- Gemäldegalerie Alte Meister(ドレスデン国立美術館)
- Dresden / Deutsch
行程的にかなり遠回りをしてまでドレスデンに寄った理由はただ一つ.ゲルマン圏で唯一見逃しているVermeerの作品2点がこのドレスデンの国立美術館“アルテ・マイスター”にあるからだ.そういう事情なので,かなり限られた時間しかドレスデンに滞在出来なかったのはいたしかたないのだが,流石に1時間半でアルテ・マイスターをまわるというのは無理があった.そもそも,Vermeerの「窓辺で手紙を読む女」を脳裏に焼き付けるだけでも2時間くらいは観ていたいくらいなのだから.それでも,泣く泣く30分でVermeerを切り上げて残りの時間でRaffaelloやGiorgioneの名画を観る時間も作れたのでギリギリ合格か.さて,問題のVermeer.もはやVermeerの絵自体は何冊も本や画集を読んで知り尽くしているので,どういった絵がどこにあるのかは当然全て知っている.それでも実物を観たい,という気持ちは美術に疎い人にはなかなか理解されないらしい(そういう質問を割と多くされる)が,例えるなら,音楽の好きな人がCDで曲を聴けるにもかかわらずライブやコンサートに行くのと同じ感覚といえば分かりやすいだろうか.
絵画は「2次元」といわれるが,実際には3次元,時に4次元である.本やweb上の写真として観る限りでは単なる画像でしかないのだが,実物の絵画にはその質感,タッチ,濃淡,絵具の重ね具合などが加わって全く違うシロモノになる.況して,年代が古ければ絵具がひび割れていたりところどころ禿げていたり,時間的な劣化まで加わってくる.また,写真や画像で一番当てにならないのがその色彩で,何か有名な絵を一つ検索にかけてみればわかるが,濃淡や色彩が画像によってまるで異なっているのが分かる.そういうわけで,基本的に画像の色彩は信頼しないことにしている.
さて,とはいえ作品そのものは事前に分かっているわけで,ドレスデンにあるVermeerの「窓辺で手紙を読む女」にはそこそこ期待をしていた.数年前に来日していた絵だが,当時はVermeerに興味すら持っていなかったので企画展も素通りだったわけだ.ドレスデンには実はVermeerが2枚あって,2枚目の「取り持ち女」ももちろん観てきたが,こちらは元々あまり期待もしていなかったし,その意味で概ね予想通りだったので,3分くらい見つめあって直ぐに隣の「窓辺で手紙を読む女」の方に目を戻してしまった.
結果はというと,期待通りの名作.心配していたほど劣化もなく,Vermeerの初期の作品の中では断トツで異彩を放っている傑作だと思う.女性と光をモチーフにした作品は,Vermeer中期に多く,そのどれもが抜群の傑作といっていいのだが,それらに引けを取らない魅力がある.
この絵で面白いのは,上側に不自然に空いた空間だ.少女をモチーフにしているなら普通に観ればお世辞にもいい構図とは言えないが,元々この絵の右上には天使が描かれていたものを最終的に暗示を嫌ったVermeerが排除したようだ.それでも,この空間のお陰で,自分が常々Vermeerの最大の魅力だと思っている「光」が2割増しくらいになって絵に生きているように見えるのが却ってとてもいい.上半分の空間の微妙な光の濃淡が,「光と影」という点でこの絵をVermeerの最高傑作に仕立てているように思う.


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