2010/05/02

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 先日,会社のちょっとしたアンケートで「上司にしたい著名人」と聞かれ,Clint Eastwoodの名前を書いた.そこでふと思い出したのが,年明けにやっていたClint Eastwood特集.中途半端なまま終わっていたので,また少しEastwoodに回帰してみよう.

 「Letters from Iwo Jima(硫黄島からの手紙)」をアメリカの観点から描いた映画.というより,「Letters from Iwo Jima(硫黄島からの手紙)」がこの映画を日本の観点から描いた映画,といった方が正しいか.
 扱っているモチーフ自体は同じだが,物語の展開もテーマも全く違う.個人的には,戦勝国アメリカの兵士たちの葛藤と苦悩を描いたこの作品の方が断然好きではあるが,「Iwo Jima」を先に観ていたお陰で,この作品ではモブでしかない日本兵たちが強烈な存在感とともに生々しい戦争のインパクトを与えてくれたのが良かった.所詮は戦争映画でしかない.それこそ,先日訪れたベオグラードやサラエヴォの紛争の傷跡を直接見た方が,何倍も衝撃的ではあるのだが,近代戦争に限らず,歴史を,複数の観点から見るということがいかに重要かをあらためて思い知らされ,戒めさせられる.

 この作品で問題となるのは,硫黄島において星条旗を掲げた兵士たちの写真における嘘である.といっても,結果的にこの嘘がアメリカの戦況を大きく変えたわけでもないだろう.にもかかわらずこの嘘が映画の主題となるのは,硫黄島の写真がアメリカ戦史におけるとてつもなく有名な写真である(と思われる)からだ.この一枚の写真の裏に見え隠れする,兵士たちが背負ったとてつもなく大きなプレッシャーと葛藤,そしてアメリカ軍やメディアを通した戦争のいやらしさ.日本人の自分でさえ,それらを強烈に感じるのだから,当のアメリカ人ならばなおさらだ.

 だが一方で,この映画は兵士の「英雄観」を否定してはいない.“英雄になるべきは自分たちではなかった”という葛藤は,兵士たちの戦争行為への後悔や反省を意味するものではまったくない.その意味で,Eastwoodが一番描きたかったはずの反戦的なメッセージは極限までぼかされてしまっている.

 しかし,「Iwo Jima」を併せて観ることで,このメッセージは観る側の中から自然に湧き上がってくるだろう.米兵の銃撃で次々と倒れていく兵士たち.普通の戦争映画なら見過ごしてしまいそうなモブの兵士たちの一人一人に,人間的なバックグラウンドがある.それは観る順を逆にしても同じことだが,兵士が特殊訓練を受けたロボットではなくて,やはりどこまで行っても人間であることをもう一方の映画によって改めてさらされてしまうから,この映画を観るのは辛いのだ.
 観る側にメッセージを能動的に委ねるEastwoodのやり方には,大絶賛を送りたい.

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