2010/09/25

上村松園展

 大雨の中,竹橋で開催されている東京国立近代美術館へ.大雨だというのに(大雨だからこそ?)会場はそこそこの人の入りで,特に年配の方の来客が多かった印象.着物の上品な雰囲気の女性も少なからず散見される,珍しい客層だ.休みの日に美術館に来てまで窓から職場が見えるというのは何ともいえない残念な感じがするけれども,どういうわけか初来訪となったこちらの美術館は,常設展の充実度も高く,京都の国立近代美術館とはジャンルもセンスも全く違って,面白さがあった.

 さて,上村松園展.
 女性日本画家の上村松園は,京都生まれの京都育ちということもあって,京都の美術館でも割と多くの作品を見たことがある.今回は大掛かりな企画展ということで全国各地から松園の作品が集まり,以前見たことがある作品もあれば,初見の作品もあれど,年代別に彼女の作品を追っていくと作風の変化や波が見て取れて面白かった.

 30代から40代にかけての,表情に富んだ作品の評価が高いようで,今回の企画展でも「焔」あたりが目玉の一つとして話題を呼んでいた.実際,憎悪や嫉妬を感じさせる女性の表情は「焔」という題目に見事にマッチする迫力のある作品だった.
 ただ,それ以外の年代の作品が魅力に欠けるかというとむしろ逆で,個人的には初期と晩年の作品のほうが見ていて面白かった.

 まず,初期の作品(19世紀の作品)は,空白の多さと線の鋭さがとてもいい.シャープなラインで描かれた人物と,後ろに広がる無限の無地.自分がこの企画展で一番気に入った作品は,「一家団欒」という作品で,(先週のDegasと同じく),無駄に空間の空いた構図にそそられた.筆のラインのみならず,色の塗り方も,この頃の作品が一番繊細であるように思われた.

 一方,晩年の作品は確かに表情の豊かさには欠けるように見えるけれども,これ以上無いという絶妙な視線を選んでいるらしいところがいい.「らしい」というのは,実はきっと自分の偏見で,この企画展の中盤フロアで松園の下書きの展示を見たときに松園の絵の描き方を知ったに過ぎないのだけれど,一人の女性を描くとき,微妙な視線や顔の傾きを何度となく試行錯誤しているプロセスがよく分かる.その中で松園が選んだコレという表情が一枚に凝縮されていると思うと,松園の絵の一枚一枚に愛着が持てる.

 最後に,松園展を一巡して思ったのは,日本の女性は美しいなということ.近代の日本画を見ていると,いつもそう思い,現代の日本女性を勿体ないなぁと感じる.

4 comments:

yuka さんのコメント...

19歳の時に、会社の研修で寮に入っていました。全国から研修に来られてた中で、広島から来ていた男性が、当時京都で開催していた「上村松園展」を観に行ってきて、私にだけ「序の舞」のポストカードをお土産にくれました。「ほら。これ知らんやろ、おまえ。」ってね。


その時の私は、真っ黒に日焼けしていて、ロングヘアをなびかせ、ミニスカートで原付に乗っているような子でした。もちろん松園には興味もなかった頃です。

「京都生まれの京都育ち」なら、きっと、松園の描く「序の舞」のような、上品で優雅な女性を目指せよ。という意味を込めてのお土産だったんでしょうね。

今でもポストカードは大事にしまってあります。

Lune さんのコメント...

 序の舞,着物は綺麗なんですがあんまりピンと来なかったかなぁ…….松園の描く女性というより,松園の描く古きよき風俗に魅力を感じました.

 ここ数年は,僕も気に入った作品は必ずポストカードで買って帰ります(上げている画像もスキャンしてたり).気に入った作品のポストカードがないと残念ですよね.

yuka さんのコメント...

P.S
それから後ですが、印象深かった美術展の後には、親しい方などに、その方をイメージしてポストカードを差し上げるようにしています。

きっかけですね。「序の舞」のポストカードをもらってから、少しずつやんちゃ娘を卒業していったような気がします。

そうそう、着物の都でもありますので、京都人ならでは描ける「着物の柄」にも注目ですよね。

Lune さんのコメント...

 ポストカードを差し上げる,というのは素敵ですね.海外から自分や家族あてにに送るくらいかなぁ…….

 着物の柄も良いです.松園の作品では,若い頃の作品の方が着物の色の選び方や置き方が上手いような印象を受けました.

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