2011/03/12

ORANGE

 今回の大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈り致します.
 自分も,東北にいる弟と長らく連絡が取れず,昨晩は寝る間を惜しんで情報収集とあらゆる方面からの連絡に明け暮れていましたが,今朝無事安全を確認出来,ほっと胸を撫で下ろしています.今後も余震や火災等を含め大きな被害拡大が予想されますが,出来る限りの協力をしていきたいと思います.

------------------------------

 「ORANGE」は劇団「PEOPLE PURPLE」による,阪神淡路大震災をテーマにした舞台.もう長いこと公演が続けられている演目とのことだけれど,以前から知っていたわけではなく,たまたま折笠富美子さんがゲスト出演されるとのことで観に行った.奇しくも今回の大震災が起こるほんの20日ほど前のことだ.震災の惨劇と報道されなかった裏側を描いた演劇だっただけに,逸早く記事に出来なかったことが悔やまれる.“ヤシマ作戦”に乗じて,パソコン以外の電気機器の電源を切りつつ,それでも今この記事を書くことに多少の意味があるような気がしてパソコンに向かう.

 主人公は二人の消防隊員.オレンジの防護服をまとい,レスキュー隊員として日々,火災現場での救助にあたる.物語は,精鋭部隊として特別任務を負う彼らと仲間達が10年前の震災で経験した苦渋と,現在の仕事への思いを描く.
 物語の根幹は,阪神淡路大震災での救助活動にある.地震に伴う倒壊や火災から人々を救助するために現場に向かったレスキュー隊員達が見たのは,凄惨な被災現場だった.四方八方から上がる煙,倒壊した家屋,パニックに陥った人々,あちこちから響き渡る悲鳴.被災当初こそ目の前で苦しむ人々の救助に全力であたっていた隊員達だったが,間もなく本部から下された命令はトリアージ(キャパシティ以上の災害下において優先度を決めてあたる救助活動)だった.

 “一度声をかけて返事がなければ次の現場へ”.

 家の下敷きにされた子どもの救助を求めて必死で泣き叫ぶ家族を横にして,たった一度返事がなかったことを理由にその場を立ち去らなければならない悔しさ.人を助けることにこそ使命感と誇りを感じているレスキュー隊員達が一番悔しいにも関わらず,突き放された家族からは税金泥棒,役立たず,悪魔と罵られる隊員達.そういう憎しみの連鎖が続く.
 レスキュー隊員達自身の家族もまた,震災の被害者である.家族の死亡を告げられて尚,病院に向かわず震災後5日間救助にあたった隊員もいた.しかし,震災のパニックと悲劇の中で,それだけ冷静な判断を出来る一般人なんてそう多くはいない.1000人もの命を助けたレスキュー隊員達だったが,結果として残ったのは6000人を超える人たちを助けられなかったという事実だった.それでも,取り残された家族の中には今尚,レスキュー隊員達に強烈な憎しみを感じている者もいるだろう.
 この震災を機に,レスキュー隊員を辞めた者もいる.辞めずに仕事を続けた隊員たちは,このときの自責の念を今も胸にとどめて救助活動に従事している.

 見えそうで見えない震災の傷跡を,生々しく,圧倒的な迫力で描いたこの舞台.震災の惨劇も,一瞬の気の緩みで簡単に命を失ってしまう日々の活動も,涙なしでは見られなかった.舞台はテンポよく切り替わる.言葉一つの熱演で会場全体の涙を誘ったかと思えば,次の瞬間には人を卑下するでもなく下世話なネタに走るでもなく言葉遊びだけで爆笑の嵐が吹かせる.3時間弱の公演時間の中で,一瞬たりともスキを見せない脚本,演出,俳優陣の演技,音楽,どれを取っても最近見た舞台の中では頭二つくらい抜けて質が高かったと思う.
 折笠富美子さんの演技は相変わらず素敵だったけれども,今回の舞台に限っては役柄的にほかの出演者たちが圧倒的だったかなぁ.かといって,誰か一人の演技がずば抜けているわけでもなく,脚本も隊員全体にまんべなく配慮されていて,主人公二人を取り巻くレスキュー隊員,ひいては消防隊員全体のドキュメンタリーとして物凄くリアリティのある演目だった.

 定期的に公演をしているようなので,興味のある方は是非次の公演で観に行ってみて欲しい.今回の大震災と結びついて,考えさせられるところがあると思う.

P.S.シリアスなシーンで「白線流し」(大ファン!)のBGMを使うのは反則.

0 comments:

© Crescent Moon - Template by Blogger Sablonlari - Header image by Deviantart