2010/08/23

村上春樹『ノルウェイの森』

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村上 春樹
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ノルウェイの森 下 (講談社文庫)
村上 春樹
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 大昔に一度読んでいるものの,先日友達とこの本の話をしている中で“読み直さなきゃいけない”感じがして,実家に帰って探すのも面倒なので新たに買ってしまった.村上春樹は自分の好きになれない作家の代表格で(だからといって読んでいない訳ではないのだが),何年か前に文庫化された『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の村上訳を除けば彼の作品を読むのは実に7年ぶりということになる.
 当時『ノルウェイの森』を読んだときは,自殺とセックスの気持ち悪さしか残らなかった.久し振りに読み返した後になっても相変わらず村上春樹を好きになれる気はしない.ただ,自分が村上春樹を好きになれない理由は,脈絡の無い比喩表現にあって,時を経て読み返した物語そのものは意外と面白かった.

 「死は生の対極としてではなく,その一部として存在している」というこの小説のテーマとでもいうべき問題は,自分にとってあまり関心のある問題ではない.寧ろ,直子と緑の間で葛藤する主人公の,ある種傲慢である種ストイックな理屈と心理描写がとてもいい.7年前に読んだときにはまるで理解できなかった彼の思考が,今は自分のものであるかのようにわかる.感性のある部分が局所的にシンクロしているような錯覚すら覚える.何より勇気付けられるのは,彼の直子に対する行動や感情の中に,同情や偽善といった要素がこれっぽっちも見えないことだ.これが10年後に読んだら,きっとそうは行かない.この小説を読み返すのに,今以上の好機はなかったと言ってもいい.
 ハツミやレイコの心のうちも,ぼんやりと分かったように思うし,何といっても,生の力強さと未来への希望すら感じさせるラストに,まるで後味の悪さを感じなかった.好きではないからではなくて単に読む機会が無かっただけではあるけれど,村上春樹の最近の未読の作品『海辺のカフカ』や『1Q84』も,読んでみようかなという気になったのも大きな収穫の一つだ.

 東京に戻り,就職し,交友関係も生活環境もこの半年でガラリと変わった.変わったものもあるし,変わらなかったものもある.自分だけではなく,6年ぶりに見る景色や人の中にも,変わったものと変わらなかったものがある.
 さて,この本を読み終えたいま,自分は悩む.『ノルウェイの森』を話題にあげた友人は,ただただ時間をつなぐためだけにこの本を挙げたのか.或いは何か意図があったのか.こんなことを考えるのは,その友人に,直子やキズキに対して感じたのと似た一抹の危機感や不安を垣間見てしまうからだ.自分はワタナベか.

2 comments:

ally さんのコメント...

私の持っている数少ない小説のうちの一つです。まぁ私は色々コメントできるほど本を読んではいないけど、夕暮れにふと感じるような寂しさを感じる作品、という印象です。
たまに読んでみるとハッとするような。

Lune さんのコメント...

 ご無沙汰です.またいつか読み返しそうな感じでした.村上春樹の新作たちも,そのうち読んでみようと思います.

 卒業後も変わらず東京の予定ですか?またそのうちご飯でも食べに行きましょう!

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