山梨県は甲府市にある山梨県立美術館.見過ごされがちな地方美術館の一つではあるが,常設展のコレクションでは国内最高クラスだと思う.というのは,地方美術館には珍しく「Milletコレクション」というテーマ性を持って作品が集められており,国内随一のMilletの作品群を誇る美術館となっているからだ.かく言う自分も訪れるのは久し振りのこと.実家から自動車で一時間強というところにありながら,長いこと京都で過ごしていたので,なかなか訪れる機会もなかった.訪れてみると,以前には無かった作品が追加されていたり,作品の修復が為されていたりと,以前より一層充実度が増したように思う.
「Pauline-Virginie Onoの肖像」は久し振りに観たかった作品の一つ.Mona Lisaに似た印象を感じさせる一枚だったように覚えていたけれど,久し振りに観てみると意外とタッチや色遣いが荒かった.また,この美術館で一番の売りにしているのが,Milletの名作「種をまく人」.こちらは同じ構図の絵が二枚現存していて,一枚は山梨に,一枚はボストン美術館に所蔵されている.ボストン美術館の一枚は,この春に六本木の「ボストン美術館展」で来日していたのでその時に見ているけれども,半年を経て見比べてみると,やっぱりボストンの方が完成版かなといった印象.タッチや構図がボストンの方が繊細に描かれているように思う.全体的に,Milletの作品群には昔見たときほどの衝撃を感じなかったというのが正直なところ.
一方で,同じバルビゾン派のCorotの作品は相変わらず光る.この美術館に所蔵されている「大農園」もその一つ.Milletの関連でバルビゾンの資料も沢山展示されているので,それを見た上でCorotを見るとまた面白い.尤も,この「大農園」についてはパリ郊外を描いた作品のようなので,直接バルビゾンとは関係ないのだが.加えて目に付いたのは,藤田嗣治のエッチングの肖像画.この肖像画,構図こそ違うものの,藤田の表情といい猫の表情といい,現在「ウフィツィ美術館自画像コレクション」で来日している藤田の肖像画の画稿に間違いない.
そんな訳で,この美術館を訪れて以来,地方美術館も侮らずにこまめにまわって来たつもりではあるのだけれど,未だに山梨県立美術館以上にコレクションの豊富な美術館には出会えていないように思う.


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