってしまうと却ってご都合主義的な展開に陥りやすくもあり,監督がそれを敢えて嫌ったのかも知れないし,これくらい余白があった方がリアルだ.
あとは,決定的に音楽がミスマッチだったのは残念.エレキギターとベースよりは,ややトーンを抑えたアコースティックな楽曲が中心にあった方がストーリーの世界観に合ったのではないかというのが正直なところ.
逆にいえば,音楽さえ自分の好みに合っていたら,自分の中では殿堂入りしていたかも知れない作品.万人から称賛される映画ではないと思うのだが,物凄く自分の理想形に近いところにあった一作.提起された問題の難しさも,元夫という悪役がしっかり用意されているので感情移入もしやすいのではないかと思う.


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