2010/03/07

Secessionsgebäude

  • Secessionsgebäude(分離派会館)
  • Wien / Austria
 ウィーン分離派会館は,Klimtに代表されるウィーン分離派の展示施設で,Klimtの「Beethoven Frieze」が所蔵されている.「Beethoven Frieze」は,縦215cm,横3414cmにも及ぶ巨大絵画で,Beethovenの「第9」を題材に人類の哲学を描いた作品とされている.

 その迫力は圧巻で,自分が観た限りで,性的なモチーフを描いたKlimtの絵の中では最も冷静で神秘的な絵だと思う.ただ,単純にBeethovenの第9に表現される人類の哲学を描いただけではなく,当時のKlimt自身の立場的,政治的なしがらみへの当て付けのようなものまでこの絵の中に盛り込まれている気がして,哲学的な真理を描いた絵とまでは思えない.

 加えて,この分離派会館のコレクションは,その展示環境がお世辞にもいいとは言えない.わかりやすく言えば,明かりを落としたラブホテルの小部屋が道なりに並んでいて,その中に飾り程度にKlimtはじめ分離派の作品たちが息をひそめているのだ.エロティックなベッドと意味ありげに置かれたティッシュその他,極めつけにはレズビアン達の無修正のセックス映像を淡々と放映する部屋まである.

 Klimtが性的なモチーフを好んだのは,ポルノグラフィーとしての絵画を描きたかったからではなくて,人類の生命の連鎖であるとか,愛であるとか,そういうものを描きたかったからだと思っている(Klimtの絵からはその辺りの決意があまり感じられない気もするのだが).
 それが,今やこの分離派会館の展示を観るに,世紀末ウィーンのエロティックなモチーフだけが独り歩きして,アメリカ的なフリーセックスの象徴みたいに扱われているのがやや不愉快.美術館としては面白いけれども,世紀末ウィーンはウィーン美術界の革命にはなり得ず,Klimtの時代で実質的に幕を閉じた過去の歴史でしかないのだなと思い知らされた気がした.

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