2010/04/02

ルノワール―伝統と革新

 東京復帰後の美術展第一弾は,六本木のRenoir展.平日の昼間だというのに入場で15分ほど待たされる混雑ぶりは,春休みだからこそだと信じたい.
 美術でも演劇でもアニメでも,関西の熱の冷めっぷりときたらある意味ありがたかった(まわりでも自分ほどでも興味を持っている人間はあまりいなかった)が,かと言って毎回毎回大混雑の中をかき分けるような見方はしたくない.もっとも,短期で入れかわる上野の各美術館の常設展に定期的に通うだけでも,十分充実したアートライフは設計できるのだが.

 さて,今回のRenoir展は,ポーラ美術館はじめ日本国内からも多く作品が集まっていたため,それほど目玉というべき作品は無かったと思うし,何だかんだでRenoirの美術展は日本では頻繁に開催されていて関西に来た展覧会は逃さず通っていたはずなので(Renoirが大好きというわけでもないのだが),有名な作品でも観るのは2回目,というものが多かったと思う.今回の美術展で面白かったのは,X線と赤外線による解析により,Renoirの多くの絵の下絵やタッチ,修正の過程などを考察したエリアがあったところだ.Renoirのやわらかい印象が,緻密な計算ではなくひとえに彼の感覚でつくりあげられていくプロセスが伝わってくるようだったし,技術的な部分でもさまざまな工夫や挑戦が見てとれた.

 絵画の方で一番印象的だったのは,「Julie Manet」.彼女は,Manetの弟とBerthe Morisotの娘で,Renoirの多くの絵とはだいぶ違った印象を持った.はっきりとした輪郭があるわけではないにしても,Renoirには珍しいコントラストの効いた肖像画だと思うし,視点を変えるだけで優しさと切なさ,温かさと冷たさといった相反する表情が無限に読み取れそうな魅力もあっていい.この作品は,パリのマルモッタン美術館に所蔵ということで,国内で気軽に再会できなそうなのは残念だ.

 ところで,ManetとBerthe Morisotといえば,今月6日に丸の内に新しくオープンする「三菱一号館美術館」の開館記念企画展で,Manetの名作「すみれの花束をつけたBerthe Morisot」が来日する.残念ながら初日は仕事でギリギリ間に合いそうにないが,翌日は現在の勤務地からでも悠々駆けつけられる.まして,来月か再来月になれば職場も丸の内にうつるので,仕事帰りに空いている時だけ寄って帰る,みたいな贅沢な通い方が出来るのも素敵.こちらは開館記念企画展ということで,全国をまわる予定はないはずなので,早くも東京帰還のアドバンテージにあずかれそうな期待を感じている.

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