2009/06/14

ゲルマン紀行#07

  • 2008年09月25日の旧エントリから転載・改編
 最後の街となったウィーン.散策した時間も内容も格段に多いので,ウィーンだけで単独の記事.3泊したベルリンもポツダムを除けば実質は1日半なのに対して,ウィーンは3日弱の滞在.ザルツブルクからウィーンに向かい,到着した日の夜は酷い雷雨に見舞われたものの,翌日の朝からは綺麗に晴れ渡った.

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【ウィーン(オーストリア)】★★★★★

 言わずと知れた音楽の都.夜になれば街の至る所で演奏会や公演が開催され,街は音楽で満たされる.又,ハプスブルク王朝帝都としての歴史を今に残し,建築,文化,宗教など様々な面で街は刺激に満ちている.総合的にはベルンより勿論優秀.ただ,それは規模的なものによる評価であって,マイナス要素が見当たらないベルンとは裏腹に,文化的に深い反面でマイナス要素も少なからず見え隠れする.その辺は,良くも悪くも京都の現在と似たり寄ったり.

 それでも,京都より断然良い.もしも欧州に住む機会があるとすれば,現実的に一番可能性があるのはウィーンかも知れない.都市的機能,職の多彩性,学術性などなどを踏まえての話.因みに,研究室の先輩がウィーンの大学で講師をしているのも嬉しいコネ.街も今回旅した都市の中では一番広く,細かい所を観ようとすればそれこそ京都と同じで住まなければ難しいだろう.

 尚,ウィーンでは丸々三日弱散策する時間があり,交通の関係から同じ場所を何度も利用したりもしている.詳しい話は中に入った段階で書いている.
  • ワーグナー住居
  • レオポルト・ミュージアム(ミュージアム・クォーター・ウィーン)
  • 近代美術館(ミュージアム・クォーター・ウィーン)
 ミュージアム・クォーター・ウィーンは複数の美術館を集めた総合美術モール.KlimtやSchieleといったウィーンの美術家達の名画が集まるレオポルト・ミュージアムと,彫刻絵画の企画展を開催する近代美術館のみ入館.
 レオポルト・ミュージアムの官能的な名画の数々は一見の価値あり.ウィーン美術アカデミーを巣立った新時代の芸術家たちは,同じ官能的なモチーフを描いていてもそのタッチや画風が面白いほど違って,いい勉強になった.
  • ホーフブルク(新王宮)
    • エフェソス博物館
    • 古楽器博物館
    • 中世武器博物館
 ウィーン王宮は非常に広大で,博物館等も休館日がまちまちなので分けて散策,入館.それでも,全てまわり切れていない.新王宮の博物館に関しては,武器博物館にだけ興味があったが,共通券だったので他も流し見して来た.
  • 国立劇場
  • 最高裁判所
  • アウエルスペルク宮殿
    • レジデンツ・オーケストラ
 ウィーン1日目の夜はレジデンツ・オーケストラへ.普通に買うとB席でも39ユーロと言う高額チケットだが,ちょっと極秘のルートで少し安く入手.思いのほか資金が残っていたので,ウィーンでは結構お金を落とした.オケは鳥肌もの.ベルリンの野外公演も言葉に出来ない感動があったけれども,キチンとした音響で聞くと,何というか,紅茶にミルクを落とした如く,それぞれの楽器の音が3次元的に無摩擦で溶け合うような美しさと迫力があった.十分に予習していったMozartやStraussの演目が生で聴けたのも良かった.ウィーンでも定評のあるオケ.
  • ホーアーマルクトのローマ遺跡
  • アンカー時計
  • ルプレヒト教会
  • マリア・アム・ゲシュターデ教会
  • ショッテン修道院
  • クンストフォールム
  • フェステル宮殿
  • アム・ホーフ教会
  • 時計博物館
  • エンゲル薬局
  • シュテファン寺院
 ウィーンのシンボル的教会.ただし,塔が改装中で鋭い外観が楽しめなかったのは残念.内部は非常に厳か.今回の旅で内部が一番華やかだったのはケルン大聖堂だが,教会としての慎ましさと威厳が感じられたのはシュテファン寺院だった.
  • 鉄の杖
  • ペーター教会
  • ペスト記念碑(三位一体記念碑)
  • ロースハウス
  • ミヒャエル広場
  • ミヒャエル門
  • ローマ旧跡
  • マリア・テレジア広場
  • 自然史博物館
 王宮の向かいに対称的に向き合う対の建築が自然史博物館と美術史博物館.休館日が違うので日をずらして入った.鉱石や宝石といった地学的な展示,恐竜から微生物,哺乳類に至るまでの生物史とコレクションに加えて,人類史の展示も充実しており,25000年前に人類が造った土の偶像がとても魅惑的だった.
 パンフをくれたお婆さんはこの偶像について一言,「Do you know him?」.この辺りもオシャレ.色々話を聞いて来た.非常に広く,観るだけで相当時間が必要.両生類辺りのコレクションはあまりに充実し過ぎていて,苦手な自分はふるえながら見て回った.
  • 国会議事堂
  • 市庁舎
  • 市庁舎広場
  • ウィーン大学
    • ノーベル賞記念碑
    • ゲーデル記念像
    • シュレーディンガー記念像
    • ボルツマン記念像
    • ドップラー記念像
    • ハイエク記念像
    • 欧州天文学会
 ドイツ語圏最古の大学.今回の旅で一番訪れたかった大学.Cambridge,Oxfordに続く欧州の伝統大学の一角.そして,Schrödingerの研究拠点.歴史がある割に,CambridgeやOxfordと比べると規模が小さく,ノーベル賞受賞者も少ない(それでも東京大学や京都大学の比ではないけれども).大学の玄関ホールにはノーベル賞を受賞したOBの記念碑が設けられているが,数学系・物理系・化学系の人ならこれを見て発狂する事間違いなし.

 中央にSchrödinger.カッコ良過ぎる!しかも,そのSchrödingerの前には,透明の「?」の板が.これは,次なるノーベル賞受賞者のためのもの.この辺りもとてもセンスがいい.最後に書くように,ウィーンのやり方はどこかオシャレだ.

 中庭には先人達の記念像が数十体並ぶ.この日ウィーン大学では欧州天文学会が開催されており,個人的に思い入れのある超有名人にまさかの遭遇.中庭がポスターセッションの会場となっていて,Hayekの像などは見事に隠れていたが,Schrödingerの像は学者さん達の気遣いあって微妙に除けられていた.Einsteinの泉でツーショットを撮り逃したので,Schrödingerとツーショットを撮って来た.写真を撮って貰ったおじさんもひょっとすると有名人かも.ETHでのEinsteinと違って,Schrödingerの功績に見合うだけの愛が感じられて良かった.
  • ベルゼ(証券取引所)
  • 日本領事館
  • 産業技術博物館
  • シェーンブルン宮殿
    • シェーンブルン宮殿
    • プライベート・ガーデン
    • グロリエッテ
    • 迷宮庭園
 今回の旅で訪れた宮殿の中でも抜群に美しい.ウィーンのベストポイント.綺麗だと思ったポツダムのサンスーシー宮殿ですら足元にも及ばないといった感じ.宮殿そのものも然る事ながら,広大な庭園に手入れが行き届いていて,一日中歩いていても飽きない.小高い丘の上に立つグロリエッテも素晴らしい.「ベルサイユ宮殿を凌ぐ宮殿」としてレオポルト1世が建設を命じたとのこと.いずれベルサイユを訪れて比較するのも楽しみだ.実際,両方に行っている従兄の話ではシェーンブルン宮殿の方がいい,との話.ベルサイユ未踏の自分もそんな予感がする.尚,ウィーン旧市街とは別にシェーンブルン宮殿だけで単独の世界遺産認定を受けている.
  • アウガルテン
    • アウガルテン宮殿
    • アウガルテン磁器工房
    • アンブロシ美術館
 シェーンブルン宮殿から地下鉄で直行.アウガルテン宮殿そのものもそれ程見応えが無かったが,それ以上に直前に見て来たシェーンブルン宮殿があまりに綺麗だったので,期待外れ.庭園も普通の公園といった感じ.ただ,宮殿はかつでMozartやBeethovenがコンサートを重ねた歴史も踏まえれば一見の価値はあるか.
  • ウィーン中央墓地
    • モーツァルト記念碑
    • ベートーベン墓
    • シューベルト墓
    • シュトラウス(父)墓
    • シュトラウス(子)墓
    • ボルツマン墓
 ウィーン郊外にある最大の墓地.野球場何個分という広さの墓地で,その中央区画は特別区として著名人の墓が集中している.取り分け有名なのは32A名誉区と呼ばれる特別区で,名だたる音楽家が眠る.Mozart,Beethoven,Schubert,Straussというこのメンツだけで異常な豪華さ.ただし,Mozartは北のザンクト・マルクス墓地に集団埋葬されたため,遺骨の判別が付かずここでは記念碑が立っている.オーストリア歴代大統領らもこの中央区画に眠っている.この中央墓地にはBoltzmannの墓もあり,お墓参りをして来た.一応,統計物理という分野上,SchrödingerやEinsteinよりBoltzmannの方が遥かにお世話になる機会も多いわけで.墓石に刻まれたエントロピー式が印象的だった.
  • ザンクト・マルクス墓地
    • モーツァルト墓
  • アカデミックギムナジウム
 Schrödingerの出身校(日本で言うところの高校に相当するのがギムナジウム).今も彼の碑文が表に残っていた.
  • ウィーンフィルムフェスティバル(市庁舎)
 2日目の夜は,市庁舎で開催されるウィーンフィルムフェスティバルへ.オペラのオフシーズンになるとウィーンでは,市庁舎広場に大画面(それこそサッカーコート半面くらいの大きさ)を設置し,毎晩無料で過去のコンサートやオペラの映像を日替わりで放映している.音響も良く,広場の奥ではレストランやビアガーデンが露店を開き,大勢のウィーン市民が涼みにやって来る.
 この日の演目は,ルツェルン祝祭管弦楽団の2003年公演.前日の生のオケを聞いていなかったらこれでも物凄いインパクトがあっただろう.
  • 内務省
  • 首相官邸
  • ミノリテン教会
  • フォルクス広場
  • ブルク劇場
  • ヴォティーフ教会
  • ホーフブルク(旧王宮)
    • 皇帝の部屋
    • シシイ・ミュージアム
    • 宮廷コレクション展示室
 内部は撮影不可.皇帝の部屋,シシイ・ミュージアム,宮廷コレクション展示室の三カ所が全て共通券で入館出来た.自分自身はあまり食器などに興味はないが,好きな人はコレクション展示室の食器を一つ一つ見るだけでも物凄く楽しいと思う.旧王宮という事もあってか,内部はミュンヘンの王宮の方が豪華さがあったかも知れない.落ち着いた雰囲気は良し.
  • ホーフブルク(スイス宮)
    • 王宮礼拝堂
    • 王宮博物館
    • アウグスティーナー教会
  • ゲーテ像
  • 美術史博物館
 ウィーンの最大の目的地の一つ.前日入った自然史博物館と対称な建築で,今回の旅では最後のVermeer所蔵美術館.Vermeerの「絵画芸術の寓意」は,Vermeer中期にしては珍しい寓意画だが,タッチや色遣いは最盛期のそれを感じさせるものの,構図や物語に慎ましさが欠けている感じがした.結局,ベルリンで観た最初の一枚が今回の旅ではベスト.それでも,この美術史美術館でも20分くらいにらめっこしていた.

 Vermeerのほかにも非常に見所が多く,規模的には恐らくミュンヘンのノイエ&アルテ・ピナコテークの方がやや大きい位だと思われるが,ミュンヘンに続いてRubensやBrueghelのコレクションは非常に多く,又,ミュンヘンで観られなかったイタリア絵画も多く揃っていた.この辺がじっくり見られたのも良し.Raffaelloの「ベルヴェデーレ聖母」なども有名.Brueghelの滑稽な時代画は面白かった.昔,世界史で散々Brueghelの絵は見せられた記憶があるけれど,あれはあれで歴史的に面白い.

 ただし,諸事情で美術館の目玉の一つとなっているRembrandtやBrueghel Jr.の作品の一部は観られず.実はその事情はあらかじめ分かっていて,今,日本で「ウィーン美術史美術館展」が開催されているからだ.来年の1月には神戸に来るので,その時に観れば良いと思っていた.

 ところで,Vermeerの「絵画芸術の寓意」は東京で今開催されているVermeer展に出品予定だったのが急遽取り消しになったことでも話題になった.「作品保護の為」とされていたので,最悪,観られないかも知れないとは思っていたのだが,無事観られて一安心.要するに本音は,「これ以上日本の美術展に目玉を出品出来るか」ってことなのだと思う.
  • カールス広場
  • カールス教会
  • 楽友会館
  • ベルヴェデーレ宮殿
  • ベルヴェデーレ上宮
    • 19・20世紀絵画館
    • ベルヴェデーレ下宮
    • バロック美術館
 宮殿が対になって立っているのが面白い.シェーンブルン宮殿やサンスーシー宮殿には遠く及ばないが,前日にアウガルテンでワンクッション置いたので宮殿そのものもまずまず新鮮.それ以上に,宮殿内に併設されている美術館二つが面白く,時間の関係で全ての絵をじっくり観る事は出来なかったが,見どころとなっているGoghやKlimtは観られて良かった.
  • シラー広場
    • シラー像
    • フランツ・ヴェルフェルの記念碑
  • 造形美術アカデミー
 本当は美術館を観る予定でいたのだが,美術館が改装中のために休館.造形美術アカデミーはウィーン新時代の画家達を生んだ美術の名門であると同時に,Hitlerが受験に失敗した事でも有名.Hitlerがこのアカデミーに合格していたら歴史がどう変わっていたか.
  • オペラ座
    • 内部見学ツアー
    • オペラ座ミュージアム
 オペラ座の内部見学ツアー.チケット情報が欲しかったので,今回の旅で初めて日本語のガイドツアーに参加.音楽家の名前の刻印やMahlerの使っていたピアノなど,博物館テイストで楽しめた.それとは別に,ミュージアムも軽く流し見出来た.
  • 映画博物館
  • ホーフブルク(旧王宮)
    • アルベルティーナ宮殿
    • ゴッホ特別展
    • ピカソ・モネコレクション
 造形美術アカデミーで時間が浮いたので,どこか美術館か博物館に入ろうと思い,アルベルティーナ宮殿を選ぶ.アルベルティーナ宮殿は,中に美術館が併設されていて,丁度このとき,オランダのゴッホ美術館などからGoghのコレクションが大量に集まって特別展が開催されていたので,喜んで入る.常設のPicassoとMonetも良かったけれど,Goghもいい.Vermeerといい,Rembrandtといい,Goghといい,次の欧州旅行にオランダは欠かせない.
  • 戦争とファシズムへの戒めの記念碑
  • 国立図書館
  • カプツィーナ教会
  • 大蔵省
  • 青い鯛の家
  • ハウス・デア・ムジーク
  • 市立公園
    • クアサロン
    • ヨハン・シュトラウス像
    • シューベルト像
  • 造幣局
  • オペラ座公演
 3日目の夜は,オペラ座の当日立見席券を並んで入手し,初のオペラ鑑賞.立見席は何と4ユーロという破格の安さ.オペラ鑑賞には相応の服装がマナーとの助言を受けていたので,用意して来たパンツと上着に着替えて参戦.尚,旅の途中で靴が破れてしまうというアクシデントがあったが,靴は何と相部屋のイタリア人のお兄さんに借りて行くという荒技で打破.買っても良かったのだが,新しい靴で歩き辛いのも嫌だったので.
 演目は,Verdiの「運命の力」.立見席ではない席では,椅子に電子掲示板で英独の字幕が流れるので劇の内容がよく分かる仕組みになっているが,最安の立見席なので内容はほとんど飲み込めず.それでも,オケとは違った迫力にすっかり魅了された.オペラに関しては予習不足だったが,初めてのオペラが本場の本場というのは少し贅沢過ぎたかも.でも値段はスイスのコーヒー一杯より安い.

 以上,ウィーンのまとめ.サブ項目は太字にしていないが,サブで書いてある博物館や美術館も大概は入館している.こうした拝観料はウィーンが抜群に高く,一般料金では1000円未満で入れる場所がほとんどない.
 今回,ウィーンで入った宮殿や美術館などを全て一般料金で入ろうとすると,正確に計算はしていないが多分50000円は軽く超えると思う.それが,学生料金だと半額程度に収まっているのだからこの差は大きい.実際,今回の旅は拝観料に宿泊費の3倍~4倍くらい費やしているが,これらを全て一般料金で払うと悲惨な数値が弾き出されるはず.因みに,学生優待が無かったところは全日程を通して5か所くらいだったと思う.欧州は学生を「学」生としてキチンと見てくれているという事だ.


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【雑談】
 ウィーンの至る所で,オシャレな文句が目に付いた.上に幾つか書いた例はもちろん,例えば,工事中の看板にしても「新時代のウィーン建設中」とか,王宮の博物館のポスターにしても「申し訳ありませんが我が博物館は皇帝は揃えておりません.あるのは王家の宝石だけです.」とか.市からの掲示板でも,「外に出ない日を休日とは呼びません!」とか.逐一,キャッチフレーズが上手いんだよなぁ.この辺りに,ウィーンという街の色を感じる事が出来た気がする.

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