職場の購買の本屋さんで新刊が出ているのを知って,かといって職場で買うのはやや気が引けたので帰りに別の本屋さんで買って帰る.綿矢りさと言えば芥川賞のときに読んだくらいで,特に印象に残ってる,というわけでもないのだけれど,彼女が京都出身であるということと,実は同じ1Q84年世代だということで気になる文化人の一人ではあるのだ.
さて,そんな綿矢りさの新刊『勝手にふるえてろ』.
主人公の女性は,いち社会人.何度か声をかけあったことのあるだけの小学校時代の初恋の人の存在を,妄想と空想の中で十年以上も温め,膨らませ,毎日を過ごしている.方や,現実世界でも出逢いがないわけではないのだけれど,肝心の相手候補はやっぱり思い出の中の初恋の人に勝てない.そんな状況の中で,彼女は泥沼の妄想に嵌り,ストーカーまがいの行動に打って出る.そこから始まる彼女の気づきと変化と諦めの物語.
とにかく妄想の酷い,世に言うメンヘラな女性の主観で書かれた物語.気持ち悪くて,痛々しくて,そしてリアルだ.といっても,世間の多くの読者にとってはリアリティも何も無くて,ただ気持ち悪さと痛々しさしか残らないのではないかという気もする.筆者曰く,「現代の女の人の気持ちを鮮明に描いたつもり」なのだそうだが,現代の男の人であるはずの自分こそ主人公の脳内に共感できすぎて最早笑うしかない.だからリアリティというよりは,自分の内面を客観的に投射されているような滑稽さがあったというべきだろうか.
別にこの小説でテーマになっているような恋愛問題ではなくても,妄想や空想は悪いものじゃない.そこには無限の可能性があり,人間の希望でもあり,時には生きる糧にもなるのだ.ただ,妄想や空想の種が現実の生活の中にあったなら,あまりに温めすぎるといざ現実を突きつけられたとき,ギャップが堪えるよ,という感じの小説.それでも,自分は妄想を,空想を放棄はしないだろう.妄想や空想は必ずしも毒ではないし,そういうニュアンスがこの小説からも少なからず読み取れる気はしている.これまた,都合のいい自分の妄想解釈かも知れないけれど.



0 comments:
コメントを投稿