物凄く綺麗な小説.とにかく透明感があって,青春小説というよりはある種の童話のような純白さを感じる.読み終わったときに残るのは,長距離を走り終わったあとの爽快感から疲労感をそっくり抜いたような気持ちの良さだ.
一つの物語が,四つの短編で様々な角度から描かれる.最初の一編が言ってみればエンディングで,わかっているエンディングを追うだけの物語なのに,その一編だけではまるで見えていなかった少年少女たちの心のうちが,物語り全体を磨き上げていく.
物語の中で一番愛らしかったのは,進でも佳奈でも広一でもなく,種田さんとセンダくん.キザくさい台詞も表現も一つもないのに,よんでいるこちらが照れてしまうような初々しさと透明感があって,自分で言うのもおこがましいけれど,そこに物凄く自分を重ねてしまったりする.
ただ,物語は爽快で透明である.普通に読んだ本ならおなか一杯でしばらく幸福感にひたっていただろうけれど,今年はバイブル級の会心作にゴロゴロ出逢っているので,ちょっと弱過ぎたかな.小中学生の頃に読めたら良かった本かも知れない.爽快感と透明感にしても,やっぱり今年読んだほかの作品たちの幾つかの方が,更に桁違いに深いのだから.



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