2009/12/14

The Great Dictator (1940)

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 ナチスドイツ関係の映画シリーズ,最後はこの映画と決めていた.Chaplinの映画の中では一番最初に観た映画だが,作品の質そのものもさることながら,時代背景やメッセージ性を考えてもナチスドイツをモチーフにした映画の中では最高峰の作品だと思う.

 序盤から落ちは見え見えだ.クライマックスで迎えるChaplinらしからぬ強烈な演説にはある意味予想を裏切られるが,膨らんだ期待まで決して裏切らない.そこに至るまでのコミカルな展開や脚本も見どころ満載だが,ラスト10分間でこの映画のコメディ要素は一切払拭されてしまう.

 この演説の好きなところは,資本主義を絶賛するでもなく,社会主義を批判するでもなく,ただただ人間の話をしている点だ.むしろ,資本主義に批判的な部分もあれば,社会主義に同調的な部分もある.自分が持論にしている理想論とも大きくオーバーラップするものであり,70年の年月を経てなお色褪せない名言だ.政治についてあれこれ語るのが幼稚で,バカらしく思えてくる.

 “主義”とは,社会が基礎とする原理だ.そこをはきちがえている人は結構多いと思う.極論を言えば,“資本”主義では資本(お金=生産)のためならいかなる不条理も許されるのであり,“社会”主義では社会のためならいかなる不条理も許されるのである.そういう前提条件にある資本主義を,あるいは社会主義を,ただただ空気のように当たり前のものとして受け入れてしまっている今の時代に違和感を感じざるを得ない.言葉の意味を深く考えないで,おぼろげなままに軽々しくこの言葉を口にしてはいないだろうか.

 Chaplinがこの映画の演説でといているのは,いってみれば「人間主義」とか「平和主義」である.資本主義でも社会主義でも正直どちらでもいい.それ以前に見直す部分がある.主義的な闘いから時代と距離を置いている今の時代だからこそ.
 これまでの人間の歴史の中で,この「人間主義」の役割を担っていたのは宗教だっただろう.だが科学が宗教の“ウソ”を見抜いてしまったために,人々は人間主義を見失ってしまったといっていい.

 現代社会のゆがみは.崩壊は.

 宗教がうしなわれたためではない.科学が台頭したためでもない.宗教が担っていた“本質”の方がゆらいでしまったからだ.ならば新しい土台を見つけなければならない.そのヒントは,例えばChaplinの演説の中に隠されているように思う.

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 映画を作った当時,Chaplinはホロコーストの惨劇を知らなかったとのことだ(そもそも強制収容所内での諸々の歴史は戦後に明らかになって来たものも多い).そもそも,悪名高いアウシュビッツ強制収容所が建設されたのはこの映画の公開年と同じ1940年のことで,製作自体はその前年におこなわれていたとされる.一方で,アメリカが世界大戦に参戦するのはまだもう少し先の時代だ.
 そういう奇跡的な時代背景に恵まれて,この映画を世に送り出すチャンスに恵まれたChaplinと,そのチャンスを逃さなかった彼の才能は,まさに歴史的な天命を感じさせる.

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