2011/01/16

有吉玉青『恋するフェルメール 37作品への旅』

恋するフェルメール 37作品への旅 (講談社文庫)
有吉 玉青
講談社 (2010-09-15)
売り上げランキング: 125332

 自分も,Vermeerの絵を見ることを数ある旅の目的の一つに掲げているので,書店で目に付いたまま買って読んだ.筆者のVermeer歴は羨ましい以外の何ものでもなくて,まだ観ぬ作品達への期待が高まった.とは言え,Vermeerや彼の作品に関して新鮮な情報やネタがあったとは言いがたく,内容も旅行記というよりは(言い方は悪いけれど)自慢話でとどまってしまっている印象だ.Vermeerの絵の説明についても一貫性に欠ける部分があるし,筆者の感想もいまひとつリアリティに欠ける.筆者ならではの見識や視点というものが見えず,どこかで聞いた理屈や感想を「ああ確かにそうだね」と確認するようなところがある.実際に筆者がそれぞれの絵にどれくらいインパクトを受けたのか分からないけれど,少なくとも文章からは,世間的に人気のあるブランド品を買い集めている程度の深さしか伝わって来ない.

 Vermeerに限らず,本当に物凄い絵を観たときというのは,それだけで本を一冊書けるような衝撃がある,ものだと思う.勿論,実際にそうするにはそれ相応の深い見識と自分なりの立場,研究の成果や表現力などが必要になると思うし,残念ながら自分は成し遂げられる自信がないけれど,その種の衝撃が,どの章からも伝わって来なかった.彼女がVermeerの作品が好きだということはとてもよく分かるので,人とは違う何かを感じているには違いないんだろう.それを如何にリアルに伝えることが出来るか,という技術の重要さを再認識させられる.仕事や趣味の世界での自分自身を反省する材料になった.

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