2009/12/12

Germania anno zero (1948)

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 戦争とそこで生まれたイデオロギーが,人の精神を蝕んでいく過程を淡々と,しかしリアルに描いたイタリア映画.戦後まもない1947年にベルリンで実際に撮影されたということもあって,ドキュメンタリーとしての価値もある.ただ,微妙にドイツ語が分かるだけに,イタリア語(ときたまフランス語?)で進むドイツの風景に違和感を感じざるを得ない.

 戦争の終焉とともにドイツにおける思想は一転した.ファシストたちはみな社会を追われ,あるものは罰せられ,あるものは逃亡生活を余儀なくされた.物語の主役は,追及の手から逃れ続ける元ナチ党員の兄を持つ少年である.
 戦争は終わった.しかし,思想と困窮は容赦なく少年の心をむしばんでいく.短い映画ではあるけれども,当時のベルリンの風景と相まってリアリティに事欠かない作品だ.

 戦争映画,とみなされがちなようだが,この映画は戦争映画ではない.思想映画,とでもいうべきだろうか.Hitlerという大物によって代弁されてしまいがちなナチスの思想.そういう典型的なイメージによって逆に見えにくくなってしまった思想の影の部分を描いているといっていい.
 ナチスとして戦争に加担していながら,あまりに軟弱で臆病な兄.ナチの思想の“本質”をいまなお抱き続ける教師.そうした環境下で,Hitler亡きドイツでまた新たにナチ思想に傾倒していく少年と,その末路.「戦争」と「Hitler」が見えなくしてしまった思想の本質を垣間見せてくれる.

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 思想や社会,あるいは科学がむしばんでいく人間の様相は,心理学的な面白さもあって小説や映画の題材としてもポピュラーなものだ.今年観た中で印象的なものでは,例えばRobert De Niro主演の「Taxi Driver(タクシードライバー)」や,Michel Houellebecq原作の「Elementarteilchen(素粒子)」があった.前者は精神的に病んだ主人公が皮肉にも社会的ヒーローにまつりあげられるアメリカの歪みを,後者はますます社会から切り離された人間が再発見する原点の愛の形を描いたもので,どちらもいい映画だった.

 この映画は,こうしたテーマ性やストーリー性よりは,やはりリアリティやドキュメンタリーが主題になっていて,印象には残るけれども,もう一度見たい名作にはなり得ないと思う.ついでに,まともに世界大戦を勉強していれば,これくらいの風景には意外性や異常性は感じないだろう.

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