2010/09/20

ドガ展

 来週横浜に行く予定があったので,その時に時間を調整して観に行っても良かったのだけれど,最近の運動不足を解消すべく,天気も良さそうだし横浜から自宅のある都内まで歩いてみようと思い立ち,日曜日の朝一番で横浜へ.
 開館時間に合わせて横浜美術館に到着したのだけれど,観客が多くまさかの入場制限.ものの数分待たされただけで入館出来たし,館内でも不快なほどの混雑はなかったものの,まだ開催二日目でこの始末だ.帰りがけには行列もなかったので,これから出掛ける予定のある方は朝方は避けたほうが無難かも知れない.

 さて,Degas.
 街中ではこの一ヶ月ドガ展のポスターが至るところで見られたし,新聞やテレビでの取り上げ方も上々.中でも注目を集めているのが,「L’Étoile(エトワール)」と呼ばれる作品だ.宣伝の効果もあって,話題性も抜群だ.この絵の前には弥が上にも人が集まる.

 ……凄い.この作品だけ群を抜いていい.というより,他の作品で思いのほか気に入った絵が無かったというのも正直なところなのだけれど,それにしたってこの作品は格別にいい.

 まずは色彩.パステルの効果なのか,普通の油彩画とはまるで違った印象だった.灰色ベースで描かれているのに,全体的に明るい.床一面のグレーの絵の具の伸び方が,物凄く滑らかで,且つ暗さを感じさせない.光の反射度が油絵の具と違うのかも.その上に描かれた踊り子の存在感も,一つには絵の具が影響しているのだと思う.下の色が透けるような色の効果も,パステル固有の特徴とのこと.パステルの描き方についてもう少し勉強しよう.

 次に構図.踊り子を主役に据えつつ,その踊り子を絵の中心に持ってこないこの構図が個人的には抜群に好き.広い床の中に輝くように浮かび上がる踊り子の存在は勿論のこと,後ろで見守る紳士らの存在感が際立って,舞台裏のストーリーが連想される.誰かが舞台のこの瞬間を実際に見ていたとして,その中心に映るのは間違いなく踊り子だ.普通より少しだけずれたこの絵の構図には,客観性があるし,また従来何かあるはずの中心に何もないからこそ踊り子の存在感が際立つのだと思う.
 だからといって意味もなく構図をずらしているわけでもなさそうで,個人的に思い当たるのは次の二点.一つは,構図をずらすことで踊っている踊り子の動きがよりリアルに見えること.踊り子の姿勢からしても,絵の右側に遠心力が働いているように見えるのはこの構図の効果ではないか.もう一つは,縦方向の位置関係.縦方向ではあくまで踊り子を中心に据えることで,この絵の主人公が誰なのかを十分に主張している.下側にガラリとあいた空白は,踊り子の存在感を引き立てるのに十分な役を担っているように思うし,下半分を手で覆い隠してみたところで,この絵の魅力は全く無くなってしまう.

 というわけで,「L’Étoile」を観られて良かった.来週も時間を調整して,もう一度この絵だけ観にいこうかな.他の絵に関しては,デッサンが多かったのでやや物足りない感.最後のセクションのDegasの彫刻が新鮮で,却って良かったくらい.いずれにせよ,これは来年訪れようと心に決めているオルセーにますます期待が高まる.

 余談だけれども,(あくまでこの構図の良さは個人的に感じたものであるにしても)企画展の販売グッズの多くが,この踊り子の部分だけを切り取って貼り付 けたものが多かったのはとても残念に思った.ご丁寧に,踊り子が中心にくるようにトリミングされた絵葉書まで販売されていてなおも幻滅.勿論自分は,オリ ジナルの構図の絵葉書を買って帰って来た.

0 comments:

© Crescent Moon - Template by Blogger Sablonlari - Header image by Deviantart