2010/12/12

Book of the Year 2010

 今年はいい本との出逢いがきっかけで,学生時代以上に小説を読んだ一年だった.と言っても30冊とか40冊とかその程度でしかないけれど,社会人一年目で生活の変化や適応に追われる中ではまずまずの及第点だと思う.きちんと数えた訳ではないけれど,専門書やビジネス書も入れたら60冊70冊はあるのではないかと思う.まだレビューを書いていない本も実は沢山あるのだけれど,それらはまた時間のあるときに書くことにして,取り敢えずはこの一年の「Book of the Year 2010」と,各ジャンルでのイチオシの本を書き留めておこう.

【Book of the Year 2010】

スコーレNo.4 (光文社文庫)
宮下 奈都
光文社
売り上げランキング: 11057

 全てはここから始まった.6月,「久々に小説でも読んでみようかな」と,新宿の紀伊国屋で偶然手に取った一冊.作者の名前も知らないし,タイトルも聞いたことが無い.「かつて少女だったあなたへ」という帯の謳い文句に惹かれたわけでもなく,まさに気紛れという言葉以外に適当な言葉が見つからない.帰って何となく読み始めたら,翌日の仕事のことなんて忘れてあっという間に読み終わってしまった.結局,半年間で3回も読んでしまった.一つ一つの言葉の選び方がとても美しい.そこに描かれる感性や価値観は,オーダーメイドされた靴みたいに自然にしっくりフィットする.親友であり,恋人のような一冊だった.
 結局,ここからスタートして宮下奈都さんの著書は,最新刊も含めすべて読んだ.そのどれもが素晴らしく良かったけれど,作品としての質に最初の一冊としてのインパクトも加わって,この作品が宮下作品の中でも頭三つくらい上を行っているといったところ.既刊の本は読み終えてしまったので,それらをまた読み返しながら,宮下奈都さんの次の作品を心待ちしたい.

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【文芸】
ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)
サリンジャー
新潮社
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 小説では,宮下奈都さんの独壇場.『スコーレNo.4』に次いで良かったのは,『遠くの声に耳を澄ませて』.宮下作品のパターンの一つらしい,短編集と 言う名の長編小説なのだけれど,個別の短編で言えば,「どこにでも猫がいる」は『スコーレNo.4』の上を行く短編だったと思う.
 そういう中 で,唯一同じオーダーにあったのが,吉田篤弘さんの『それからはスープのことばかり考えて暮らした』.実は,この本は『スコーレNo.4』を読んだ直後 に,感性にまかせて買った本で,このときの自分の研ぎ澄まされた直感が恐ろしくもある.実は,吉田篤弘さんの本はまだ読んでいない本が沢山あるので,来年 上期は彼の作品を読むところから始めてみようと思っている.
 サリンジャーは,村上春樹の『ノルウェイの森』を読み返したことがきっかけでふと読み返した.『ライ麦畑でつかまえて』は野崎訳(今年読み返した)も村上訳もそれほど違わなかったし,相変わらず好きになれなかったのだけれど,ふと思い立って『ナイン・ストーリーズ』に手を広げたら抜群に面白かった.特にインパクトがあったのが,「笑い男」.世界的に知られる日本アニメの至宝の一つ,「攻殻機動隊 S.A.C.」でもモチーフにされている作品だけれど,それを抜きにしても,サリンジャーの不気味な魅力を理解するに十分な短編だったと思う.

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【自然科学】
  • 伊庭幸人ほか 『計算統計Ⅱ マルコフ連鎖モンテカルロ法とその周辺』
計算統計 2 マルコフ連鎖モンテカルロ法とその周辺 (統計科学のフロンティア)
伊庭 幸人 種村 正美
岩波書店
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 仕事の関連で,MCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ法)が必要そうだったので,早い段階で自分で読んでおいた本.ある分布を仮定してモデルを構築する数学的な方法よりもしっくり来るし,物理や計算機に近い自分としてはとても大きな武器になりそう.
 実際のところ,現場で正規分布で妥協できる局面なんてほとんど無い,というのが実際に仕事を始めてみたところの印象.かといって,LevyやScale-freeから理論を構築するのが得策かというと,理論は複雑になるし,それらが必ずしも正規分布に比べて優れた再現性を持っているわけでもない.と言うわけで,実データから分布を再現するのが一番実用性に長けているように見える.実際に必要に迫られたら,適宜読み返したいところ.

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【人文科学】
  • スコット・パタースン 『ザ・クオンツ 世界経済を破壊した天才たち』
ザ・クオンツ  世界経済を破壊した天才たち
スコット・パタースン
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 8906

 人文科学というには違う(寧ろ背景にあるのは今年読んだ本のどれよりもグロテスクな数学)けれど,職業柄,小説に分類したくもないのであえての選択.ただ,ジャンル問わずなら今年読んだ本の中ではベスト3に入る一冊.投資銀行のクオンツたちがいかなる方法・ロジックでリターンを追及し,そこにどのような盲点があったのか,それぞれの局面,ファンドでの話が盛り沢山に詰め込まれている.話の展開そのものも面白いし,読む人が読めば得るものも多い.

 投資銀行関連の本では,今年の下半期で読みたい本が沢山出版された.『リーマンショック・コンフィデンシャル』,『ゴールドマン・サックス』然り.これらには未だ手を付けられていないので,少しずつ読み進めて行こうと思う.

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【コミック】
  • 椎名軽穂 『君に届け』

 人に紹介されて読み始めたら一気に最新刊まで到達.高校生のピュアな恋愛模様が人気の大ヒットコミックだけれど,個人的には親友との友情模様の描かれた2巻がストライク.特徴的なキャラクターや設定があるわけではないし,絶対的な魅力があるわけではないと思うのだけれど,それでも尚,これだけこの作品がヒットしているところを見ると,今の若い人たちが結局のところ何を求めているのか,現実とのジレンマが分かるような気がする.

2 comments:

tane さんのコメント...

予想通りって感じ(笑)
宮下奈都さんは、薦めてもらって、ほんとうによかった。

俺はまだ他の作品をあまり読んでないから、それらはこれから楽しみます。

Lune さんのコメント...

 宮下奈都さんの作品は,「読む少女マンガ」という(ポジティブな)言われ方もされてるようですが,どっちかっていうとテーマやストーリーの内容より,言葉の選び方や表現力こそが彼女の魅力なんだろうなと思ってます.難しい言葉や小洒落た言葉を使ってるわけじゃないのに,これ以上ないというくらいリアルな言葉を選んでくる.だからこそ,研ぎ澄まされた感性や微妙なニュアンスが物凄く響くんだろうなと思います.

 こちらこそ,mixiやブログでの本のレビューも楽しませて貰っています.イチオシの本,じゃんじゃん紹介して下さい♪読んでる絶対数が自分の方が少ないので,到底追い付けませんが(笑).

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