2009/11/18

Book of the Year 2009

 2009年も終盤.そろそろこの一年を振り返り始めよう.多分,研究が忙しくなってきて本を読む時間はこの先ほとんどないので,今年読んだ本のヒット作からまとめてみる.

 今のところこのサイトはほぼStand Aloneにしているので,自分と接点のない人は読んでいないはずなのだが,このブログを知らない人が読んだら「多趣味な文化系自由人」くらいにしか見えないんじゃないか.映画のレビューもコツコツ書きためてはいるけれど,PCで映画を見ている裏で,もう一つのコアCPUをフル回転させて,量子統計の計算を走らせたり,設計した人工知能に記憶を組み込んでいたりするなんてちょっと想像しがたいと思う.

 そんなだから,Books of the Yearと銘うってイキナリ数学の専門書が出て来たら肩透かしを食らわせてしまうかもしれないが,あくまで本業は数理屋のハシクレ.一日5回は積分を欠かさない生粋の理系人であることはご了解のほど.

【Book of the Year 2009】

  • 平田オリザ/『演劇入門』
演劇入門 (講談社現代新書)
平田 オリザ
講談社
売り上げランキング: 21865

 自分の中で「文芸復興年」とも言える今年を象徴する一冊.

 この本をタネにして,さまざまに思索と模索を繰り返した結果,演劇にとどまらないアートの意義を,ひとまず自分なりに見出せたと思う.それは,もはや,自分の専門研究テーマやその理論をも侵し,再考させる材料となっている.

 この本で主張されている演劇観に,自分はおおむね賛成だけれど,これが絶対の価値観ではない.しかし,演劇という形式を通じて,いまの社会に欠けているものや大衆が忘れかけているものをひたひたと伝えてくれる一冊.この本を読み終わったとき,この本もまた,本書で主張されている演劇論的「リアル」のたまものであることに気付かされる.

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【文芸部門】

 小説をほとんど読まなかったけれど,それに準ずるものは結構読んだと思う.
  • Richard Linklater/『Before Sunrise & Before Sunset』
Before Sunrise & Before Sunset: Two Screenplays (Vintage)
Richard Linklater
Vintage
売り上げランキング: 1594

 今年の自分の中での断トツのヒット映画,「Before Sunrise」と「Before Sunset」の脚本集.演劇的なセンスが最高にいい.脚本,演出という観点で,一つの自分の理想形とも言ってもいい.

  • Emanuel Derman/『物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進』
物理学者、ウォール街を往く。―クオンツへの転進
エマニュエル ダーマン
東洋経済新報社
売り上げランキング: 93378

 来春からクオンツとして働くにあたっていろいろ学ぶべきところが多かった一冊.物語としてはやや専門用語が多いかもしれないけれど,自分の仕事を理解してもらうにもいい一冊だと思う.

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【自然科学部門】

 本業の分野では論文とレビューに特化していたので,本はほとんど読まず.その代わり,ちょっと斜めにずれた分野とか,来年以降のカギになりそうな本は幾つか読んだ.
  • Kurt Gödel/『不完全性定理』
ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)
ゲーデル
岩波書店
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 Roger Penroseを読むための前菜として読み始めたのだけれど,この一冊で自然科学に対する世界観が一変する.数学がなぜ欧州では哲学とされるのか,その意味を突き付けられる.

  • David Nualart/『The Malliavin Calculus and Related Topics』
The Malliavin Calculus and Related Topics (Probability and its Applications)
David Nualart
Springer
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 かいつまんで読んだ程度.Itoの確率積分に対する微分形とも呼ぶべきMalliavin解析に関する本.主にファイナンスにおいて,事前にどういった応用性があるのかは概観しておいたので,かいつまんで眺めるだけでも十分収穫のあった本.

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【人文科学部門】

 人文科学といっても,経済学とビジネスがらみの本ばかり.このジャンルで読んだ新書は20冊以上.
  • 若林秀樹/『ヘッジファンドの真実』
ヘッジファンドの真実 (新書y)
若林 秀樹
洋泉社
売り上げランキング: 68890

 映画「ハゲタカ」を観たあとで,あらためてヘッジファンドについて考えたときにいいヒントになった.実態も知らずにあたまごなしにヘッジファンドをたたいているアレな人には是非読んで貰いたい.

  • Nassim Nicholas Taleb/『ブラックスワン』
ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
ナシーム・ニコラス・タレブ
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 1077

 今年の経済系のベストセラー.言わずもがな.警鐘を鳴らすだけじゃなくて,活路を与えるところがもう少しあっても良かったけれど,経済への(ネガティブな?)影響力を与えた本として読む価値はあるかと.

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【芸術部門】

 平田オリザのオンパレード.芸術系の本も,就職活動中に20冊くらいは読んだ.千住博さんの本もチラホラいいのがあったけれど,平田オリザの存在感には勝てない.
  • 平田オリザ/『演技と演出』
演技と演出 (講談社現代新書)
平田 オリザ
講談社
売り上げランキング: 100732

 『演劇入門』よりももう少し方法論として洗練されている感じ.最初に手にとってのがこの本だったら,総合トップもこの本だったはず.

  • 平田オリザ/『芸術立国論』
芸術立国論 (集英社新書)
平田 オリザ
集英社
売り上げランキング: 19186

 内閣官房参与としての活躍に期待.芸術と産業に関する自分の長いあいだあたためて来た考え方や理想と,少なからずオーバーラップしていたというだけでも奇跡的な一冊.

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【コミック部門】

 オノナツメ一色.bassoはオノナツメの別名義.
  • オノナツメ/『not simple』
not simple (IKKIコミックス)
オノ ナツメ
小学館

 画風,配置,台詞,時間,全てにおいてセンス抜群.もはや他のマンガ家の追随できる世界じゃない.オノナツメ作品はコンプリートしてしまった.その中でも,一番,社会的テーマを隠喩的に組み込んだ傑作.

  • basso/『amato amaro』

 自分は断じてストレート.だけれど,社会的にはBL&GLも意味があることだなと思い始めていたり(腐女子のようなチャカシではなく.そう思う理由は学術的にちゃんと持っている.).中でも,人間のインテリジェンスや政治・経済とシンクロさせたこの一冊はスゴい.“ボディガード×経済学者”.このキャッチコピーだけでおなかいっぱい.

2 comments:

15 さんのコメント...

http://www.amazon.com/What-Would-Google-Jeff-Jarvis/dp/0061709719/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1258561618&sr=8-1

Lune さんのコメント...

 ああ,ちょっとチェックしておく.

 ぐーぐる関係なら,邦訳本で『Google PageRankの数理 ―最強検索エンジンのランキング手法を求めて』ってのがちょっと読みたい.

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